第三十二話 面接
「――で? 志望動機は?」
「ハイ! 私は一身上の都合により、以前勤めていた会社を辞めてしまった為――」
夏――、
お盆が近付いてくる季節の平日、タケヒコもといタカヒロは会社員として平常勤務、ノノはOLとしてパソコンの前で仕事、セルジュは――、
「見ちゃダメ♪」
――。
そしてタクヤはアルバイトの面接を片っ端から受けていた。
2日前――、
「しゃあ! 合計4面クリア。ここでセーブだ!」
『The battle begins on the farm』プレイ中の、タクヤのパーティは始まりの村、タクヤの実家の離れがモチーフの建物内でデータセーブをしていた。
「それにしてもこの日誌、泥まみれで読みづれーな。力入れたら破れそうだし……」
「あー♪ それは――」
文句を言うタクヤに対して、とあるコマンドを入力するセルジュ。
「こうすると、ほら♪」
「うお!」
日誌が宙に浮いて、書き込み日時検索、キーワード検索等の項目が日誌からホログラムの様に表示され、各ページが読み取れるようになった。
「これで見れるでしょ♪」
「ナイスだセルジュ! これで必要な時にラスボスのデータが調べられるんだな?」
「そうゆーこった」
「ですよ!」
タケヒコとノノも続いて口を開いた。
「ラスボス、ゼトを倒すためのアイテム探しに役だったりするんだぜ?」
「最終戦のヒントも隠されている様ですよ(wiki調べ)」
「へー、色々使えそうだな……あ!」
「何♪」
タクヤが何か気が付いたかの様に声を上げた。
「結構プレイしてきたろ? 現実世界今何時だ?」
「夕方は過ぎてるかもね♪」
「ですね」
「だな」
「今回のプレイで2面一気にクリアできたことだし、休憩とるか! 次は……ってもう週末終わるか!! 金曜日の22時に集合ってのはどうだ?」
『賛成!!』
「じゃあそーゆーコトで! 解散!!」
タクヤはガチャッとVRゴーグルを外した。辺りは真っ暗で、日が沈んで大分経っていた様に見てとれた。
「あー! 朝集合だったのに夜になってら。セルジュの勘って鋭いな」
ゲームの世界から離れると、急にグゥーと腹の虫が鳴った。
「とりあえず、晩飯食うか……」
ゆっくりと自室がある二階から食事をとる和室に降りて行った。
「!」
和室に着くと机の上におかずが皿にラップされてあった。すぐ横に、置手紙の様なものも。
『タクヤへ。冷たいのが嫌だったら、レンチンしなさい。母より』
(あったかい方がいいか……)
タクヤは、手紙を読んだ後何となくおかずを電子レンジに入れた。
「チーン!」
1、2分後、かなり旧式の電子レンジが鳴り、タクヤは皿を取り出した。
「いただきます」
レンジを待って居るまでに炊飯器からよそっておいたご飯を口に頬張りながら、タクヤは思うのだった。
(なんか、あっちでは4人でわいわいやってたけど、現実世界で一人になると、寂しいもんだな……。平日、何して過ごすか……)
数秒、考えてみる。
「あ――――!!!!」
タクヤは忘れていた約束を思い出す。
『家賃3万出すこと! 食費、水道光熱費込みで良いから。日雇いバイトでもすることね』
「バ……バイト始めないと……。コンビニとかパチンコ屋でもいいかな?」
「あー! タクヤ!!」
「!!」
母がタクヤが居るのに気付き、和室の方へとやってきた。
「まーたこんな時間までゲームやって! 明日から平日だけど、分かってるでしょうね!?」
「わーってるよ!(さっきまで忘れてたけど……)」
「何、その表情は? まさか忘れてたわけじゃないでしょうね!?」
「覚えてたよ!」
大噓をつきつつ、タクヤは決意表明する。
「明日から、履歴書とか書いたり、バイトの面接の電話とかかけて、フリーター就活始めるから!」
「それならいいわ。頑張りなさいよ」
「おおよ! 任せとけ!!」
翌日――、
タクヤは書店で購入した履歴書を用いて、書類作成を始めた。
「職歴……書き辛れぇー。ちょっとしか持たなかったもんなー」
ペンが止まる。片手でペンを回しながら、窓の外を見た。
タケヒコ(タカヒロ)、ノノ、セルジュの面々の顔が頭に浮かぶ。
(皆……働いているんだよな)
立ち上がり、伸びをしてみる。
「んー……、リーダーの俺が、こんなんじゃあだめだよな!」
サッと座り、続きを書き始めた。
そして更に翌日の、今――。
タクヤはコンビニバイトの面接を受けている。
「土、日は入れるの?」
「土、日は難しいのですが、祝日や年末年始は問題なく入れます!」
「へぇ、そうなんだ。因みに、いつから働けるの?」
「ハイ! 明日にでも。もっと言えば、今日からでも行けます!!」
「おお、頼もしいねぇ。じゃあ最後に何か、ある?」
「ハイ! 一日でも早く戦力になれるよう、全力で頑張ります!!」
「分かったよ。じゃあ今日はありがとう」
「ハイ、面接の機会を作っていただき、ありがとうございました! 失礼します!!」
そんな調子で2件、3件とバイトの面接を受けていき――、
「明日からよろしく頼むよ」
「ありがとうございます!」
1店、バイト面接の合格をもらった。タクヤは喜びのあまり、母に声高に話し掛けた。
「コンビニのバイト、面接受かった!」
「あら、やったじゃないの。いつから働けるの?」
「明日から! これで気兼ねなく実家に居候できるよう、家賃払っていくぜ!」
「まあ! 頼もしいわね。よろしく頼むわよ」
「おうよ!」
タクヤはまだ知らなかった。ゲーム『The battle begins on the farm』並に困難な事態が、彼に巻き起こってしまうコトを――。




