第百十八話 絶望の闇に灯る光
地響きどころか地割れが起きそうな雄叫びをラヴァルは上げた。あまりの迫力に勝手に足が後ろへ下がっていまう。第六感というか野生の勘が告げていた。このまま戦えば間違いなく殺されるだろうと。
たった一撃放った技でエルフの里を焼き払い、その気は衰えるどころか盛況さを増していた。あれとどうやって戦えば良いのかまったく見当もつかない。
向かい合っているだけでこちらの生きる気力を奪われる、絶望が体を支配して動けないでいる。いじめっ子に殺されかけたような時のような、卑怯な騙し討ちではない、ヒエラルキー構造を堂々と見せつけられているような気分だった。
心の状況を反映するように、視界が閉ざされ何も聞こえなくなりやがて五感すべてを失う。
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―頼んだぞ、コーイチ。
―姫様のこと、頼んだぞ!
―コーイチ、がんばれ!
―コーイチ、諦めないで!
―娘とわが友を頼みます。私はあなたとあの子を信じて待っています。
リックさんやウォルフガングさん、ヴァルドバにエイレア、そして王妃様の声が聞こえてくる。エルフの里へ来るまでの出来事以外にも、これまでの旅で出会った人々の顔が次々浮かんできて、情けない俺を励ましてくれる。
一つ一つが凍えた体を温めていき、闇を少しずつ照らしていく。俺はまだ終われない、まだ何も終わっていないし終わらせられていないんだ。
立ち上がれコーイチ! このままじゃ何のために転生して来たか分からないじゃないか! 自らを鼓舞し体に思い切り力を入れた。
ー頑張って! 負けないで! 勝っておうちに一緒に帰ろう!
イリスの励ます声が聞こえると五感が戻り、目を開けると既にラヴァルの爪が迫っていた。切り払おうとした瞬間
―我を呼ぶが良い。一日だけお前の力になってやろう。
初めて聞く声に驚いたが、一日だけという言葉を聞きあの剣しかないと思い出し
「神の使いの剣よ、来い!」
左手を前に着き出しそう叫ぶ。あと少しで爪に引き裂かれそうだったものの、あの漆黒の剣が現れ爪だけでなくラヴァルをも吹き飛ばしてくれる。
「……!? な、何故お前がその剣を持っている!?」
「参ったな……おじさんは小さな子供の励ましに一番弱いんだ」
「何を言ってる!?」
戸惑うラヴァルを無視し、浮いていた神の使いの剣を左手に握り、二振りの剣に全力で気を注ぎ込んでみた。左右の剣は徐々に剣身に光を灯していき、最終的に二振りとも光に覆われ気が注ぎ込まれたのを確認する。
ほっと一息吐きながらマナの木を見て、待ってろよイリスと念じてからラヴァルを見た。
「死んでもお前には負けられない、イリスと一緒に家に帰ると言ってるんだ……喰らえ! 魂斬り!」
そう宣言しラヴァルへ向け、光の刃が交差するように左右の袈裟斬りを放つ。
「黒炎砲!」
こちらの技を掻き消すべく黒い炎を吐き出してくるが、魂斬りはそれを掻き消しながら腹へ向けて飛んで行き直撃する。
「グォオオオオオ!」
巨大な腹に十字の焦げた跡が付き前屈みになって倒れた。これはチャンスだと思い突っ込もうとした瞬間、神の使いの剣が強引に手から離れ後ろへ回る。
「な、なに!?」
ガン! という音がして直ぐ後で聞き覚えのある声が聞こえた。振り返るとラオックがあの体で爪を立て、切り裂き攻撃を仕掛けて来ていて驚く。あと少しで背中を引っ掻かれていたが、神の使いの剣が防いでくれていたのだ。
―クロウの魔法とは言え万全ではないということだ。覚えておくと良い転生者よ。
神の使いの剣の声が聞こえ、神も完璧では無いんだなと思いつつお礼を言う。剣はラオックを剣腹で叩いて吹き飛ばした後で、礼は要らないから今は目の前の神に集中せよと返してくる。
「ぐ、ぐぅっ……ま、まさかあの忌々しいクロウの使徒の剣まで持っていた上に、事ここに至るまで隠していたとはな……やるではないかコーイチ……それでこそだ!」
ラヴァルを見ると立ち上がってはいたものの、腹を抱えその奥には傷跡が残っており、間違いなくダメージを与えられていて安心した。
冒険者ランク:シルバー級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換Lv.2
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)Lv.2
魂斬り (ソウルスラッシュ)Lv.2
仲間:エイレア(エレクトラ王妃の妹のエルフ族)
ヴァルドバ(ワーウルフ)
騎乗馬:サジー(白毛の小さめの馬)
所持品
メイン武器:ソードブレイカー・右
サブ武器:ソードブレイカー・左
クリスタルソード(王妃がエルフの里から持ち出した秘剣。追憶のペンダントが無ければ抜けない。鞘のベルトを肩から斜め掛けし背中に背負う)
神の使いの剣
騎乗時の武器:鉄の棒
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
エルフのマント(裏面に魔法陣が隙間なく掛かれ、表はど真ん中にウロボロスのマークが入ったマント)
アイテム:エリナから貰ったリュック
(非常食各種、水、身分証、支援金五十ゴールド、地図、治療セット箱)
キャンプ用品一式
水晶の荒粒
追憶のペンダント(エレクトラ王妃から借りた物。マナの木の持ち物?)
砥石一式
鉄くずの入った袋
メメリカ草(痺れ消し草の粉末一袋)
皆とおそろいの裁縫セット(緑)
所持金:十三ゴールド




