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第四十三話 『ゼトの城跡』


『ゼトの城跡』――、


昼間なのにも関わらず辺りは薄暗く、野鳥の声や獣達の呻き声が鳴り響き、ガサガサと何者かが草むらで蠢く音が聞こえてくる……。


「ううー、いつ来てもここは怖いですねー」


「何回来たんだよ、ノノ」


怯えるノノに、軽く突っ込むタクヤだった。


「着いたよ♪」


「!」


タクヤ達の目前には、今にも崩れそうな廃墟が不気味に佇んでいた。それは、瓦礫の山に、微かな月明かりの他、明かりは何もない闇に覆われた建物だった。


「いかにも……って、感じだな」


タクヤが息を呑んでいると、セルジュは何かを差し出した。


「ほい♪」




「!?」




「その辺にあった、トーチだよ♪」


(設定がテキトー……!!)


「いつも使ってる杖でも明かりになるけど、こっちのが雰囲気出るしね♪」


「そんなんでいいのか……?」


タクヤは少々、困惑した。




――、


建物内の探索が始まった。


1階――、パーティは先頭セルジュ、二番目タクヤ、三番目タケヒコ、最後尾にノノと、いった列を成して進んで行っている。ツカツカと、四人の足音が周囲に鳴り響く。


「あ♪」


「ん? ……あー!!」


セルジュとタクヤは何かを発見した。


「どうした?」


「何かあったんですか?」


「ああ、タケヒコ、ノノ。た、たか……」


「宝箱があったよ♪」




「ズーン」




タクヤは、セルジュに台詞をとられた様で少々、ショックを受けた。


(このくだり、前も無かったか?)


タクヤは一人、悶々としていた。それに構わず、タケヒコはタクヤに話し掛けた。


「タクヤー。今回も、リセマラはしないのか?」


「っは! あ……、ああ。出たとこ勝負で行くぜ。俺が開ける」


正気を取り戻したタクヤ。先陣を切って宝箱を開けるコトとした。


「ガチャ……パァー」


宝箱を開けると、中から眩い光が、辺りを照らした。


「こ……、コレは……?」




『銀のナイフを手に入れた!』




「……何?」


タクヤの余りの予備知識の無さに、他三人はガクッと腰を抜かしかけた。


「こ……コレはシ―フ系の役職が主に装備する武器で、終盤でも活躍する重要アイテムだよ♪」


「おお! 流石俺! 今日も引きが良いねぇ」


セルジュとタクヤのやり取りを一歩引いて眺めていたタケヒコは一人、思いを巡らせる。


(確かにタクヤの運はこれ以上にないくらい良い。しかし、この後待ち構えている敵に対しては、どうする……?)


その後、1階を探索したが、150コインが入っている宝箱があるだけで、他には目ぼしいモノは無かった。一行は2階に足を進める。


「んー♪ こっちから見ていこう」


「何だセルジュ? 何か考えでもあるのか?」


「テキトーだよ♪ タクヤ。気にしない気にしない」


「?」


タクヤはセルジュの指示に疑問を抱くのだったが、特に反論せずに従い、パーティは進んでいった。




――、


「あー!」


建物内の寝室の様な場所で、タクヤはまたしても宝箱を見つけた。


「さっさと開けるぞ! おらぁ!!」


「ガチャ」


辺りは宝箱から放たれる光に包まれる。そして――、




『銀の槍を手に入れた!』




「槍ぃ!? 剣とナイフと、魔法に槍もあんの? このゲーム」


「あと弓矢と斧とかもあるよ、タクヤ♪ ジョブチェンジの時に説明書き読まなかったの?」


「ああ、読んでない」


「――」


余りの開き直りっぷりに、セルジュは少々面食らう。


「でもファンタジーゲームの基本か、そんな武器ぐらい。俺らで使えるヤツ、居るの?」


「残念だけど居ないね♪ ソルジャーとかナイトとかが使うよ、一応とっておこう」


セルジュは銀の槍を装備……はできないが、所持する形となった。


更に探索は続く。


浴室、キッチン、ダイニングルームと、建物の隅々まで隈なく探索は続けられた。と、ここで2階のとある部屋――、少し広めの寝室に、パーティは辿り着いた。外ではゴロゴロと雷が鳴り始め、ザァーっと雨も強く降り始めた。


「急に天気が悪くなったな」


「気にしない気にしない♪」


タクヤとセルジュが言葉を交わしていると、ピカッと稲光の閃光に照らされ、1人の男の姿がベッドの上に見受けられた。男の名はゼトである。




「ゼト……!」


「――!」




タケヒコとノノは身構える。


「あっ! あのオッサン……よくも俺の実家に火をつけやがったな!? ゲームの中だけど……」


「タクヤ、ちょっと……」


怒り気味のタクヤを、セルジュは制止した。


「何だよセルジュ?」


「戦闘に入るよ♪」


「!?」


ゼトはベットの上からゆっくりと立ち上がる。そして、寝室の天井を見上げながら、言葉を発した。


「そうか……。お前達は始まりの村で出会った……名は?」




「俺はタクヤだ、オッラーン!!」


「セルジュ♪」


「……タケヒコ」


「ノノです!」




一同は口々に答えた。それを聞き、ゼトはゆっくりと口を動かす。


「タクヤ……セルジュ……タケヒコ……ノノ……よくここまで来れたな。そこだけは誉めてやろう。……人は何故、か弱きものに心を開くのだろう……?」


「何か語り始めたぞ」


「いいから♪」


セルジュはタクヤに釘を刺す。


「美しいものに惹かれるのだろう……? 儚いものに涙を流すのだろう……? ワシには分かり兼ねる。ワシは人とは相容れぬ存在なのだろう……。さて、その様な者と話をしていても意味は無い。相容れぬ者は、排除するのみ……」




「戦闘、開始だね」


「ああ」




セルジュとタケヒコは身構える。




『魔将軍ゼトが現れた!!』





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