第百三十三話 見えない攻防
彼女はこちらの横に着け、他の兵士たちは距離を取りつつ円を描くように並走した。戦うような感じはまったくなく、昨日のあれは何だったのかと思うほど和やかである。
兵士たちの顔を見ると皆こちらに笑顔を向け敬礼した。違和感の正体は彼女が魔女の血を引いていて、家の者と言っていたから親類である兵士たちも、恐らく魔女の血を引いているのだろう。
こうして近くで感じると雰囲気が皆似ていたこともあり、一人納得していると何故かエイミーが一人一人紹介し始めた。
年代的には二十代から四十代までと幅広く、エイミーの雑な紹介が終わるとこちらに来てくれる。彼らは前に座るイリスにも笑顔で会釈をしてくれ、イリスもはにかみながら会釈をする。
エイミーの口振りだと何かあるのではないかな、と身構えていたが何事も無くてほっとした。次々と人が来て名乗った後で握手をし元の配置の戻っていく。
自分は記憶力が良い方ではないので、あとで思い出しながらメモを使用かと考えていると
「一応顔を知っておいてくれるだけでいいわよ。いきなり覚えろと言われても困るでしょうし」
十五人の親類の紹介が終わったところでエイミーはそういう。どういう意図があるのかさっぱりわからない。やがてマイアの町を通過しそのままヤクテへ向かうが、昨日のように泊まらないのかとは聞いてこなかった。
その点を隣で走るエイミーに聞くも
「必要がないからよ。もう用はあらかた済んだし」
とあっさりした返答をする。二人でこっそりあって手合わせするだけなら、別に昼間でも良かったのになぁと思いながら道を走り続けた。
ヤクテまであと少しという看板を通過して森を抜け、夕方に差し掛かったところでようやくヤクテ前の草原に出る。
「コーイチ!」
ヤクテを通過して次の森へ入ろうとしたところで、久し振りに聞く声がして視線をその方へ向けた。
「リックさん! 御久し振りです!」
「おう! 大活躍だったみたいだなコーイチ! ……エイミー、君は遠くから行動を監視するだけのはずだった気がするが?」
足を止めてリックさんが来るのを待ち、来たところで挨拶をして握手を交わしたが、エイミーを見て驚き彼女に訊ねる。
こちらとしては監視という言葉がきになって聞こうとするも、手を広げたエイミーが前に出て遮られた。今は聞かない方が良いということなのだろうかと思い、黙ることにする。
「いえ、昨夜少し異変を感じ、姫様に何かあっては不味いと考えて接触をしてしまったので、ならばと皆で御傍での護衛をと」
「君が身内以外の人の近くにいるのが珍しくて、つい意地悪な聞き方をしてしまった。役目を果たしてくれてありがとう、ここからは俺が護衛を変わるよ」
リックさんの申し出に、ではお願いしますとだけ答えて馬を旋回させ、去ろうと横を通った瞬間
「また必ず近いうちにお会いしましょう」
そう小さな声で言ってから走り去っていった。面倒なことに巻き込まれないと良いなぁと一瞬思ったものの、振り返れば面倒なことにしか巻き込まれてないなと気付き、いつか楽しいことにも巻き込まれたいなと願う。
リックさんが来てくれたことで、ここまで静かだったイリスも元気になってくる。ヴァルドバとパックが一緒とは言え急いでいる帰り道なので、あまり楽しい旅ではなかった。
急ぎ過ぎているかなとも思ったけど、これまでのことを考えると余計なことが起こる前に、家に帰してあげたいのでこれが正解だと思い込むことにする。
知らない道を行くのではなく来た道を戻るので、迷うことなく順調に進んでいきライノを過ぎて、夜にはワンダー近くまで到達した。
町に行っても門が閉まっているだろうと考え、少し開けた場所を見つけてテントを張り、今日はそこで野宿にしようと皆に伝える。
直ぐに場所は見つかったので止まり、荷物を下ろして野宿の準備を始めた。イリスには一緒に焚火の火を起こしてもらう。
冒険者ランク:シルバー級?
職業:二刀流剣士(初級)?
称号:マナの木の騎士
魔法:生命力変換Lv.5
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)Lv.5
魂斬り (ソウルスラッシュ)Lv.5
仲間:エイレア(エレクトラ王妃の妹のエルフ族)
ヴァルドバ(ワーウルフ)
士元勇太(元黒騎士)
騎乗馬:サジー(白毛の小さめの馬)
所持品
メイン武器:ソードブレイカー・右
サブ武器:ソードブレイカー・左
魔神の三又槍
騎乗時の武器:鉄の棒
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
エルフのマント(裏面に魔法陣が隙間なく掛かれ、表はど真ん中にウロボロスのマークが入ったマント)
アイテム:エリナから貰ったリュック
(非常食各種、水、身分証、支援金五十ゴールド、地図、治療セット箱)
キャンプ用品一式
水晶の荒粒
追憶のペンダント(エレクトラ王妃から借りた物。マナの木の持ち物?)
砥石一式
鉄くずの入った袋
メメリカ草(痺れ消し草の粉末一袋)
皆とおそろいの裁縫セット(緑)
所持金:十三ゴールド




