015⚫️できるけど、できるの、その覚悟?
「ふぅ。」
ロイが息を吐いた。目を開き、3人を見る。
「ロイ殿・・・いかがでしょうか?」ルイーザが恐る恐る尋ねた。
「いやあ、無理難題でしたね。3日で賢者。できますが、できますか?」
「えっ?どういうことですか、ロイ殿?」グラノフが畳み掛ける。
「あ、先ずですね、これから冒険に出かけるのであれば、その’殿’とか、敬語表現とかは、無しにしましょう。道中、その言動から上下関係や素性がわかると、よくない人たちに狙われますからね。・・・わたしは3日で賢者を育てることができます。しかし、皆さんにその覚悟ができますか、ということです。」
「どういうことなの、ロイ?」
「姫、あ、いや、エレナと言い直しましょう。では、説明しますね。」
グラノフ。
賢者となる者の従者として、賢者級の’武神’になることが求められる。
万一、賢者が危機に陥った場合、
それを救うには並の武力では、どうにもならない。
ヒトは誰しも年齢を重ねることで、基本的にパワーは落ちる。
だが、’武神’クラスになるということは、
いきなり高き頂に至る、ということ。
後は徐々に失われていく能力を目の当たりにすることになる。
年齢とともに研ぎ澄まされる技術や力は存在する。
だが、’武神’はその極限状態にあるのだ。
それはつまり、それ以上にはなれないということを意味する。
自らの老いを、確実に感じる残りの人生に耐える覚悟があるのか。
ルイーザ。
賢者となる者の従者として、賢者級の’魔神’になることが求められる。
最悪のピンチを賢者がむかえた時、
それを救うには並の魔力ではどうにもならない。
だが、ヒトが魔法の’使用者’ではなく、その’管理者’になるということは、
すなわち魔法の理を知ることになるということだ。
そこには、筆舌に尽くせない不条理な苦しみが伴う。
また、その理を誰かに説明することは厳禁となる。
誰にも言えない、誰にも理解されない事実を、
孤独に胸に秘めて一生を終える覚悟があるのか。
エレナ。
賢者となるものは、その能力故に苦しむ。
自分以外の誰をみても、その師となるものは見当たらない。
智慧を身に着け、経験を重ね、やがて次の世代にそれらを委ねていく。
そのような行程を踏むことは叶わない。
もし、子が産まれた時、
なぜこの子の能力は、このように低いのか、と苦しむことになるかもしれない。
決して奢らず、他者への共感を持ち続ける覚悟があるのか。
ロイの言葉に、静寂が戻る。
ベルムがお茶のおかわりを持ってきた。




