第七十一話 火山
「ありのまま、あの日起こった事を話すぜ」
時の流れは早いモノで――、
8月も終わりに近づいている週末の金曜日、ゲーム『The battle begins on the farm』内で、タクヤ達のパーティは始まりの村の路上で、手頃な岩の上に座り、話をしていた。
語り手は、タクヤ――。
「月曜日のコトなんだけど、コンビニにヤバそうな客が来て、『商品の値段が高い』だとか『ビール100円で売れ』とか騒いでやがったんだよ」
「へー♪ それで?」
「110番通報してやった」
『どっ』
パーティは笑いに包まれた。
「でも、続きがあるんだよ」
「どんなですか?」
「ふむふむ」
先程のセルジュに続いて、ノノとタケヒコも食い付いてきた。
「警察がやってきて、その客が署に連行される際に、『このコンビニの住所と、てめえの顔覚えたからな? 見てろよ』って言ってきやがったんだよ」
「こっわー」
「おいおい」
「あちゃー♪」
パーティは凍り付いた。
「気を付けろよぉー、タクヤ」
「逆恨みして報復されませんかね?」
「そういった事件は無いとは言い切れないよ♪」
ふーと、タクヤは深く息を吐いて、言う。
「現実世界でもこのドラコが居りゃあ一安心なんだがなぁー。なっ、ドラコ」
「キュウン?」
ドラゴンナイトのタクヤは、連れているドラゴンのドラコの頬に手をやった。ドラコは何のコトやらさっぱりと、いった様子だった。
「兎に角、タクヤ君が刺されません様に。なむー」
「今のうちに、借りた漫画返しとくか」
「タクヤの顔を見るのも、コレが最後か……♪」
ノノは手を合わせ、タケヒコはタクヤの身辺を案じ、セルジュはハンカチで涙を拭きながら、言った。
「おい! ちょっと待て、まだ報復されると決まった訳じゃないぞ!! それにいざとなれば元高校球児の並外れた動体視力や身体能力で相手の攻撃をするりとかわして……」
『なむー』
「おい! 全員で手を合わせんな!!」
――、
パーティはタクヤの実家(ゲーム内の)の離れに集結し、次なるクエストを選択しようとしていた。
「タクヤさんのパーティが、次に受けられるクエストは……今のところこれだけです……」
離れの受付は分厚い冊子を差し出し、そこから『火山のドラゴンを討伐せよ』の項目を指差した。タクヤはそれに対し、あからさまに不満の表情を表した。
「えー、それだけかよー。まだ暑い季節だってのに火山に行かないといけないわけー?」
「申し訳ございません。現在、受けられるクエストはこれのみとなっておりまして……」
「現在って?」
クレーマー化するタクヤに、見かねたセルジュが釘を刺す。
「タクヤぁ♪ ちょっと……」
「何だよ、セルジュ」
セルジュはタクヤの服の袖付近を引っ張り、受付嬢の居ないところまで連れて行き、言う。
「おほん♪ 初めのうちはここで受けられるクエストはメインクエストのみとなっているんだ」
「メインクエストぉ?」
「うん♪ 各マップに一つ、ストーリー進行に関わるメインのクエストがあって、それを全部クリアしたら、サブクエストが自由に受けられるようになっているんだ」
「ふーん、プレイヤーには、ストーリークリアを優先してもらってるんだな」
「メインクエストは、どんな順番からでも受けられるようになってたでしょ♪」
「ああ、確かに。そこは自由度高めになってるんだな」
「そう♪ そこは、このゲームの良いところかな。まあ、今回は観念して、クエスト『火山のドラゴンを討伐せよ』を進めようよ♪」
「しゃーないな、今回はそれをやるかぁ」
タクヤとセルジュは話を付け、再び受付嬢の前までやって来た。
「終わったのか?」
「今回は、選択肢は無いですよ?」
タケヒコとノノも、それを待っていたらしく、選択を迫ってきた。
「おう! 待たせたな。じゃあ行くか、『火山のドラゴン討伐』!!」
『おー!』
『火山へ行きますか? ――はい』
始まりの村からへ出て南西へずっと進んだ場所に、それはあった。
火山地区――、
見ただけで汗まみれになる程の熱気が、そこにはあった。不規則に火山から噴き出す、灼熱の炎や、ドロドロとした溶岩があちこちに存在し、見る者を圧倒した。
「oh……」
「コレは……」
恐らく初見のタクヤとノノは只々その光景を見つめるコトしかできなかった。
「いやー、ホント」
「いつ見ても暑そうだね♪」
一方でそれを見慣れたかの如くなタケヒコとセルジュは、先程の二人とは一転して少々の余裕すら見てとれた。
(何じゃこの光景はー。見ただけで頭がおかしくなる。どろっどろの溶岩とか聞いてねえぞ……!)
タクヤは不満を抱きつつ、ふと、何かに気付いた。
「セルジュ! この溶岩って触れると……」
「さぁ? どうなるでしょう♪」
(触ってみるか? VRだからホントに熱いわけではなさそうだし……でも、触ったら一発退場になる様な仕様もありそうだからな、このゲーム。所々で鬼畜仕様だし。でも――、気になる。触ってみるか?)
タクヤはやめろと言われたらやってみたくなる童心を持ち合わせている様で――、
「あー、それ……」
「ジュッ」
「あちぃぃいいい!!!!」
『game over』
「触ると一発でHP0になるよー♪」
セルジュの忠告も、時すでに遅し。タクヤは溶岩を触って、
『タクヤは力尽きた』




