第十四話 実家
「……クヤ……タクヤ……タクヤ! 起きなさい!!」
「んー? かーさん?」
「怒緒羅!!」
「っは!」
タクヤは眠っていた布団をはぎ取られた。と、同時に何故この状況になっているのか、疑問に思った。
「アレ? 『The battle begins on the farm』やってて、終わった後机に突っ伏して寝て、布団?」
「そーよ! 机なんかで寝てたから、無理やり身体動かして、布団で寝かしてたの!! そしたら、11時になっても起きないんだから!」
「何!? 11時!!? 3時にプレイし終えたから……8時間かぁ、よし!」
「バシッ!」
「いてッ」
タクヤは母に、丸めた新聞紙で殴られた。
「『よし!』じゃないでしょうが! 施設出られたからってゴロゴロして……朝ごはん無いからね、お昼まで待ってね」
「望むところよ!」
「バシッ!」
「いてッ」
タクヤは再び母に、丸めた新聞紙で殴られた。
「何を意気込んでるのよ、全く……後、あのゲーム、面白いからってやり過ぎないようにね」
「何だよー、自分はそのゲームでもらえた金で株やったくせにぃー」
「か……、株は成功したら良いご飯食べさせてあげようと思ってたの! とりあえず、つべこべ言わない!」
「るせー、俺だけあのゲームのアイデア料的なもので何一つおこぼれをもらってねーんだよー! ぜってぇあのゲーム、心置きなくプレイして、完全クリアするんだからな」
「フ―、やれやれ。仕方ないわねー。でも一つ、約束してもらうわよ。家賃3万出すこと! 食費、水道光熱費込みで良いから。日雇いバイトでもすることね」
「! ……」
母は言うと、家事をするのか、去っていった。
急に逃れようのない現実を叩きつけられて、タクヤは言葉を失った。
(入院費は何故か払ってくれたのになぁ……)
『家賃3万出すこと! 食費、水道光熱費込みで良いから。日雇いバイトでもすることね』
「……仕方ねえか! 平日日雇いバイト! 週末ゲーム!!!!」
タクヤの決意は固まった様だった。
昼頃――、
「頂きます」
『頂きます』
タクヤ家では、父の合掌(?)から、昼食が始まった。メニューは、鯖の塩焼き。至って不通といえば普通の和食だった。が――、
「うっわぁ! うめぇうめぇ!! かーさんの焼いたサバ、ちょーイケてる!」
病院食や施設の食事ばかりだったタクヤにとっては、この上ないご馳走の様に思えた。
「褒めたって何も出ないわよ(うっふ……作った甲斐があるわねぇ)。ご飯、おかわり要る?」
「要る!!」
まんざらでもない母は、テンポ良いノリでタクヤにおかわりをよそった。
「まーでも、口うるさいのが帰ってきたモンだわ」
「コラ、姉弟仲良くしなきゃダメだろ」
姉の軽率な言葉に、釘をさす父。
「ほーあおへーはん、ははおふひおーへ?」
「飯食いながらしゃべんな! 馬鹿弟!!」
「コラ、馬鹿弟は言い過ぎよお姉ちゃん。タクヤも、ご飯食べてから話さないとダメよ」
タクヤ、姉、母の微笑ましいシーンがそこにはあった。
と――、
「っは!」
タクヤは何かに気が付く。
「もう12時45分!? セルジュが決まって10分前に来るなら、リーダーの俺は15分前行動しなきゃ、メンツが立たねぇだろ!!」
続けてガツガツと残りのご飯を平らげ、ダッシュで二階へ上がっていく(タクヤの部屋は二階だったのな)。
「かーさん悪い! 洗い物は頼んだ!!」
「任せなさい、でもタクヤ! 約束は約束だからね!!」
「わーった! 平日、日雇いバイトする!!」
「カチッ……ウィーン」
タクヤは母と会話を交わし、自室に到着。次いで、ゲームの電源を入れ、VRのゴーグルを掛けた。
『The battle begins on the farm』
タイトルが目の前に堂々と浮かび上がってくる。
「前の続き、やるぞ!!」
『続きから……シュイーン』
――、
タクヤは気が付くと、神殿の大広間に居た。辺りを見渡す。そこには蓋が開いて空になった宝箱が3つ、置いてあるだけだった。フーと、ため息をついた後、タクヤは軽く額を拭いながら言った。
「俺が、一番乗り……っと」
「ふーん♪ 何がぁ?」
「! ――」
タクヤが振り向くと、そこにはセルジュの姿が!
「えぇぇええええ!!? 何時から居たのぉおお!!」
「うーん、暇だったから、今から5分前くらいかな?」
「に……20分前行動……」
がっくしと肩を落とすタクヤだった。
そこからおよそ5分後――、
シュイーンという音が似合いそうな光と共に、残り二人が登場した。
「あっ!」
「えっ?」
「二人揃って登場とは、えらい仲が良いんだなー」
タクヤはタケヒコとノノの二人を茶化した。しかし自然体な二人。タクヤを無視して会話を始める。
「俺は今来たトコ。ノノは?」
「私もつい今さっき来た感じです」
「ヒューヒュー、お熱いねぇー、雑魚カップル」
「!!」
「!?」
「ん?」
タクヤの心無い一言で火が付いた二人、タクヤに詰め寄る。
「止! め! ろ! な! その呼び名!!」
「だぁーかぁーらぁ、カップルじゃないって言ってるでしょーが!!!!」
「んなコト言ったって、なぁ?」
セルジュに同意を求めるタクヤだったが――。
「今のはタクヤが悪いよ♪」
「ふぁ!?」
「鉄の剣は折れたが、こっちには銀の盾があるんだぜ?」
「新しい魔法のサンダーで丸焦げにしてあげてもいいんですよ?」
「あー! わーったわーった、悪かった。それはそうと、始めようぜ?」
「――」
「……」
腑に落ちない二人であった。




