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私ができるお仕事模索中【4】


 なんだかそれ、騙すみたい。

 左手の魔眼を思わず抑える。

 騙されてしまう方は、悲しいんじゃないだろうか。


「ほんまに心配ありまへん。女中の中には玉の輿狙いの者も多ございます。なんなら玉の輿に乗るために女中になった者が、八割越えどす」

「ぇ……」


 半数以上どころか!


「かくいうわっちもその一人!」

「えええっ!」


 な、なんと!?

 でもそういえばさっき「独り身」って言ってた!

 そういうことだったの……!?


「だからむしろ女中たちも『男性に魅力的に見えるおまじない』の護符袋は必須アイテムどす。そう、つまりわっちがほしい!」

「すごく私情だったんですか……!?」

「すごく私情どす」


 すごく私情だった……!

 どの国でも玉の輿というワードは大変強い模様……!


「いいどすか? わっちがまずは効果を確認します。わっちが玉の輿で結婚できれば、コニッシュはんの作る護符袋や護符効果付与扇子はバカ売れ間違いなしどす。コニッシュはんは実績と売上がほしい。わっちは玉の輿結婚がしたい。誰が損するんどすか?」

「はっ!」


 た、確かに誰も損はしない……?

 ジェーンさんはお鼻潰れた『パグ種』という小型犬の魔物らしいけれど、この潰れた顔がとてもクシャッとしていて可愛らしいのよね。

 それに、ご飯も美味しいしお掃除もお洗濯もすごく早い。

 まさにできる女。

 ジェーンさんをお嫁さんにする殿方もきっと幸せ。

 うん、間違いない。

 あれ? じゃあほんとに、誰も損しないのでは?


「ええどすか? コニッシュはん。あんさんが【魅了の魔眼】で、そういうものに抵抗があるのはわかります。でも、少なくともわっちは幸せになるために出会いを求め、幸せな結婚をして子孫を残し、穏やかな余生を送るのが目標どす! そのためなら多少のズルもいといまへん」

「そ、そ、そ、そ、そうなんですか……」


 ものすごく絞り出すように返事をする。

 多少の、ズル、なのかな?

 いや、護符袋と私の魔眼では効果のほどなど別物よね。


「ちなみにコニッシュはんのレベル1の魔眼はこの護符袋と同じレベルどすぇ」

「えええええっ!」


 しょ、衝撃の事実ーーーっ!


「っ……!」


 まさか私の魔眼がこの国では護符袋と同レベル程度の扱いだったなんてー!

 私が思っていた以上に効果薄い……!


「……でも……やっぱり……」

「嫌悪感は拭えないって感じですか?」

「は、はい。すみません……」

「別に謝ることじゃありませんよ。ただ、そういうもんを必要としてる人まで、否定せんでください」

「は、はい。それは……はい」


 それはもちろんだ。

 正直私の魔眼がそこまで——おまじないレベルだということに驚いてしまった。

 それじゃあ護符袋に『異性に魅力的に見えるおまじない』の護符がはいったものを、人間の国に持っていったらどうなってしまうのだろう?

 とても大混乱になる未来しか見えない。


「そしてそういうものを今もっとも必要としているのがこのわっち」

「は、はい……それは、なんかもう……はい……」


 十分に……わかりましたので……?


「じゃあさっそく作ってみましょ」

「そ、そうですね」


 護符として効果を預ける紙……ではなく、布に魔法陣を魔力糸(まりょくし)で縫っていく。

『異性に魅力的に見えるおまじない』の魔法陣は、見本をもらっているのでミゲルさんのお屋敷でたくさん練習したから覚えているわ。

 しかし、なんであんなにたくさん依頼されたのか、今ようやく理解できた。

 お屋敷にいた頃はてっきり、皆さん気を遣って私に護符作りの依頼をくれたのだと思っていたけれど……シンプルに出会いのためだったのね。

 普通の護符は懐にしたためておくと、半日で効果が消えてしまう。

 しかし、護符袋に入れると一週間は効果が保てる。

 そう考えるとやっぱり護符袋ってすごいわよね。


「玉の輿……玉の輿……玉の輿……」

「…………」


 ただ、隣で手を合わせてそう祈られるのは結構プレッシャーだなぁ。

 た、玉の輿かぁ。

 これを持つ人が玉の輿に乗れますように、って、祈りながら縫った方がいいのかしら?

 それで効果って変わる?

 でも護符効果を付与するのも一種の魔法だというし、魔法は心で魔力を操作するともいう。

 本格的に魔法を使うとなれば、体の使い方も覚えないとダメ、とレイヴォル王国の王立学園で学んだけれど……私にはあまりにも魔法の才能がなかった。

 魔力はあるし、多少の付与魔法や簡単な身体強化はできたけれど。

 火を出したり、水を出したりといった普通の貴族なら誰でもできるような魔法を、使うことができないと言われたの。

 それは、今思うとレイヴォル王国が光の聖霊神や四大元素の聖霊神に加護を与えられた場所だったから……なのかもしれない。

 まあ、でも、闇の聖霊神に直接加護を与えられたからこの国にでは魔法が使えるのかと言えば——相変わらずそうではなかった。

 私は結局付与魔法や最弱の身体強化程度しか扱えないまま。

 それならせめて、お世話になっている人が幸せになれるよう、想いを込めることくらいできないだろうか。

 ジェーンさんはいつも私を助けてくれる。

 今も新しい提案をしてくれた。

 たとえそれが自分自身の幸せのためだとしても、私のように自分自身の幸せを心から祈れない者からするととてもすごいと思う。

 その熱量、本当にすごい。

 叶えばいいな。

 ジェーンさんの夢。願い。


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