第33話「大事なのは分かり合える仲じゃないか?」
最後の旅となる、各地に帰るジェット機を夕日が照らしていた。
マイケルが加山に聞く。
「なあ、俺達は何で呼ばれた?こんなに順調にいくなら必要なかっただろう」
「ああ、こんなに順調にいくとは思っていなかった。彼らの中にも、この体制は無理だという空気があったのだろう」
「もしかして、ナイジェリア感染に、あんたもいたのか?」
「ああ、私たちはいつでもパンデミックを調査していた」
「それはもしかして25年前から?」
「そうだ」
そこにレイグルがやってくる。
「我々は50年も前からワールド・リバース・プロジェクトを計画していた」
「50年も前から!?」
「当初は各国家を統一する計画だった。しかし、文化の摩擦と、統治の限界が準備開始から挙がっていた」
「この25年の間に、それは極限に達した。ドイツ事件がいい例だ」
「まさか、あんた達は」
「今さっきまで敵同士だったわけではない。むしろ協力的な関係だった。これは世界中でもそうだ。私たちは政府を監視していた、それは私たちと政府が近すぎたからだ。でも一歩置くことで、俺たちは協力できた」
ウォッカを持ったアレクセイにカルヴァが近づく。
「それは、ウォッカか?」
「おう、そうだけど?」
「どうだ?モスコミュールやブラッディメアリーにでもするのは?変わり種でもいけるぞ」
アレクセイは、ウォッカの瓶を見つめる。
「そうだな。それもいいかもしれない。適当にいい感じにしてくれ」
「ああ」
カルヴァは瓶を受け取り、材料をシェイカーに入れていく。
「あんた、あのアジア人の仲間か?」
カルヴァはシェイカーを振る。
「いや、だけど、俺の家族が仲間なんだ」
「家族が?大変だな」
「ああ、だけど。ようやっと会えるんだ。ずっと離れ離れだったけど、一緒に暮らせるんだ」
「それは良かったな。俺もまた家族と会ってバーをやるんだ」
アレクセイの前にカクテルの入ったコップが出る。
そしてアレクセイはそれを飲む。
「うん、いい味だ。これもいい」
カルヴァはゆっくりとうなずいた。
「だけどやっぱり度数がいるな」
アレクセイはウォッカの瓶を手に取り、口へ運ぶ。
そんなところにキムがやってくる。
「あの、カルヴァさん」
「どうした?キム」
「これから、クローン人の国家を作るのですが、一緒に作りませんか?」
「いや、作らない。俺には家族もいるし。大事な客だっている」
「やはりそうですか」
「大事なのは分かり合える仲じゃないか?」
「分かり合える仲?」
「ああ、俺とお前は同じクローン人だが、文化が違う。俺の妻は黒人だが、俺と相性があっている。お前も分かり合える仲を持つんだな。そうしたら、国だって必要ない」
「そうですか、やっぱりクローン人の国なんていらないんですね」
ウォッカの瓶を持ったアレクセイが、座席から顔を出す。
「ああ、少なくとも俺はこいつと酒という共通点があるらしい」
数年後。
独立国はイギリスをはじめとして北アメリカ合衆国、ヨーロッパ連合国、中華合衆国、日本、ロシア社会民主共和国、その他さまざまな国家が乱立していた。




