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第10話 コードが織りなす街へ - 天才SE、バグだらけの異世界を行く -

 異世界での乗り物を手に入れます。

なかなかクセの強いヤツらしい。。。

 夜空の下、ビギナーズ・スクエアを後に、彰人、リリス、そして彼女の肩のビットは、この世界の一般的な移動手段であるホバーカースペースへと向かった。


 この空間の居住者は、基本的にホバーカーを利用して各地を移動することになるらしい。


 移動しながら受けた説明によると、


・ホバーカーは、この世界に存在するソースコードの歪みを検知し、軽微なものであれば自己修復する機能も備わっている。

・通常、ホバーカーは厳格な試験に合格した「ドライバー」にのみ与えられる。

・ホバーカーを持っていない人間は、ドライバーに同乗させてもらうか、街から出ないか、いずれか。

・ホバーカーは人格を持っているので、要注意である。


(また人格があるのか?まるで中古車選びみたいだな)


 そしてカギを使って入った広大なホバーカーのコックピットエリアには、無数の機体が整然と並んでいた。


 様々な形状とカラーリングのホバーカーが、電子的な光を放ちながら静かに待機している。その中で、一際異彩を放つ、きしむ音が特徴的な一台が、彰人の目に留まった。


「おい、そこの新入り!」


  低い、しかし金属的な声が、周囲の騒音を切り裂いて彰人に話しかけてきた。声の主は、まさにその傷だらけのホバーカーだった。


 無数のケーブルがむき出しになり、装甲の一部が剥がれかけているその外見は、まるで長年酷使されてきた老兵のようだった。


「あんたが、試験なしでホバーカーを与えられたって噂のイレギュラーか? ふん、見かけによらず才能に溢れているようだな」


 ホバーカーは、機体に取り付けられたスピーカーを通して、皮肉めいた言葉を投げかけてきた。


「バグジロウ、あなたは優秀なんだから、言葉に気をつけなさい。そうしないとまた返品されるわよ」


「ふん、俺を返品するような利用者なら、こっちの方からお断りだね!そしてあんた、気に入ったぜ、俺に乗らないか?能力は保証するぜ」


(こいつ、ずいぶんと馴れ馴れしいな)


 その時、アキトの脳内に、無数のノイズが思考を掻き乱すような感覚が流れ込んだ。まるで遠くのサーバーで発生した、深刻なエラーログのような不快感。彼は無意識のうちに『バグ感知 (Lv.1)』を発動させていた。


「ん?なんだ、この酷いノイズは……」


アキトが顔をしかめると、リリスが訝しんだようにのぞきこむ。


「どうした?何かあった?」


「いや、脳に直接響くような、ひどいノイズを感じるんです……かなり遠くで、大規模なバグが発生しているみたいだ」


 リリスの肩のビットが、少し飛び回りながら電子音を発した。


「ピピカチャ!バグ、ソンナトオクニアルノ?」


 アキトは、意識を集中させ、まるで世界の構造をマッピングするように、不快なノイズの発生源を辿った。


 すると、遥か彼方の一点で、制御不能なほどの歪みが感知され、マップに説明が表示される。


「あそこだ……『Javaシティ』というらしい……信じられないほどのバグの嵐だ」


 リリスは腕を組み、少し考え込むように顎に手を当てた。


「Javaシティ……堅牢性と汎用性を誇る大都市国家ね。オブジェクト指向のはしりとも言われている。空に伸びる無数の塔が、まるで巨大なコンデンサのようにエネルギーを蓄えている……確か、『クラスタータワー』とか、『ポリモーフィズム・スパイク』なんて名前の塔もあったはずよ。優秀なエンジニアが多い街だし、そんなバグだらけになっても自分たちで対処できそうなものだけれどね」


 アキトは、脳を掻き乱すノイズの強さを感じ取り、そこに向かうべきだと確信していた。


「このまま、Javaシティに向かうのはどうでしょうか?放っておけないんです」


 リリスは、アキトの真剣な表情を見て、小さく頷いた。


「まあ、私もその方が良いと思うわ。何が起きているのか、早めに把握しておくに越したことはない」


「ピピカチャ!ドコニイクニシテモ、イッショニイクヨ!」


「俺の高性能センサーでも、Javaシティ周辺のコードの乱れは感知していた!スタックトレースが酷いことになってるぜ!これはもはやtry-catchで握りつぶせるレベルじゃねえ!リファクタリングどころか、フルスクラッチで書き直した方がマシかもしれん!天才エンジニアの俺と、才能あるお前が手を組めば、どんなレガシーコードだってリファクタリングしてやる!さあ乗れよ、行こうぜ!」


(こいつ、いきなり専門用語を連発し始めたぞ。でも、言っていることは的を射ているな)


バグジロウがドアを開けてくれる。


「まあ、優秀なのは間違いないしね、、、ちょっとぼろくなっちゃってるけれど、どこかで直してもらいましょうか」


 こうして、アキトたちは、コードが織りなす街、Javaシティへの旅を始めることになったのだった。


 リリスとビットも後部座席に乗り込んだのを確認し、走り始める。


 しばらくホバーカーを走らせていると、空は完全に夜の色に染まり、遠くにJavaシティらしき、無数の光を放つ巨大な建造物のシルエットが見えてきた。


「もう遅いわね。以前たまたま用があって、この近くに来た時に見つけた、いい宿があるの」


リリスが、窓の外を見ながら呟いた。


「今日はもう宿を見つけて休むとしましょう。Javaシティには明日、改めて入るとするわ」


「ピピカチャ!宿!フカフカノ、ベッド!」


ビットも 少し眠そうな声を上げた。


アキトも疲労を感じていた。


「そうですね。明日に備えて、そろそろ休みたいですね」


バグジロウは、ぶっきらぼうに言った。


「ふん、別に構わんがな。俺はいつでも最高の状態で稼働できるぞ」


リリスは、ホバーカーを古風な趣のある木造の建物の前に着陸するように指示した。


(なんだここ、他のサイケデリックな空間と比べて、めちゃめちゃ和風だぞ。。。)


「ここよ。『和み亭』。値段もお手頃で、おかみさんの料理が絶品なの」


 玄関を開けると、優しそうな笑顔のおかみさんと、愛想よく笑う娘さんの二人が出

迎えてくれた。


「いらっしゃいませ、遠いところからお疲れ様でございます」とおかみさんが温かい声で言った。


「リリスさん久しぶり!また会えて嬉しい!今日はリリスさんの好きな木苺のパイがあるわよ!デザートに出すから楽しみにしててね」


 こうして、アキトたちは、Javaシティを目前にして、温かい光が灯る『和み亭』で夜を過ごすことにしたのだった。

次は、和み亭でまったり回です。

次への伏線もあるかも?

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