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勇者パーティ、聖女様以外ぜんぶ偽物でした~自分だけが偽物だと思っている遊び人たちの最強パーティ~  作者: 黒華レン


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重なるバフ

巨大な狼との戦闘です

 巨大な狼が、森を震わせるような咆哮を上げた。


 目の前に立ちはだかる黒銀色の巨体は、先ほど倒した鋼牙狼とは比較にならないほど大きい。


 太い前脚が地面を踏みしめるたびに、湿った土が沈み込む。


 しかも、その牙は普通の鋼牙狼よりもずっと長く、まるで二本の大剣が口から突き出しているようだった。


「はぁー……これ、本当に狼なんですか?」


 俺は思わず呟き剣を構える。


「狼には違いないと思うけど、さっきのとは明らかに別物ね」


 サキが剣を構え直す。


 その隣では、ガイが新しい大斧を握りしめていた。


「なかなかの大物だな。こいつなら新しい斧の威力を試せそうだ」


「いやいや、ガイさん!そんな悠長なことを言ってる場合じゃないですよ!」


 俺は巨大狼を見上げた。


 あの口に噛みつかれたら、俺なんか一口で食べられてしまいそうだ。


「ソフィアさん!あいつの正体、分かりませんか!?」


「ちょ、ちょっと待ってください!簡易鑑定板では測定できませんでしたけど、特徴から調べてみます!」


 ソフィアさんは慌てて鞄から小さな図鑑を取り出した。


 さすが鑑定士。


 こんなときでも調べる準備は万全らしい。


 ……いや、できれば早くお願いします!


 巨大狼がこちらを睨みつけ、低く唸った。


「グルルルル……」


 その瞬間、サキが前へ出た。


「ユウ!まずは私が様子を見るわ!援護をお願い!」


「分かりました!」


 サキは地面を蹴り、巨大狼へ駆け出した。


 新しく購入した片手剣が、木漏れ日を受けて輝く。


「はああっ!」


 鋭い一撃が狼の前脚を狙った。


 しかし。


 ガキィン!


「えっ!?」


 金属同士を打ち合わせたような音が響いた。


 サキの剣は、狼の黒銀色の毛に弾かれてしまったのだ。


「な、何よこの毛!硬すぎるでしょ!」


 サキはすぐさま後ろに跳び距離を取った。


 狼が前脚を振り上げる。


「サキさん!危ない!」


「分かってる!」


 サキは横へ跳び、巨大な爪をかわした。


 直後、狼の前脚が地面に叩きつけられる。


 ドゴォン!


 土が飛び散り、地面に大きな爪痕が残った。


 ……うわあ。


 あんなものをまともに食らったら、ひとたまりもないぞ。


「俺が行く!」


 今度はガイが飛び出した。


 大斧を両手で握り、巨大狼の側面へ回り込む。


「ふんっ!」


 重い一撃が、狼の後脚に叩き込まれた。


 ガァン!


 しかし、こちらも毛皮に阻まれた。


「むっ!こいつは硬いな!」


 ガイは大斧を引き戻し、もう一度振りかぶった。


 そのときだった。


「ウオオオオオオオッ!!」


 突然、ガイが凄まじい咆哮を上げた。


 ……えっ!?


 俺は思わず振り返った。


 ガイの体から、赤い光が立ち上っている。


 さらに、その光が俺とサキの体にも広がった。


「な、なんですか、この光!?」


 体の奥から力が湧き上がってくる。


 剣を握る手にも、いつも以上の力がこもった。


「……おっ!?」


 ガイが自分の腕を見下ろした。


「気合いを入れたんだ!うお、なんだか力が湧いてきたー!」


 ……ガイさん、今の咆哮、すごい効果があったみたいですよ!


 当の本人も少し驚いているようだったが、すぐに大斧を構え直した。


「よし!もう一撃だ!」


 ガイが踏み込み、斧を振り下ろす。


 ガギィン!


 今度は巨大狼の毛皮に、わずかな傷が入った。


「よし!効くぞ!」


 狼が怒りの咆哮を上げる。


「グオオオッ!」


 その巨体が、ガイへ向かって突進した。


「ガイさん!」


 俺は慌てて駆け出した。


 新しい剣を抜き、狼の横腹へ斬りかかる。


「こっちだ!」


 ガキン!


 硬い!


 剣は毛皮をわずかに切り裂いたものの、深い傷にはならなかった。


 だが、狼の注意を引くことには成功したらしい。


 巨大な顔がこちらを向いた。


 ……あ。


 これは、ちょっとまずいかもしれない。


「グルアアアッ!」


 大きな口が開き、鋭い牙が迫ってきた。


「うわああっ!」


 俺は慌てて後ろへ跳んだ。


 牙が目の前を通り過ぎる。


 あと少し遅れていたら、頭から噛みつかれていたところだ。


 危なかった!


「ユウさん!大丈夫ですか!?」


 アステリアの声が聞こえた。


「はい!なんとか!」


 俺は剣を構え直した。


 その間にも、ソフィアさんは図鑑をめくり続けていた。


「あっ!ありました!」


「本当ですか!?」


「はい!この魔物は、おそらく《黒鋼牙狼《こっこうがろう》》です!」


「黒鋼牙狼!?」


「鋼牙狼の上位種です!とても珍しくて、普通の鋼牙狼の群れを従えていることもあるんです!」


 なるほど。


 ということは、さっき倒した三体はこいつの仲間だったのかもしれない。


 ……群れをやられたんだ怒るよなー


「弱点はありますか!?」


「毛皮が非常に硬いので、普通の斬撃は通りにくいです!ただし、強い魔力を込めた攻撃なら突破できるはずです!」


「強い魔力ですか……!」


 俺は剣を見下ろした。


 新しい剣は魔力の通りがいいと聞いている。


 だったら、思い切り魔力を込めればいいのかもしれない。


 ……よし!


「サキさん!ガイさん!もう一度攻めましょう!」


「了解!」


「任せろ!」


 三人で巨大狼を囲むように動いた。


 まずはサキが正面から斬りかかる。


「はあっ!」


 淡い炎をまとった剣が、狼の前脚を狙う。


 狼は前脚を引き、攻撃をかわした。


 その隙にガイが側面へ回り込む。


「今度こそ!」


 大斧が振り下ろされた。


 ガギィン!


 再び毛皮に阻まれたものの、先ほどより深い傷が入った。


「いいぞ!もう少しだ!」


 俺も剣を構えた。


 しかし、そのとき。


「ら〜らら〜♪」


 突然、サキが歌い始めた。


 ……えっ?


 しかも、妙に明るい歌だ。


 えー、そんな敵の前で!?


 サキは剣を構えたまま、楽しそうな旋律を歌い続けている。


 ……いや、顔は全然楽しそうじゃないな。


 むしろ、ものすごく焦っているように見える。


 サキの頬が引きつり、目が泳いでいた。


 ところが、その歌声に合わせるように、俺たちの周囲に青い光が広がった。


「……ん?」


 体が軽い。


 さっきよりも足が動かしやすくなった気がする。


「ユ、ユウ!今ならいけるわ!」


 歌い終わったサキが、すぐさま剣を構え直した。


「はい!」


 俺は地面を蹴った。


 ……速い!


 自分でも驚くほど体が軽い。


 巨大狼がこちらを向くより早く、俺はその懐へ飛び込んでいた。


「はあっ!」


 剣を振り抜く。


 ザシュッ!


 今度は確かな手応えがあった。


 黒銀色の毛皮が裂け、狼が苦しそうに吠える。


「グアアッ!」


「すごい!効きました!」


 俺は嬉しくなって、もう一度剣を構えた。


 だが、巨大狼も黙ってはいなかった。


 その口元に、黒い魔力が集まり始める。


「……あれ?まずい?」


 俺は思わず足を止めた。


 狼の牙の間に、黒い光が渦巻いている。


「ユウさん!離れてください!」


 ソフィアさんが叫んだ。


「黒鋼牙狼は、口から魔力の衝撃波を放つことがあるんです!」


「えええっ!?」


 そんなこと、もっと早く教えてくださいよ!


 巨大狼が大きく息を吸い込んだ。


「グオオオオオッ!」


 次の瞬間、黒い衝撃波が放たれた。


「うわあっ!」


 俺は慌てて横へ跳んだ。


 衝撃波は背後の木々をなぎ倒し、地面を大きく削り取った。


 バキバキバキッ!


 太い木が何本も倒れる。


 ……ちょっと待って。


 あれ、当たったら絶対に駄目なやつだ!


「皆さん!一度下がってください!」


 アステリアが杖を掲げた。


「––––聖光障壁《セイクリッドバリア》!」


 俺たちの前に、淡い金色の壁が現れる。


 巨大狼が再び衝撃波を放った。


 ドォン!


 黒い魔力が障壁にぶつかり、激しい光が弾けた。


「くっ……!」


 アステリアが杖を握りしめる。


 障壁にはひびのような光が走ったものの、なんとか攻撃を防ぎきった。


「アステリアさん!」


「大丈夫です!でも、何度も防げるほど強度はありません!」


 それはまずい。


 このまま攻撃を受け続けたら、いずれ押し切られてしまう。


「どうにかして、一気に倒さないと……!」


 俺は剣を握り直した。


 すると、ガイが前へ出た。


「よし!俺が隙を作る!」


「ガイさん!?」


「その間に、ユウとサキで攻撃してくれ!」


「分かりました!」


 ガイは大斧を構え、巨大狼へ向かって駆け出した。


 その瞬間だった。


「フンフフ〜ン♪フンフフ〜ン♪」


 ……えっ!?


 ガイが突然、妙な鼻歌を歌い始めた。


 しかも、さっきのサキの歌とは違って、絶望的に音程が外れている。


 俺は思わず顔をしかめた。


 ……うわあ。


 相変わらず、すごい歌声だなあ。


 だが、その鼻歌が響いた途端、ガイの体から金色の光が溢れ出した。


 耳のいい巨大狼は苦しんでいる!


 さらに、その光が俺たち全員を包み込む。


「……おっ!?おおー!」


 俺は自分の体を見下ろした。


 さっきよりも、さらに力が湧いてくる。


 腕が軽い。


 足も速い。


 それに、体の奥から魔力がどんどん溢れてくるような感覚まであった。


「こ、これは……!」


 ガイも驚いたように自分の手を見つめた。


 そして、勢いよく大斧を振り上げた。


「うおおおおっ!」


 巨大狼が前脚を振り下ろす。


 ガイはその一撃を横へかわし、斧を叩き込んだ。


 ガギィィン!


 今度は、黒銀色の毛皮が大きく裂けた。


「グアアアッ!」


 巨大狼が苦しそうに吠える。


「今だ!ユウ!サキ!」


「はい!」


「任せて!」


 俺とサキが同時に駆け出した。


 そのとき、サキの剣が赤い光を帯びた。


 昨日購入した炎属性の剣だ。


 しかし、いつもとは明らかに様子が違う。


 刀身を包む炎が、どんどん大きくなっていく。


「……えっ?」


 サキが驚いた顔をした。


「ちょっと、何これ!?」


 炎は剣全体を包み込み、まるで巨大な火柱のように燃え上がった。


 ……す、すごい!


 俺も剣に魔力を込めた。


 すると、こちらの刀身にも青白い光が集まり始めた。


 いつもなら、こんなに強い魔力を込められないはずなのに。


 ……あれ?


 なんだか、どんどん光が大きくなっていませんか?


「ユウ!合わせるわよ!」


「は、はい!」


 サキが炎をまとった剣を振り上げた。


 俺も青白く輝く剣を構える。


 巨大狼がこちらへ向き直り、再び黒い魔力を口元へ集め始めた。


「グオオオオッ!」


 ……まずい!


 あの衝撃波を撃たれる前に、攻撃しないと!


「いきます!」


「ええ!」


 俺たちは同時に剣を振り抜いた。


「はああああっ!」


「やああああっ!」


 その瞬間。


 青白い光と真紅の炎が、二本の剣から一気に放たれた。


 ……えっ?


 ちょっと待って。


 なに、この威力!?


 青白い斬撃と炎の斬撃が空中で重なり、巨大な光の奔流へと変わる。


 その威力は、俺たちが想像していたものを遥かに超えていた。


 ドゴオオオオオオオオッ!!


 凄まじい轟音が森に響き渡った。


 巨大狼が放とうとしていた黒い衝撃波は、光の奔流に飲み込まれて消滅した。


 さらに、俺たちの攻撃はそのまま狼へ直撃する。


「グアアアアアッ!」


 黒鋼牙狼の巨体が吹き飛んだ。


 いや、吹き飛んだなんてものじゃない。


 まるで小石でも弾いたかのように、巨大な狼が宙を舞ったのだ。


 そのまま背後、森の奥へ木々をなぎ倒し吹っ飛んでいった。


 ドゴン!


 バキバキバキッ!


 ドォォォン!


 最後に、とんでもなく大きな音が響いた。


 そして、森に静寂が戻った。


「…………」


 俺は剣を振り抜いた姿勢のまま、固まっていた。


 隣のサキも、口を開けたまま動かない。


「……ユウ」


「……はい」


「今の、何?」


「……俺にも分かりません」


 俺たちは顔を見合わせた。


 ……いやいやいや!


 ちょっと待ってくださいよ!


 なんですか、今の威力は!?


 あんな巨大な狼が、あんなに遠くまで吹き飛ぶなんて!


「……すごいな」


 ガイが呆然と呟いた。


「俺の斧なんか、比べものにならない威力だったぞ」


「わ、私も驚きました……」


 アステリアが目を丸くしている。


 ソフィアさんに至っては、口をぽかんと開けたまま固まっていた。


「……あの」


 しばらくして、ソフィアさんが小さな声を出した。


「皆さん……今、どんな強化魔法を使ったんですか?」


「えっ?」


 俺は首を傾げた。


「強化魔法……ですか?」


「はい!さっきから皆さんの魔力が、何度も強くなっていたように見えたので……!」


 ……うーん。


 そういえば、ガイさんが咆哮したり、サキさんが歌ったり、ガイさんが鼻歌を歌ったりしていたなあ。


 そのたびに、なんだか体が軽くなったり、力が湧いてきたりしていた。


「……たぶん、みんなの強化効果がいろいろ重なったんじゃないでしょうか?」


「いろいろって何よ!」


 サキが思わず突っ込んだ。


「いや、俺にも詳しくは……!」


 俺が困っていると、ソフィアさんは真剣な表情で頷いた。


「なるほど……複数の強化効果が重なっていたんですね!」


「そういうことだと思います!」


「すごいです!あんな威力の攻撃、普通はなかなか見られませんよ!」


 ソフィアさんは興奮した様子で話し続けた。


「攻撃力だけじゃなくて、魔力の出力まで上がっていたんだと思います!それに、ユウさんとサキさんの攻撃が同時に重なったことで、威力がさらに増した可能性もあります!」


「へえ……!」


 俺は自分の剣を見下ろした。


 ……なるほど。


 そういうことだったのか。


 いやあ、すごいなあ。


 ……でも。


 今の攻撃、もう一回やれと言われても、やれる気がしない。


「と、とにかく、倒せたならよかったですね!」


 俺は笑ってごまかした。


「そうね……」


 サキも苦笑いしていた。


 すると、ガイが森の奥を指さした。


「ところで、あいつはどうなったんだ?」


「……あっ」


 俺たちは一斉に振り返った。


 巨大狼が吹き飛んでいった方向には、倒れた木々が一直線に続いていた。


 まるで、森の中に新しい道ができたみたいだ。


「……確認しに行きましょうか」


「そうね」


 俺たちは慎重に歩き始めた。


 途中、折れた木や抉れた地面を見ながら、俺は何度も自分の剣を確認した。


 ……本当に、これでやったんだよなあ。


 金貨九枚の剣。


 こんなにすごいものだったのか。


 いや、たぶん違うな。


 しばらく歩くと、ようやく巨大狼を発見した。


 黒鋼牙狼は、大きな岩に背中を預けるように倒れていた。


 すでに動く様子はない。


「……倒せたみたいですね」


 俺はほっと息を吐いた。


「よかったわ……」


 サキも胸を撫で下ろした。


 しかし、ソフィアさんだけは別の意味で興奮していた。


「す、すごいです!黒鋼牙狼なんて、滅多に討伐できない魔物なんですよ!」


「そうなんですか!?」


「はい!しかも、毛皮も牙も非常に高価なんです!」


 ……高価。


 俺はその言葉に反応した。


「ちなみに、どのくらいですか?」


「やはりレアな魔物なので、状態にもよりますけど、普通の鋼牙狼とは比べものにならない値段になります!」


「おおおっ!」


 思わず声が出た。


 ……いやあ、今日はいい日だなあ!


 新しい装備の試し斬りに来ただけなのに、こんな珍しい魔物まで倒せるなんて!


「それじゃあ、さっそく素材を回収しましょう!」


「はい!」


 ソフィアさんが嬉しそうに頷いた。


 俺たちは巨大狼の素材を慎重に回収することにした。


 まずは魔石。


 黒鋼牙狼の魔石は、普通の鋼牙狼のものよりもずっと大きかった。


 しかも、色が濃い紫色をしている。


「わあ……!」


 ソフィアさんが目を輝かせた。


「こんな大きな魔石、初めて見ました!」


「へえ!珍しいんですね!」


「はい!かなり高品質だと思います!」


 続いて、牙。


 巨大な牙は二本とも無事だった。


 そして、黒銀色の毛皮。


 こちらは攻撃の影響で傷んでいる部分もあったが、使える部分は十分に残っていた。


「よし!これで回収完了ですね!」


 俺は素材を収納鞄へしまった。


 すると、ソフィアさんがふと首を傾げた。


「……あれ?」


「どうしました?」


「この魔石……少し変なんです」


「変?」


 ソフィアさんは紫色の魔石を取り出した。


 そして、じっと見つめる。


「普通の黒鋼牙狼の魔石より、色も濃いし魔力の密度が高いような……」


「へえ……」


「もしかしたら、かなり長い年月を生きた個体だったのかもしれません」


「なるほど!」


 俺は頷いた。


 つまり、ものすごく強い狼だったということだろう。


 ……そんな相手によく勝てたなあ。


「王都に戻ったら、ギルドで詳しく調べてもらいましょう!」


「はい!」


 俺たちは素材を収納し、帰路についた。


 森を抜ける頃には、太陽が少し傾き始めていた。


「いやあ、今日は大変でしたね!」


 俺が言うと、サキが苦笑いした。


「本当よ。まさか、あんな大物が出てくるなんて思わなかったわ」


「でも、新しい装備は十分に役立ったな」


 ガイが満足そうに大斧を眺めた。


「ええ。皆さんが無事で、本当によかったです」


 アステリアが微笑んだ。


 ソフィアさんは、さっきから嬉しそうに図鑑をめくっている。


「黒鋼牙狼の素材……どのくらいの価値になるんでしょうね!」


「楽しみですね!」


 俺も笑った。


 昨日は金貨百二十枚を手に入れたばかりだ。


 そして今日は、また珍しい素材を手に入れてしまった。


 ……もしかして。


 俺たち、ものすごく稼げる冒険者になってきたんじゃないだろうか?


 そんなことを考えながら、俺は王都へ向かって歩き続けた。


 もちろん、このときの俺はまだ知らなかった。


 俺たちが倒した黒鋼牙狼が、ギルドでちょっとした騒ぎになることを。


 そして、その討伐報告が、思いがけない人物の耳に入ることを――

いつも読んで頂きありがとうございます!


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よろしくお願い致します。

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