第21話:多次元連合、結成:ゴミ山から最強の軍団を
次元の狭間に浮かぶ、純白の「監査神殿」。
そこは女帝エリザベートが、全宇宙を統括するために構築した、物理法則の届かない聖域である。
「――お連れいたしました、お嬢様」
セレーネの声と共に、神殿の広間に「それ」が次々と現れた。
次元の扉をくぐり、この場所へ召喚されたのは、数十人の「エリザベート・フォン・ローゼンベルク」。
だが、その姿は凄惨を極めていた。
第102世界の彼女は、毒を盛られ、幽霊のように青ざめた顔で車椅子に乗っている。
第514世界の彼女は、修道院に幽閉され、指先を凍傷で失いかけている。
第999世界の彼女に至っては、処刑台の露と消える直前――首筋に断頭台の冷たい感触を残したまま、ここへ転送されてきた。
「……あら。随分と、不当な低評価を受けているようですわね。私という存在は」
玉座に座る黄金の女帝エリザベートが、ゆっくりと立ち上がる。
その威圧感は、神すらも押し潰すほどに重厚で、かつ慈悲深かった。
震える「自分たち」の前に歩み寄り、彼女は一人ひとりの顎を優しく、しかし力強く持ち上げた。
「……怖がることはありませんわ。貴女たちは今日まで、世界という名の『欠陥プログラム』に、ただ一方的に搾取されてきただけ。……ですが、今日からは違いますわよ?」
「あ、貴女は……? 私……死んだはずでは……」
断頭台から救われた第999のエリザベートが、呆然と問いかける。
「死なせるわけがありませんわ。……貴女のその『死』という結末に、一体どれほどの損失が生じると思っているの? 貴女の知性、貴女の気品、そして貴女が築くべきだった富……。それらを奪った愚か者たちに、相応の『遅延損害金』を請求しに行かなくてはなりませんもの」
女帝は、神殿の中央に巨大な光のホログラムを展開した。
そこには、全次元で「エリザベート」を断罪しようとする謎の組織――次元管理機構『ボイド・システム』の構造が映し出されている。
「この宇宙には、ある『バグ』が存在しますわ。……『悪役令嬢は必ず破滅しなければならない』という、非効率で時代遅れの因果律。……これを維持するために、貴女たちは生贄にされていたのです。……ですが、安心なさいな。そのシステムの管理権限、先ほど私が『敵対的買収』の手続きを開始いたしましたわ」
女帝エリザベートは、傍らに控えるカエルス皇帝に目配せをした。
カエルスは、震える令嬢たちに対し、不敵な笑みを浮かべて宣言する。
「案ずるな。……君たちがかつて愛した、あるいは裏切られた無能な男たちは、私が全次元で『ゴミ』として処分しておいた。……これからは、このエリザベートが君たちの新しい『法』だ」
女帝は、令嬢たちに黄金のペンを手渡した。
「さあ、契約書にサインをなさい。……『多次元悪役令嬢連合』。……私たちは、もう二度と誰にも断罪されません。……これからは、私たちが世界を、神を、そして運命そのものを『断罪』する側になるのですわ」
「……はい、陛下。……準備は、整いましたわ」
一斉に跪く、数十人のエリザベート。
毒を盛られた令嬢は解毒の魔力を得て、修道院の令嬢は軍権を手に入れ、処刑寸前の令嬢は死そのものを支配する力を授けられた。
「セレーネ。……第102世界から始めましょうか。……あそこの王子、私の名において『全資産没収』および『存在抹消』を執行なさい。……やり方は、あの子(第102のエリザベート)に任せますわ。……最高に『不愉快』な末路を用意して差し上げなさいな」
「御意、お嬢様」
黄金の軍勢が、次元の壁を突き破り、全宇宙へと出撃を開始した。
それは、物語の理に逆襲する、女帝たちの反乱の幕開けだった。
全次元の「私」を救い出し、最強の軍団を結成する……。
これこそが、エリザベート様による、宇宙規模の「不当解雇(断罪)への報復」ですわ。
絶望していた令嬢たちが、女帝の導きで最強の復讐者へと覚醒するシーンに痺れていただけましたら、
ぜひ下の【☆☆☆☆☆】を評価に入れ、彼女たちの「多次元ざまぁ」を応援してくださいな。
皆様の評価がある限り、エリザベート様は宇宙の因果律さえも買い叩き、
「悪役令嬢」という言葉を「世界の覇者」と同義に書き換えられることでしょう。
次回、第22話『第102世界の崩壊:車椅子の令嬢による毒の監査』。
かつて自分を毒殺しようとした王子に対し、彼女が突きつける「薬代の請求書」とは。
お楽しみに。




