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妹の妹による妹のための家庭  作者: 棚から銀髪子猫(求)
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私たちの入学式がこんなに印象的なわけがない

入学式が始まったようだ。


よく見ていなかったが、周りの生徒は1300人を越えるほどの人数だろう尋常ではない量の生徒が同じ方を向いている。


律奏と庵も黙りこみ、壇上の白髪のベテランであろう貫禄のある校長に目線が移る。


「これより入学式を始めさせて頂きます。開会の辞、校長より挨拶___」


さっと校長が立ち上がり混迷なく登壇。


「私がこの学園の校長職務させて貰っている周防亥早と申します。新入生に関しましては___」


とやはり校長の代名詞……エンドレススピーチが勃発し出し、長々話され親の前で賞味される居たたまれなくなった新入生を早く見ろ!


痺れを切らしたようにしていた教頭がコホンと咳払いし、校長が仕方ないと言わんばかりの表情でマイクから声を離した。そして締め括りの言葉を贈り降壇し、次項へと移す教頭の方へ目を自発的に吸い寄る。


「では、ご紹介します。本校の理事の統括を勤めて貰っている薄氷 恵美菜理事長です。」


役者じみた手振りの校長の言葉に導かれ壇上に上がってきたのは理事長にしてはかなり若い女性だ。20代後半といった感じだ。


颯爽と現れたその理事長は一礼し、マイクを持って語りだした。


「新入生の皆さん、御入学おめでとう御座います。今ご紹介があった、理事を勤めさせて貰っている薄氷 恵美菜と申します。この美しい桜色の雪が舞い散る時候の路、こうしてあなた方が御健勝の程、一編の曇りなく此処にご在席為さったことは快く行幸と存じ上げます。そして何より______」


なんとも長々しい話だったのであまり覚えてはいないが、活気溢れると同時に腹の底から沈着さが垣間見られる風貌の女性だった。


「では、皆さん。これより一層勉学に磨きが掛かるよう心から応援しております。」


以上です、と言う声の後一礼し、演説のようなものが終え再び教頭が在校生代表__生徒会長からの祝辞を誘導させるかのような振る舞い、


「在校生代表、生徒会長より祝辞」


この時、それがこれから高校生活に多大な影響をもたらすものだとは、この時はまだ誰も知る由もなかった。


___と言えるほどに印象的なものだった。


その清廉潔白、聖人君子のような様相の生徒会長は舞台の舞姫如く優美な佇まいで登壇した。


黄緑がかった色彩の美麗な頭髪に斜前に紺碧のメッシュが目に付き、あたかもそれはさながら妖精の姫を連想させるほどだ。玲瓏たる魅惑的と言わざる声音が時候を囀り、体育館の中を響かせる。


「新入生の皆さん、春光麗らかな今日のこの頃、酣の日和の中の御入学心からお喜び申し上げます。第二学年現生徒会長の篠月翡翠と申します。」


ゆっくりとお辞儀が入りそれに合わせ観客と化した聴衆は辞儀を返し、その容貌に魅入っている。


「うおぉ、何だかすっごい美人さんが出てきたね」


と、横から生徒会長とは別のベクトルで美しさを体現させている風貌の律奏から声が掛かる。


突拍子ではないにせよ唐突だったせいもあり返答に時間の掛かった庵の麗々としたスカイブルーの艶やかな髪が揺れ端正な面が覗きこむように振り向く。


「もしかして知らないの?」


「ふっ。全く知らんのだよ」


「……パンフレットにも載ってたし、さっき言った通りように今の生徒会長さんだよ。現在話題となってる有名グラドルで、甘魅なフェイスと抜群のルックスで一躍人気になってるでしょ」


確かに圧倒的な戦力を誇る双丘が聳えていて、それに自然と引き寄せられ、男の視線が釘付けになっているようだ。


「そうなの? まあ、やっぱり知らないけど」


その答えが意外そうなのか庵は驚いた様子だ。


「律奏ちゃんそういうの興味ありそうなのにね。もしかしてオタク属性ある?」


「ごりごりのオタクですとも! そういういおりんもオタク感あるん?」


「まあ、ちょっとはね___いきなり呼び名がフレンドリーになったね……」


微笑が生まれ、正直な感想が口から零れる。


「私はあれだよー、音無奏風しゃまの方が良いかなぁ」


「__ッ!」


___ん?


庵の顔が一瞬強張った気がした。一体全体何だったのかは今は知る由がない。


それは刹那ですぐさま作り笑いのように微笑み返し、


「…………うん、確かにそちらの方が有名だし人気度も桁が違うけど、そういうのは比較できないしね」


ぐうの音のない正論である。


___と、祝辞の終えた生徒会長と入れ替わりに登壇した教頭が新入生に目線が差す。


「それでは主席入学者、新入生答辞」


___そういえば新入生主席って一体誰だったんだっけな。


次席の律奏はパンフレットを読まず、兄に全部一任させていたので唯一この会場で知らない人物だろう。


「あっ!」


なにかに気づいた様に突然声をあげた庵を驚き見つめる。


「ど、どしたの、いおりん?」


「じ、実は最初に聞いたときから……えっとその〜、ふ、府に落ち無いことがあって! それが何か今気付いて…っ!」


「う、うん。それで?」


「えっと、新入生主席と次席が印象的で覚えてたんだけど、律奏ちゃんが次席合格者だよね?」


「そやよ、えっへん!」


熟成された2つの果実がふるるっとが主張する様に揺れながら膨らませる。


「校門前に主席の人って学校始まって以来二人目の歴代満点合格者って書いてたね」


「そうそう、それでね名前欄を見たらふと気付いて…………」


溜めるように時間をかけ言葉を濁す。言って良いのかと孤疑逡巡している様にそして声を振り絞った。


「し、主席の人の姓も千乃で律奏ちゃんと同じだったんだけど…………」


「へ~、偶然じゃない。内のお兄ちゃんは同い年だけど社会人だし」


「そ、そうなんだ」


何やら対応に困る顔をしていて声が掛け辛い。


そしてその幻想をぶち殺すのもまた現実だった。


「新入生代表 千乃奏鳴さん。御願いします」


「はい」


底から沈着に喫した何とも玲瓏とした聞き覚えのある声が耳に入ってきた。


「え? ええええええぇぇえ___ッ!?」


ガタッと勢いよく椅子から体を跳ね起こし、その場で立ち上がった。注目の的になっているのは言わずもがなだろう。


驚愕と嬉しさ、気恥ずかしさといった感情が乗った顔をして前倒しの体勢にった律奏は今が入学式だということを忘れたかの様に目を大きく開かせ、口許から大声が零れるのを由とし叫ばずにはいられなかった。


「お、お兄ちゃん_____ッッッ!?」


この来訪者があたかも計画通りと口元をに歪めていたことは。


…………ここだけの話。

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