第九話 リーダー
「殴るぜぇ!! たああああああ!!!!」
「ボシャッ!!」
レアスライムの顔の右半分が弾け飛んだ。
続いて、
「俺も行くぜぇ! とりゃああ!!」
「スパッ」
タケヒコはレアスライムを横一文字に切り裂いた。ノノも続く。
「フ……、フレイム!!」
「ボワッ」
「ぬーん」
『レアスライム、HP:0/20、レアスライムは倒れた』
「っしゃあ! 相手は1匹とは言え、1ターンキル!! ノーダメージで経験値大量ゲットだ!! レベルは!?」
タクヤはテロップを注視した。
『タクヤ、Lvアップ、5→8。タケヒコ、Lvアップ、5→9。ノノ、Lvアップ、4→7。セルジュ、Lvアップ、22→23』
「おーし、やったな。セルジュ」
「何が?」
明るく話し掛けてくるタクヤに対し、はてな顔のセルジュ。続いてタクヤは口を開いた。
「セルジュもそろって皆でレベルアップしたの、初めてだからな!」
セルジュは一瞬、虚を突かれキョトンとしたが、すぐに満面の笑みを浮かべ、言った。
「レアスライムにありつけるなんて、ものすごい強運だよ。やっぱり、このパーティ面白いね♪」
「はっはっは! 俺様が居るからな! な! タケヒコ! ノノも!」
「ッハハ、何だそれ?」
「もー、ナルシーなんだからぁー」
一同は笑い合い、肩を組んだ。
――、
「――で、次に向かうのはココ♪」
「神殿……?」
「ここは……」
「……」
一同は、最初の村の飲み屋に集まっていた。
「それにしても、ここのビール、ホンモノみたいにうめぇのな、ヒック」
「酔うまで飲むなよー、ゴクリ」
「タケヒコ君も、結構飲んでますよ? あ、烏龍茶もう一杯」
「さぁて! 話を戻そうか!?」
気の緩んだ三人に対し、ピキり気味のセルジュが釘を刺しながら言う。
「この神殿は、謎解き要素もあって、ある条件を満たさないと次の部屋へと進めなかったり、スライムの3倍強い敵が現れたりするよ♪」
「あのぅ……」
気まずそうにノノが手を挙げ、言う。
「既プレイだから、知ってるんですけど……このマップ、4面目くらいの場所ですよ? 草原が1面目と考えても、3つ飛ばすのは流石に早いな、と……」
「んだとー!? なーんでそんなトコいきなり行くんだよ!? セルジュ!!」
「まーまー熱くなんな、タクヤ。でも理由は聞いておこう。なんでだ? セルジュ」
ノノと、酔っ払った二人はセルジュに問う。フーと、ため息をついた後、セルジュは口を開いた。
「運……だよ♪」
『ウン!?』
三人は口をそろえて叫んだ。
「そう、運♪ この前、レアスライムに遇ったでしょ? 相当な運がないと無理なコトなんだよ。それなのにばったり遇っちゃったんだから、このパーティは、今相当運がいい状態にあると思うんだ♪ そこで」
『そこで!?』
「運が無ければ出合えない、レアモンスターが他より多い、このマップに行って、レアモンスターをコンプしようと思ってね♪」
「そ……そんなコト言ったって」
「ああ……」
ノノとタケヒコの言葉を聞き、フルフルと震え始めるタクヤ。
「? どーする? タクヤ♪」
「とーぜん!!」
「!!」
「!?」
「行くっきゃないっしょ!! 完全網羅するぜぇ! モンスター図鑑!!!!」
「はわわ……!」
「やっぱそう来るかぁ」
「リーダーが言ってるんだから、決まりだね♪」
「ちょっと待てー!」
「!!」
「!?」
口を開いたのはタケヒコ。不服そうな顔をしていた。
「だぁれが、リーダーだって?」
「え? 俺じゃないの?」
「?」
「確かにこのヒトがリーダーってのは……」
「私はてっきりそういうもんかと……♪」
パーティのリーダー選出は、タクヤ2:タケヒコ1:タクヤ以外1で割れていた。
「俺が! リーダーだ!!」
「いいや、俺だね!」
「タクヤ君よりは、タケヒコ君の方がいいかと……」
「私はタクヤがいいかなー、なんて♪」
「表へ出ろ! 決闘だ!!」
「おーう! 面白れぇ、やってやる!!」
「ちょ……仲間割れは……」
「復活の薬草と回復魔法あるから、心置きなくねー♪」
このパーティの統一感はこの上なくバラバラだった。
――、
『タケヒコが現れた!』(タクヤ視点)
『タクヤが現れた!』(タケヒコ視点)
『戦う――、殴る』(タクヤ視点)
『戦う――、斬り付ける』(タケヒコ視点)
「おりゃあああ!!」
「ゴッ!!」
先攻はタクヤ!
『ヒット! タケヒコ、HP:29/47』
「ぐあっ! やるな、タクヤ!! お返しだ! とう!!」
「スパッ!」
『ヒット! タクヤ、HP:21/40』
「ってー!! クソっ! 威力はあっちのが上か!! 手数で勝負だ!!」
「ゴッ!!」
『ヒット! タケヒコ、HP:11/47』
「ぐっ! このままじゃあ負ける……! だが、クリティカルに、賭ける!!!!」
「スパッ!」
『ヒット! タクヤ、HP:2/40』
「ぐあっ!! 目の前がかすんで来やがる……! だがっ!」
「惜しい! あと一息だったのに……!」
「これでぇえええ! こっちの勝ちだぁあああああ!!!!」
「ぐあぁぁああああ!!」
「ゴッ!!」
『ヒット! タケヒコ、HP:0/47、タケヒコは倒れた』(タクヤ視点)
『タケヒコ、HP:0/47、GAME OVER』(タケヒコ視点)
――、
「復活の薬草を――、と♪」
「うーん、あっ! 勝負は!?」
「ようやくお目覚めか、タケヒコ? お前の負けだよ~ん(笑)」
「!? ――!!(ウザ過ぎる!!!!)」
思わず顔が赤くなるタケヒコ。
そこへスッとノノが割って入り、言った。
「わ……私はタケヒコ君を応援してたんだけどね……」
「! あ、ありがと……」
二人の様子を見ていたタクヤは少し怒り気味に言う。
「あー、負け犬たちがイチャイチャしてるー!!」
『しとらんわ!!!!』