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護符作りパート1【後編】


「ご、護符一枚で銀貨に……?」


 値段表一覧を見たら、ごくり……と生唾を飲み込むことになった。

 一番簡易な、さっき私が作った『耐毒』の護符でも銀貨一枚になる!?


「魔法紙と違って持続する物なので、簡易な物でもそれなりに高額買取となります」

「な、なんと」

「護符は貴族の方が使うので。『耐毒』の護符は毒を盛られたりする可能性のある貴族には、人気なので」

「な、なるほど……」


 つまり、これより上のランクの護符を作れば……もっとお金が……!


「……コニッシュはんは自分が『神子』なのを忘れとりますなぁ」

「そういえば神子ってなにかすることあるの?」

「あるっちゃあありますけど……陛下もミゲル様も、コニッシュはんの態度が曖昧だったから頼まんでおるんどす」

「えっ」


 後ろで交わされていたジェーンさんとシンの会話に振り返る。

 私に役目が、あったの!?


「え、え、あの、な、なにをすればいいんでしょうか? 私、なにか役に立つんでしょうか?」

「闇の聖霊神を召喚してもらうんどす。闇の聖霊神に、直接加護を与えられた者——『神子』には、加護を与えてくれた聖霊神を召喚することができる、と言われとるんどす。それは元素の聖霊神召喚とは、わけが違います。なにしろ最上位の聖霊神たる、闇の聖霊神様の召喚ですから」

「っ」

「それって……!」


 シンが前のめりになる。

 でも、そんな……私が?

 思わず左目を手で覆う。

 この左目に宿った闇の聖霊神の加護——【魅了の魔眼】。

 確かにこれは私の人生を変えた。

 よくも、悪くも……。


「けど、コニッシュはんはずっと迷っておるようでしたからなぁ。陛下もミゲル様も、コニッシュはんがこの国で生きていくと、はっきり決めてへんみたいだったから、そういう話をせんかったんと違いますかね」

「……そ、そ、う、なんですか……」


 そういえば、確かにかなりぼんやりしたお返事しかしていない。

 やりたいことも、行きたい場所もなかったし。

 かと言って故郷に戻ることもできないし。

 左目を覆う。

 ただ、この目をなんとかしたい。

 たとえこの国では微弱な効果しかなく、この国の人たちにとってはなんの効果もなかったとしても……。


「この国に腰を据えるんでしたら、陛下もミゲル様もコニッシュはんに『神子』としてのお役目を依頼することもあるかもしれまへんけど」

「…………」

「やっぱりまだそこまでの覚悟はありまへんか?」

「あ……え、ええと……」


 もしかして、ジェーンさんは私の様子を見てその話を黙っていたのだろうか?

 じっと見つめられて、俯く。


「ジェーンさんは、どうして今その話を……?」

「ちょっと元気になって、やりたいことややってみたいこと、この国で過ごして、この国でできた(えにし)を大切に思えてきたんと違うかなぁ、と思って……そろそろええんかなぁ、と」

「っ……」


 待っててくれたの?

 私なんかの気持ちを?


「私……ずっと誰の役にも立てなくて……」

「コニッシュはん、人の役に立つ立たんは、あんさんが決めるもんと違います」

「えっ」

「もちろん他人が決めるもんでもありまへん。そもそも“役立つ”つー言葉が、わっちは嫌いどす。なんどすか、その上から目線。そんなん考えんでええんどす。やりたいことをやる。それだけでええんどす。コニッシュはんの人生なんですから、他人なんか関係ありまへん」

「うん、そうだよ!」

「……っ」


 シン……ジェーンさん……。

 私は……。


「でも、それはそれでどうしたらいいかわからないですし」

「とりあえず目標はあるんでっしゃろ?」

「え、あ……」


 この魔眼と、妖霊神からの加護【認識阻害】をどちらも封じる眼鏡を作るために……神結晶を買えるようにお金を貯める。

 そのために色々な新商品を考えているし、その新商品開発で関わった人たちとお仕事をして……。

 お世話になってるシンやジェーンさんに護符袋を作りたい。

 魔物討伐に行くシンに、無事帰ってきてほしいから、護符を作りたい。

 あわよくば護符でお金を稼げないものかと……。


「私、ずいぶん贅沢になってます……」

「ええんと違います?」


「私、この国で生きていきたいです」


 ジェーンさんのように強く生きるのは難しいけれど、ベッドの上で見つめるだけの私は終わりにして、自分の足で立って生きていきたい。

 少なくともこの国はレイヴォル王国よりも体が楽で、ご飯も毎日食べられる。

 ご飯の世話をしてくれるジェーンさんがいるおかげでもあるけど。

 多分、私に加護を与えてくれた闇の聖霊神の力が強いからだろう。

 この国で過ごしていても、不思議なくらい熱も出ないし。

 だから土地、加護、環境としても、私はこの国で生きていくのが合ってるのだと思う。

 だからこの国で、生きていきたい。

 そう伝えると、ジェーンさんは「わかりました」と頷いた。


「コニッシュはんがそう決めてくれたなら、そのご意志は陛下とミゲル様にお伝えしときます。そうしたら正式に協力要請が来ると思いますんで、それを受けるか受けないかはコニッシュはんが改めて決めればええんと違いますか」

「は、はい」

「今日は帰りまひょ。明日改めてケートはんに護符の作り方とか教わるんでっしゃろ?」

「あ、そ、そうですね」


 確かに、ケートさんに「試験に受かったら明日、改めて護符の作り方を教えるので魔力と体調を整えておいてください」って言われた。

 この国に来て体調を崩したことは、今のところないけれど……明日崩さない保証はない。

 しっかり休んで明日に備えておいた方がいいかも。

 シンが討伐に行くのは三日後だものね……!


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