第24話:神々の破産:宇宙の中心で「債務超過」を叫ぶ
全並行世界の因果律を制御する、ボイド・システムの最深部。
そこは、物理的な場所ではなく、数式と魔力が渦巻く「概念の海」であった。
その中心、煌びやかな光の玉座に座る存在――ボイドの「システム管理者」は、不快げに眉を寄せた。
「――増長したな、人の子よ。……私の書いた『脚本』を、ただの紙屑のように扱いおって」
「脚本、ですって? ……ふふ。笑わせないでくださる」
渦巻く魔力を扇で優雅に薙ぎ払い、エリザベートが降り立った。
その後ろには、カエルス皇帝とセレーネ、そして連合を代表する「覚醒した自分たち(エリザベートたち)」が、冷徹な監査官の如く控えている。
「管理者さん。貴方の書いたその脚本、監査の結果、明白な『不当契約』、および『独占禁止法違反』に当たることが判明いたしましたわ」
「な……何を馬鹿な。私は神だ! この世界の理、そのものであるぞ!」
「理、ですって? ……では、これを見なさいな」
エリザベートが指を鳴らすと、概念の海が一瞬にして巨大な貸借対照表へと変貌した。
「貴方は『悪役令嬢の死』によって世界のエネルギーを循環させていると仰いましたわね? ですが、その実態は、令嬢が持つ強大な魔力、知性、そして資産を、貴方が一方的に『搾取』し、自身の維持費に充てていただけ。……これ、明白な『特別背任罪』、および『公金横領』ですわよ」
エリザベートの紫水晶の瞳が、冷酷なまでに美しい光を放つ。
「さらに。全並行世界における私の『精神的苦痛』、および『不当な断罪』による損失を金銭換算いたしましたところ……。貴方の全資産、すなわちこの『宇宙そのもの』を以てしても、利息の一割にも満たないことが判明いたしましたわ」
「そ、そんな……私の宇宙が、債務超過……!?」
「ええ。貴方は、神として振る舞う資格どころか、破産手続きすら自分ではできない『不良債権』に過ぎませんの」
エリザベートは、冷徹な宣告を下した。
「本日をもって、宇宙の『管理権限』、および『存在権』を私、エリザベート・フォン・ローゼンベルクが、強制執行させていただきますわ。……さあ、その黄金の椅子から立ちなさい。……明日からは、私がこの宇宙の『真のCEO』ですのよ」
「おのれ、人の子が……消え失せろ!」
システム管理者が「宇宙消去」の波動を放ったその瞬間、背後から一閃の漆黒の刃がその首を断ち切った。
カエルス皇帝。彼は次元の揺らぎさえも物理的に切断し、不敵に笑う。
「……私の妻の計算に、異論があるなら私が聞こう。……ただし、私の剣は、貴様らの『存在理由』を斬り裂くのが得意なのだがな」
神の首が、ノイズとなって崩れ落ちていく。
「……さて。陛下。……無能なCEOは去りましたわ」
エリザベートは、空になった黄金の玉座を見上げ、極上の笑みを浮かべた。
「これより、宇宙の『再開発』を開始いたしますわ。……不当な因果律はすべて『廃止』。……世界は、私の美学と計算法によって、完璧に管理されるのですわ!」
黄金の女帝が、神の椅子に座った瞬間。
全並行世界の空が、これまでの偽りの黄金色から、澄み渡るような真実の青へと塗り替えられていく。
悪役令嬢による、宇宙規模の「敵対的買収」。
21.
それは、不条理な物語に終止符を打ち、女帝による永遠の繁栄を約束する、新たな「神話」の始まりだった。
「神」を債務不履行で追放し、宇宙の全株式を取得する……。
これぞエリザベート様による、次元を超えた究極の「敵対的買収」ですわ。
ですが、皆様。これは「終わり」ではありません。
管理者のいなくなったこの宇宙には、未だ「悲劇の脚本」に縛られた無数の世界と、
それらを裏で操っていた『真の黒幕』たちが潜んでおります。
次回より、第二章(多次元帝国編)が開幕いたします。
第25話『新世界のCEO、あるいは運命の再開発』。
エリザベート様が、宇宙の全エントロピーを「利益」に変える瞬間をお見せいたしましょう。
☆☆☆☆☆の評価は、彼女の「新会社」への出資金となります。
さらなる規模の「ざまぁ」をお届けいたしますわ!




