第1話「これが表向きの歴史」
14歳の私へ―
初老の日本人男性が言う。
「25年前、そのお嬢さんは知らないと思うけども、皆知っているであろう。世界危機が起きた」
「世界規模のゾンビパンデミックです。私も加山さんと一緒にいました」
その横に、少し老いた白人男性がいた。
「世界中の国家政府は、この未曾有の事態を前に協力して、あらゆる国家を統合。そして、世界で唯一の政府ができあがった。この時私は、ディストピアができるのではないかと思っていたが、現実はビックブラザーの統治する世界ではなく、緩やかな連合政府だった。公平な選挙制度、言論の自由、人権の保障。そして地域によっては制限できる緩やかな憲法。それが出来上がった世界だった。だが、世界危機から15年後であった。アフリカでパンデミックが発生した」
「ナイジェリア感染・・・」
軍服を着た白人男性がつぶやいた。
「そう、マイケル。君がブロックカウント部隊で任務にあたっていた事件だ」
「何のことだ?」
「隠すことではない。部隊の行動は公表されている。部隊員は公表されてはいないがね」
軍服を着た白人男性は何も言わなかった。
「感染源は世界危機のウイルスの変異体が寄生虫に感染。その寄生虫が人々を操り、ゾンビ状態になった。このパンデミックは自然発生だった」
「ああ、俺の調査結果と一緒だ」
「そして世界危機から18年後、旧アメリカ合衆国のメイン州でパンデミックが発生した」
「メイン事件。あれは結局、ウイルスだったのか?それとも教団の集団洗脳だったのか?」
「ええ、あれは結局何だったの?」
黒人女性と白人男性の夫婦、そして一人の少女の両親が言う。
「結局のところウイルスは見つけていない、あなたと友人が見つけてくれた液体も、催眠作用はなかった。カルヴァ、君はクローンだったな。そのクローン人がいることも、その事件で広まった。どうやらクローン人は世界で大勢いたようだ」
「ここには私とあなたしかいないようですが」
アジア人男性が言った。
「更に世界危機から21年後のこと。旧ドイツ共和国、いや、ドイツ第三帝国の本土といえる地域でパンデミックが発生した。これはネオ・ナチズム主義によるものであった。体内に埋め込まれたチップにより、人々はゾンビ状態となっていた。あれを止めてくれたのはアレクセイ君のおかげだ。そうだろう」
「ああ、覚えてるぜ。頭の悪い俺でもよお」
スラブ系の白人男性が言った。
「これが表向きの歴史」
初老の日本人男性は一呼吸置く。
「実は一つだけ隠している、世界危機は裏の政府によって、計画されていた。そして、それはまだ途中であった。その計画名はワールド・リバース・プロジェクト」




