護符作りパート1【前編】
「ふーん、最近忙しそうなのはそういうことなんだね」
「は、はい……」
「そしてすごく疲れ果ててるね」
「は、はい……」
そんな感じでここ一ヶ月は新商品の開発と通常の護符袋作りの他、美術品としての『レアの花染護符効果付き巨大扇子』——名称現在検討中——の試作で忙しい。
借りているこの屋敷は、往来沿いに店舗のような小屋があるためそこで護符袋を売るつもりなのだが、そんな理由でまだ商品が売れるほどの数を確保できていない。
レアの花染以下略、と新商品開発で通常品の刺繍製造が間に合っていないのよね。
お味噌汁を飲みながら、目の前に座って白米をかき込むシンをチラリと見る。
毎日朝の挨拶はしていってくれるけど、今日は朝の訓練がないから一緒に朝食を食べることになった。
誘ってくれたのはシン。
ジェーンさんもニヤっとして三人分のご飯を作ってくれた。
今日もジェーンさんのご飯が美味しいです。
「でもまだ護符袋店は開店できないんだな」
「は、はい」
「俺もコニーの作った護符袋、ほしいなー」
「え、つ、作りますか? どんな効果が……あ、で、でも、私が作ったものは、そんなに強い効果じゃないですよ。それでもよければ……」
「うん、それでもいいよ。実は今度ミゲルさんに頼まれて森の中に出た、ジャンプオオトカゲっていう魔物討伐に行くんだ」
「えっ」
顔を上げる。
魔物の、討伐……!?
「だから、お守り的なやつ。お金は払うよ!」
「え……で、でも、それ、そんな……い、いつ……」
いけない、なんでこんなに動揺しているんだろう。
シンは一ヶ月、毎日鍛錬してる。
きっと私が知らないだけですごく強くなってるのかもしれない。
だってシンは招き人だもの。
でも、でも……!
「三日後」
「みっ!?」
「三日後じゃあ、あまり強力なものは作れまへんなぁ」
「そうなの?」
「刺繍は時間がかかるんどす。コニッシュはんの縫う護符袋は、レイヴォル王国の細かくて糸の色も多く使うものなんどすぇ」
「そうなんだ」
「あ、で、でも、ぬ、縫います……!」
護符袋は、レイヴォル王国の刺繍方式だと効果が高く出やすいらしい。
多分、だけど魔力糸を多く使うから。
「本当? 無理しなくていいよ?」
「む、む、無理ではないですよ……! 作ります」
「ありがとう!」
「っ」
嬉しそうに微笑まれて胸がどきりと跳ねた。
この感覚……セリックがお見舞いに来てくれた時に似てる。
どうして?
シンはセリックとは違うのに……。
「そんなら護符袋に入れる護符も、コニッシュはんが作ってあげたらええんと違います? コニッシュはんの付与魔法能力なら護符も作れますわ、多分。売るもんと違いますし、一枚くらいなら魔法ギルドに登録もいらんでしょ」
「え、わ、私が、ですか? でも、護符そのものは作ったことないですし……」
「物は試しどす。こういうのは気持ちどすぇ」
「そ、そうでしょうか……?」
護符袋は護符の効果を長持ちさせるもの。
確かに護符袋に込める護符効果の付与は、趣味の刺繍を応用すればできる。
でも、護符そのものは違う。
専用の紙に、星砂インクで魔法陣とその効果を持続させる呪文を描く。
一文字も間違えられない。
この国には護符師という専門の職業の人までいるくらい、難しいのだ。
護符専門の紙だって無料じゃないし、星砂インクも高価なもの。
貴族の誓約書で使用する特殊なインクだもの、安いはずがない。
それも買わないといけないし、どう考えても今の私じゃ……。
「ケートはんに頼めばよいんどす。あの人、鑑定士の他に護符師や呪具師もやっとるようですから」
「ええっ……!?」
あ、あの声は女性だけど包帯ぐるぐる巻きでなんか怖い、あの鑑定士さん……!?
「前にコニッシュはんの加護を鑑定してもらいに行った時、魔法ギルドでケートはんの職業一覧を見せてもらいましたけど、かなり優秀な方でしたぇ。さすがはマミーですわ」
「マ、マミーってミイラ? あの人も魔物だったの?」
「マミー種は我が国では魔人のくくりどす」
「「わ、わぁ……」」
そうだったの〜……。
シンもなんか引いてるけど、マミーって、ミイラって、し、死体的な……?
死体が動いてる系の……?
ひ、ひいぇぇぇえ……!
「マミー種はリッチ種の進化前の魔人どす。高い魔力を有した人型の魔人、または人間が死後に魔力の高さから発生します。皮膚が非常に弱くて、特殊な包帯で覆わないと体が崩れてしまうそうどすわ」
「え、人間も死後マミーになったりするんだ?」
「この国にいるマミーはほとんどレイヴォル王国からの流れ者どす。コニッシュはんも死んだらきっとマミーになりますぇ。今のうちに仲良くしとくとええんと違います?」
「ええええええっ!? い、いやですぅ!」
「嫌ならマミーにならないように、マミーにならなくて済む方法とかケートはんに聞いておくとええんと違います?」
「あ、あううう……」
それって結局ケートさんには会わなければならないのね……!
でも死後にマミーになるのは嫌〜〜〜!
なんとなく怖いけど、ケートさんに会いに行って色々教わる……しかないのか。
「それってもしかして俺も……?」
「あ……」
「可能性大どすな!」
「お、俺も行っていい!? マミーにならない方法、俺も聞きたい!」
「行きましょう!」








