番外編 #1コンビニの中と外
〜side 山代大河〜
「えぇいクソッ!ここもやられてんのか!どこならあるんだよ!」
「ねぇ大河!今日はもう止めにして家に戻ろう!真夜中に外をうろつくのは危ないよ!」
「そうは行くか!確かに夜外に出歩くのは危ないが、家に残っている食い物も昨日で無くなったんだ!このまま飢えで死ぬのを待つより、少しでも元気なうちに歩き回れるうちに探した方がいいだろう!」
「そうだけどさぁ……
一体なんで俺達がこんな目に合わなきゃいけないんだ!
三週間前まではいつも通りの日時だった。
なのに気付けばどこへ行ってもゾンビみたいな連中がウヨウヨしていやがる。
ご丁寧に映画に出てくるようなゾンビ同様に生きた人間を襲い、そいつらに傷を少しでもつけられたら連中と同じようなゾンビになっちまう。
当然話し合いは出来ないし、近くで俺達を見たら全力で走って襲って来るもんだから常に周りに気を配っていなくちゃならねぇ。
こういう時はなるべく少人数で行動するより大人数で行動する方が生存率が高くなるんだろうが、生憎ながら家族も友達もみんな連絡がつかなくなって、俺に残っているのはたまたまデートで一緒にいたからなんとか守る事の出来た恋人の美愛だけ。
こんなイカれた世界、夢であって欲しいが現実に起こっている出来事な以上何があっても美愛だけは守り抜かなきゃならない。
それなのにどうすりゃいいんだよ……
家にあった食料は全部食い尽くしてしまって、どっかの店から調達して補充しようにも既に他の奴が荒らした後でどこの店にも水1つ残っちゃいねぇ。
このままじゃ本当に飢え死にするのを待つだけになっちまう。
今のこのご時世、それも日本でだ。
ふざけているとしか言いようがねぇよ。
クソっ!
「どこなら食い物がある?考えろ、考えろ……」
「大河……」
「……駄目だ。思いつかねぇ。なぁ、美愛?」
「何?大河?」
「お前の言う通り、あいつらの活動が盛んになる真夜中に行動するのは危険だ。でも、最後にもう少し先にあるコンビニだけ探してもいいか?」
「そこを探せば、今日はもう帰る?」
「あぁ」
「絶対?」
「絶対だ」
「何の成果が得られなくても?」
「約束する」
「……うん。ならいいよ」
「ありがとう」
近隣のスーパーやコンビニが軒並み荒らされている以上、今から行こうとしているコンビニも荒らされている確率は非常に高い。
でも、だからといって確認もせずに諦めて帰るなんて出来るわけがない。
今日は物があっても、明日にはもう誰かに持っていかれているなんて今の日本では当たり前の事だ。
一々誰かを気にして物を得る事に躊躇いを持っていちゃいずれ死に行くのは目に見えている。
だから、頼むから何か1つでいい。
ほんの少しの食い物でいいから残っていてくれよ……!
「着いたな」
目的のコンビニまで辿り着いた。
思いの外ゾンビが近くをうろついていなかったお陰でスムーズにここまで来る事が出来た。
後は中を探すだけ……
「ねぇやっぱり止めとこうよ!」
急に何を言いだすんだ!
ここに来るまでは何も言わず黙って着いてきていたのに!
ここまで来て帰れるか!
「馬鹿!今日はあっても明日には無いのが今の常識だ!食い物も尽きたし多少のリスクを負ってでも食い物を探さないとそのうち餓死するぞ!」
「そうだけどさ!でも何もこんな真夜中に探しに来なくてもいいじゃない!もし奴らがいたらどうするのよ!」
一体どうしちまったんだよ!
何で今になってそんな事を言うんだ?
さっきはここに来るのを納得してくれていたじゃないか!
恐怖が後から襲って来たのか?
……何にせよ、美愛をなんとか説得しないと駄目だ!
「その時はその時だ。このコンビニもそう大きくは無い。外から中は丸見えだし、奥にいるとしてもたかが知れてる。大人数で囲まれない限りは俺が何とかする。だから安心しろ」
「でもこんな真夜中で街灯もロクに付いていないのに大丈夫なの!?灯と言えば月の光しか無いのに……。もし死角から襲いかかられて来たらどうするのよ!」
……そう言えばゾンビが現れてから美愛と一緒に真夜中の街を出歩いた事は無かったな。
俺自身は武器や食い物の調達で美愛が寝静まってからこっそり外に出歩いていたから真夜中に街をどう動けばいいか何となく分かるようにはなっている。
でも、美愛は違う。真夜中の街に出るのは今日が初めてだ。
そりゃ怖いし不安だよな……
俺だって最初はそうだったんだ。
いけねぇなぁ。
目先の食い物に執着するあまり、美愛の事を全然考えて無かった。
もしかしたら怖いのをずっと我慢して付いて来てくれていのかも知れない。
だとすると、これ以上はそんなに無理は出来ねぇなぁ……
俺だって別に死にたい訳じゃない。
奴らみたいにゾンビになりたい訳でも無い。
家族や友人の安否が知れない今、俺の心の拠り所は美愛だけなんだ。
ただ美愛を守りたい一心でこんな危険を冒している。
だからどうか、お願いだから何も居ないでくれよ……!
「3…2…1…それっ!」
コンビニの中に拳大の石を投げ入れる。
ガランガランと結構大きな物音がしたから間違いなく中に奴らが居たら気付く筈だ。
反応は……
ガワンガワンガワンガワン!
「なっ!?」
「きゃぁ!?やっぱり居たんだよ!」
何の音だよ!クソ!
一体中に何が居ればあんなもの凄い音が出るんだ!
俺が投げ入れた石の音の比じゃ無いくらいに周囲に音が響き渡ったぞ!
これじゃもし近くに他のゾンビが居たら寄って来る!
逃げないとヤバイ!
「駄目か……クソ!逃げるぞ!」
「は、早く!奴らが来る前に行こう!」
「あぁ!」
まさかこんなにも……こんなにも食い物を得る事が大変だとは思ってもみなかった。
金を出すだけで何でも得る事の出来たあの頃では想像もつかなかった事だ。
たった1ℓの水でさえ、一日中探し回っても手に入れる事が出来ない。
誰か……助けてくれ……!
このままじゃ俺も美愛も死を待つだけだ……!
番外編はシリアス要素が強めになります。
基本的に番外編は主人公と同じ話に出てきた人間sideの物語です。




