052⚫️許し
「久しいな、カナタ・エーデルマン。名付けたわたしを、憶えているか?」
「まさか・・・あの時の・・・リノが敬意を払っていた、あの!」
「よかった。記憶は確かだな。では問おう。ダリアを殺めた男は、なぜ自らの喉を突いたのか。あなたは知っているのか?」
魔王は、いや、カナタは言葉を失った。
なぜだ?考えたこともなかった。そうだ、使命を果たしたなら、戻って報告すればよかったはずだ。それなのに、なぜ?
「ここに二つの魂を持ってきた。ひとつ目は、その男の記憶だ。聞くがいい。」
ー・・・なんてことをしてしまったんだ・・・俺は・・・こんな人を手にかけたのか・・・ああっ・・・耐えられない。
カナタは静かに聞いた。
これが、あの男の最期の声か。
「そして、これが二つ目。あなたに近しい者の魂だ。」
ーやられた・・・油断したよね。甘いな、わたし・・・。でもね・・・ああ、あなた、本当は元気だったのね・・・よかった・・・重病じゃなかったんだ・・・ カナタ・・・もう一度、会いたかったな・・・。
狂おしい思いが込み上げ、その衝撃にカナタの身体が震えだした。
「・・・なんだ・・・と。ダリアは・・・ダリアはこいつを・・・命を奪った男を、許していたのか? 直せぬ病ではなかったと・・・安堵して逝ったのか!」
魔王と呼ばれた男が、地に膝をつく。
両手をつき体を支えながら、震え続ける。
その地面に、いくつもの水滴が落ちた。




