第百十七話 理想郷に訪れる現実
「馬鹿者! 今近寄るでない! 下がれ!」
ラヴァルの姿を呆然としながら眺めていると、後ろで知らない声とアリエルの声がし、振り向くとエルフの兵士たちが大勢駆け付けていた。
タイミングが悪いというか今までよく来なかったなと思いつつ、ラヴァルから目を離すわけにはいかないので、エルフたちはアリエルに任せることにする。
「……ああそうだった。そう言えばまだエルフどもは私のことを知らないんだったな。宜しい、ならば教えてやろうではないか」
「何をする気だ?」
「余興だよ。お前との戦いに花を添える為のな」
両手を広げ空を仰いでいたラヴァルはその両手を上に向けた。しばらくすると空にラヴァルの姿が映し出される。
ー聞くが良いエルフの民よ。我は最長老、アイクモ・アインシュタット也! マナの木と家の利権を守る為、孫の無能力をなかったことにする為、魔神ラヴァルに魂を売った結果がこの姿だ!
楽しそうに話しているが初めて聞く話に驚いた。たしかにアライアスはこれまで魔法を使ったことが無かったが、まさかエイレアと同じ状態だとは知らず驚いている。
―そしてこれもお前たちに隠していたことだが、エルフとは本来魔法に長けた者にあらず! マナの木に寄ることによって魔法が使えるようになっただけだ! 魔法の使えないエルフはマナの木の巫女として、マナと交信し木の状況を知る選ばれし者だったのだ!
エイレアやエレクトラ王妃、それにアライアスは本来であれば選ばれたものとして、マナの木と交信し治療したりしていたかもしれないのか。長い年月の中で巫女の存在を忘れ魔法至上主義となり、魔法が使えないのは異常と考え地獄の研究へと進んでしまった。
マナの木がエルフ族との交流を絶ったのではなく、彼らがただ享受する者となり交流を先に絶ったと知り、エルフどうしようもないなと呆れる。
自分達から交流を絶ったことを顧みず、部外者のイリスを連れてきてマナの木の機嫌を直させよう、というのも救いようが無い。
―本来であればマナの木と交信すれば、マナの木は答えてくれたはずである。それを放棄してエルフと人間族の間に生まれた子に頼るなど卑しい行いだ! エルフ族はいずれその卑しさ故に滅びると言われたが安心するが良い……。
ラヴァルの体の周りに黒い炎が現れ揺らめき始める。何かヤバいことが始まる気がしたが、フルパワー魂斬りを撃った反動か気が送れなくなっており、ただ見ていることしか出来なかった。
―私の真の姿をもってお前たちエルフは終焉を迎える!
黒い炎に包まれラヴァルの姿すら見えなくなり、徐々に炎は膨れ上がって三メートルくらいの大きさになると炎が消え、首が長く胴の太い黒竜が現れる。
こちらが驚き呆然としているのを見下ろしニヤリとした後で口を開く。口の中に炎が溜まり垂れるほどになったところで
―喰らえ! 黒炎砲!
首を前に倒し口の中にあった炎が前へ吐き出され、ビームのような状態になってエルフの里に向かう。直撃した家はあっという間に消え、首を振りながら里の建物を消し飛ばしていった。
それまで理想郷のような穏やかな状態だったエルフの里は、火の手が上がり阿鼻叫喚の地獄絵図と化していく。このままでは里どころか森にも燃え移ってしまう。
どうすれば良いかと考えていたところ
「コーイチ! 火のことは私に任せてラヴァルを頼む!」
後ろに控えていたアリエルが叫んだので視線を向けると、掌を高く掲げて振り下ろすと同時に滝のような雨が降り注ぎ、里に燃え広がった火を消し始める。
「賢者も一応役に立ったわけだ。さてコーイチ、これでこの体の悔いも無くなったことだし、全力での勝負を再開しようではないか。久方振りに生きたいと私の心が叫んでいる。もっとだ、もっとそれを味わわせてくれ!」
冒険者ランク:シルバー級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換Lv.2
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)Lv.2
魂斬り (ソウルスラッシュ)Lv.2
仲間:エイレア(エレクトラ王妃の妹のエルフ族)
ヴァルドバ(ワーウルフ)
騎乗馬:サジー(白毛の小さめの馬)
所持品
メイン武器:ソードブレイカー・右
サブ武器:ソードブレイカー・左
クリスタルソード(王妃がエルフの里から持ち出した秘剣。追憶のペンダントが無ければ抜けない。鞘のベルトを肩から斜め掛けし背中に背負う)
神の使いの剣
騎乗時の武器:鉄の棒
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
エルフのマント(裏面に魔法陣が隙間なく掛かれ、表はど真ん中にウロボロスのマークが入ったマント)
アイテム:エリナから貰ったリュック
(非常食各種、水、身分証、支援金五十ゴールド、地図、治療セット箱)
キャンプ用品一式
水晶の荒粒
追憶のペンダント(エレクトラ王妃から借りた物。マナの木の持ち物?)
砥石一式
鉄くずの入った袋
メメリカ草(痺れ消し草の粉末一袋)
皆とおそろいの裁縫セット(緑)
所持金:十三ゴールド




