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063●千枚通し、こわいで
今日のヤマは、ちぃと難しい。
相手はお侍。太平の世になっても、身のこなしに隙があらへん。
浪人ゆうても、お武家はんや。
・・・ここは、手ぇを変えなあかん。
「トーフゥー、あさできぃー!」
「ヒモノやでぇー、いりこに小えびー。」
町角には棒手売の声が響き、人が行き交う。
そのざわめきの中で、ひときわ濃い影が差した。
来た。
どこぞの帰りか。きのうは泊まりやったんやろ。
すれ違いざま、
うちは足をもつれさせるふりをして、胸に体を預けた。
「すんまへん。」
その一瞬。
袖に隠した極細の‘千枚通し’が、迷わず一点を突く。
静かに。深く。確実に。
「気いつけやぁ・・・。」
お侍はそう言い残し、ふらりと十歩ほど歩いて・・・倒れた。
うちはすぐに人混みに紛れる。
呼吸も速めへん。
鼓動だけが、胸の奥で小さく跳ねた。
親方。今日もやったで。




