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花を咲かせる魔法使いはとりあえず楽をしたい  作者: 岳鳥翁
アリエリスト領と花の魔法使い
25/76

25:ジョブチェンジ

少しはっちゃけた。許してほしい。


どうも、二修羅和尚です。そろそろストックがヤバイ。

三十一話までは予約完了! 一章完結までは頑張るぞ!

 やはりというか何というか、青林檎改めリアの実はかなり珍しく、そして食した者に莫大な恩恵を与える果実であるそうだ。

 

 その存在は、遥か昔に勇者を遣わした女神がピンチに陥った勇者を助けるために賜ったものだと記述されているらしく、文献によれば、これを食した勇者は更なる力を手に入れ魔王を打ち滅ぼしたそうな。一説では、この果実は女神の血や涙が結晶化し、地上に送られたものだとも言われている。


 嘘か本当か知らんが、歴代の権力者がこれを探すためだけに金と労力を惜しまなかったとも言われているらしい。


 ユリウス曰く、一口食べれば食べた物の体を最高の状態に整え、二口食べればどんな病気も治し、三口食べれば欠損部位さえ再生させ、一つ食べれば永遠の命さえ手に入るとも言われているそうだ。

 最初はそのあまりにもあんまりな話に冗談はよせと言った俺であったが、真剣な目で話しているユリウスを見て嫌な汗が流れるのがわかった。


 他にもこの実を食すことで強大な力を手に入れることも可能なんだとか。とある記録によれば、この世界で誰もが知る勇者を筆頭に、歴史上で活躍した英雄たちは皆そろってこの果実を口にしたとも言われている。


 そしてユリウスもその一人。何でも若いころ(今でも若いとは思うが、十代のころ)、森での命がけのサバイバル中に発見、これを食したらしい。まぁ、見つけたものは腐りかけで食べれたのは数口分。それも痛んでいたそうだ。

 何故サバイバルをとは思うだろうが、これについての説明は長いので却下。要は戦争関係である。


 まぁそれでもこのリアの実の効果はすさまじいものだったらしく、瞬く間にユリウスは魔法使いとして有名になっていったんだとか。ここから先は奥さんとの出会いから今までという惚気話になったので聞いていない。


 



 さて。昨日の話し合いの結論として、俺とユリウスとの間である約束が交わされることになった。

 まぁここまでの話を聞いて予想通りといえば予想通りであるが、内容はこのリアの実を俺が大量生産できることを公言しないことである。俺としても、そんな厄介ごとの種になりそうなものをひけらかす気はない。ユリウス、ならびにアリエスト家もこれを内密にすることを約束している。

 ただ、無性に食べたくなるときもあるので、その時は人目を気にするようにしよう。






 そんなリアの実を三年間ほぼ毎日のように複数個食してきた俺はいなかった。いいね?(自己暗示)


 だいたい、何故そんなものがあの地竜の森に落ちていたのかがわからない。いつもならまたじいさんかと思うし納得もできるのだが、あの頃はまだじいさんと出会う前だ。関係はないだろう。


 気にしても仕方ないので諦めた。


 閑話休題(そんなことより)


 「…なぁ、アリエッタさんや。何故、そこにいるんですかねぇ?」

 「ふふっ、アリエッタと呼んでください。カオル様」


 いや、そういう事ではなく、何で目を覚ましたら頭の上に君の顔があるのかを聞きたかったんだが…


 確か、ユリウスとの話が終わった後、鍵はかけておいたはずだ。


 …かけてたよな?


 扉のほうに視線をやる。すると、それに気づいたアリエッタは何故か恥ずかしがるような素振りを見せた。

 「その…あまり見てほしくないわ。失敗しちゃったから…」

 「? 失敗?」


 何が? と俺が言い終わらないうちに、扉のほうからゴトッ、という何か硬いものが落ちる音が聞こえた。


 視界の端で落下したそれを見る。


 

 …俺の目には、ドアノブに見えた。


 「…えっと、あれ、アリエッタが…?」

 「ごめんなさい。まだ、細かい力の調整がうまく出来なくて…」


 嘘だと言ってほしかったです。

 あと、あのドアノブに握りつぶされたような跡があるのも気のせいですよね?

 

 ドアノブに視線をやってから、もう一度アリエッタに視線を戻す。

 暫しの間視線を交えていた俺とアリエッタであったが、頬を赤らめてきゃっ、と顔を両手で隠すアリエッタ。対して俺はサッと血の気が引いていくのを感じ取れた。


 【悲報】儚げ系天然の嬢様が姫ゴリラにジョブチェンジした件


 うっかりの天然で俺がぶっ飛ばされる可能性大。


 「と…ところでアリエッタ。何か用でもあったのか?」

 

 出来るだけ平静を装ってアリエッタの話しかける。

 力は違えど、アリエッタであることには変わりないのだ。であれば、アリエッタが変な気を起こして俺に手を出してくることはないはず。

 ここはさっさと用件を聞いて部屋に戻ってもらうほうが良いだろう。


 「ええ! そうなの! 朝が来て、これが夢じゃないことがはっきりわかったわ! だから、この喜びをカオル様にも伝えたかったの!」

 「そ、そうなのか。うん。もうお礼だけで十分伝わってるぞ?」

 「でも、私が足りてないの。だから、はしたない女だと思われても仕方ないのだけど…」


 ハグさせてほしいの!



 言い切る前に部屋を飛び出た俺は悪くないはずだ。







 「じょ、冗談にも程があるだろ…!?」


 あんな力で抱きつかれてみろ。決闘なんかやる前に、俺がひしゃげて死んでしまう。

 いや、嬉しいのは分るんだ。分るんだが、何故それで俺を抱きしめるという選択肢が出来ると言うのか。


 アリエスト家の長い廊下を、今まで出したことがないような速度で駆け抜ける。今の俺ならオリンピックでの優勝も出来るのではないかとさえ思えるスピードだ。一般人以上となった俺の身体能力と言うのもなかなかのものだ。


 「カオル様!!」

 「ぬおっ!?」


 だが、そんなこと知らんとばかりにアリエッタが飛び付いてくる。


 いくら身体能力が一般値より上でも、更に上をいかれては意味がないのだ。その証拠に、スタートダッシュで突き放したはずのアリエッタが三度目のダイブをかまして来やがった。

 そう、三度目。


 普通ダイブすれば、それだけでかなり引き離せるはずなのだが、アリエッタにはその普通が通用しないらしい。ダイブで着地と同時に軽やかな動きで弾丸の如く跳び出してくる。



 どう考えても貴族のお嬢様の動きではない。


 血筋だけでここまでなるものなのか。恐るべし異世界…!!


 「お待ちになって!」

 

 四度目のダイブを往なす。


 だいたい、何でそこまでして俺に抱きつこうとするのか。抱きつくなら妹のPさんにしろよ。男としては嬉しい限りなのだろうが、状況が状況なだけに嬉しくない。人によっては、あの胸に抱かれて死ねるなら本望だとかなんとか言って命を顧みずに飛びこむ奴もいるのだろう。そいつら、思考回路がおかしいんじゃないだろうか。


 「何で逃げるんですか?」

 「手加減を! 覚えてから! で、出直せっ!!」


 てか、何故そんな涼しそうな顔で並走してるんですかねぇ!?


 伸ばしてくる手を身を捻って避けること数回。自画自賛したくなる俺の回避にムッとした様子を見せたアリエッタは更に加速して俺を追い抜くと、俺の前方で停止。振り返って腕を広げた。


 恐らく、俺のことを受け止める気でいるのだろう。俺がこのまま勢いよく突っ込んだところでアリエッタは普通に受け止めるだろうし、気を使って速度を落としてもアウト。ついでに言えば、上下左右に避けてもアウト。


 「『咲け』!」


 普通ならもうどうしようもないこの状況。しかし、俺もまた天使と言う存在から普通でない力をもらっているのだ。

 アリエッタが待ち構えるその足元に人間サイズの花を咲かせる。以前じいさんに座るように言ったあの異世界の花(人間サイズ版)だ。これは足場にできるくらいかたいので、アリエッタを乗せたところで問題はない。


 突如生えた巨花に驚いたアリエッタであったが、彼女が見せた反応はそれだけ。すぐさま花を足場にして上へ跳ぶと、今度は天井に手をつけて押し出し、その反動で降りてくる。

 だが、空中いる時間ができたならそれでいいんだ。


 「『咲け』っ!」


 第二陣。

 空中に出現した大量の花達はその根をアリエッタに向けて伸ばす。

 今回俺が指定したエネルギーはアリエッタの体力。昨日まで病人だった彼女にそんなことをするのは気が引けるはずなのだが、今は全くそんな気が起きない。自分優先。自分第一。


 廊下の空中で花の根に覆われた彼女をしり目に、俺は空いた下方からスライディングでこの難関を突破。ついでとばかりに俺と彼女の間に大量の巨花を咲かせてバリケードを張る。

 ちなみに、杖は使ってない。じいさんにはああ言われてはいるが、(俺にとっては)緊急事態だ。しかたないことだろう。許せ。


 ある程度距離を離したところで、目に付いた部屋に飛び込んだ、というよりも、もうすでに体力の限界で休憩したかったのが本音である。いくら一般以上でもあれ相手にはないも同然だ。

 部屋に入ると同時に何かを破壊するような音は聞こえなかった。いいね?(二度目の自己暗示)


 扉を背にしてその場に座り込む。一時的にでもこうして気を緩められたからなのか、体中の汗が半端じゃないことに気付いた。額や首筋、頭からも今まで流したことがないような量の汗が溢れ出る。

 しかし、その汗も直ぐに止まると、更には疲れが徐々にではあるが抜けていくのがわかる。じいさんがくれたこの服とローブのおかげなのだろう。流石ドラゴンが保有(奪取品)するお宝である。

 

 だいぶ息が整ったところでふと気付いた。この部屋、必死すぎて全く気付かなかったのだが人の気配がするのだ。


 大きなベッドが部屋の中心に備えられ、壁には武器類が立てかけられていたりする。しかし、衣装ダンスと思われるものの近くにはかわいらしい人形。なんとも言えない部屋だ。誰住んでる部屋なんだここは。


 しかし、よく考えれば勝手に入って来たのは俺の方である。事情を話して約束の決闘の時間まで匿ってもらおうと考えた俺は、気配のするであろう方へ向けてすみません、と声をかけた。

 

 「ぅ…そ、その声は、カオル…ね……」

 「…え」


 ベッドの傍で倒れるPさんと、その後方で気を失っているクェルを発見。


 わけがわからないよ。


 「ど、どうしたんだ…?」

 「姉さんの様子…見に、来たら………抱きつかれた、わ」


 見れば、いかにも満身創痍なPさんの姿。クェルに至っては鎧の一部が完全に破壊されている。

 …どうやら、すでにアリエッタの餌食になっていたらしい。


 心の中で謝っておく。さっき抱きつかれろとか思ってすみません。


 「…ん? 様子を見に来た…?」

 

 そしてPさんがここで倒れている……え、それってつまるところこの部屋


 「カオル様♪」







 何か呼ばれた気がしたが、あまり覚えていない。ただわかっていることは、目が覚めたらもう決闘直前の時間になってたってことだけだった。



 

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