第20話:二人のエリザベート:女帝による帝王学の極限教育
嵐が去った後のパーティー会場。
カイル王子とリリアンが消え、静寂が支配する空間で、二人の銀髪の令嬢が対峙していた。
一人は、世界の理を掌握した「黄金の女帝」。
もう一人は、頬を赤く腫らし、泥に汚れたドレスを纏った「敗北の令嬢」。
「……あの、貴女は……いえ、私は、どうすれば……」
並行世界のエリザベート(#824)が、震える声で問いかける。
女帝エリザベートは、優雅に扇で自身の顎をなぞりながら、冷淡に言い放った。
「まず、その醜い涙を拭きなさい。……泣いて許されるのは、無能に価値を見出す物好きが周囲にいる間だけですわ。今の貴女は、私が『買い取った』資産に過ぎませんのよ?」
「資産……」
「ええ。今の貴女の価値はマイナス。ですが、私の教育次第では、この世界を支配する『鍵』になり得ますわ。……セレーネ、教材を」
セレーネが影から差し出したのは、数千枚に及ぶ「この世界の貴族たちの弱み(監査報告書)」と、最先端の魔導演算機。
「いいですか、私のニセモノさん。復讐とは、怒りに任せて剣を振るうことではありません。……敵が最も大切にしている『拠り所』を特定し、それを法的に、経済的に、そして精神的に、一歩ずつ確実に『私物化』していく作業ですの」
女帝は、並行世界の自分を鏡の前に立たせた。
「鏡を見なさい。貴女のその瞳には、まだ『悲しみ』が宿っている。……それを捨て、代わりに『冷徹な算盤』を入れなさい。……この世界にいる全ての人間を、味方か敵かではなく、『利用価値のある駒』か『廃棄すべきゴミ』かで分類するのですわ」
「そんなこと……私にできるでしょうか……」
「『できるか』ではなく、『やる』のです。……拒否権はございませんわ。なにせ、この世界の貴女の命は、既に私が競り落としたものですから」
その夜から、地獄のような「帝王学」のレッスンが始まった。
女帝エリザベートは、一睡も許さず、並行世界の自分に「国家予算の掌握術」「貴族の懐柔(脅迫)プロトコル」、そして「神々への不当利得返還請求のやり方」を叩き込んだ。
わずか三日後。
かつて泥を投げられた少女の瞳からは、光が消え、代わりに底知れぬ「深淵」が宿っていた。
「……準備は、整いましたわ。お姉様」
#824のエリザベートが、冷たい微笑を浮かべて告げる。
その姿は、まさに女帝の忠実な「分身」そのものだった。
「よろしい。……では、手始めに、貴女を裏切ったこの国の貴族たちを『全員解雇(破産)』させていらっしゃい。……やり方は、教えた通りに?」
「ええ。……彼らが隠している秘密口座、すべて『監査』で凍結済みですわ。明日の朝、彼らは自分たちが住む屋敷が、私の名義になっていることに気づくでしょう」
その様子を、カエルスが愉快そうに眺めていた。
「素晴らしいな、エリザベート。貴公が二人になれば、この宇宙の半分は三日で君の私有地になるだろう」
「あら、陛下。半分で満足するほど、私は謙虚ではありませんわよ?」
エリザベートが微笑んだその時。
セレーネが持つ次元観測機が、激しく警告音を鳴らした。
「……陛下、お嬢様! 異常事態です。……第102、第514、第999並行世界……数え切れないほどの世界で、同時に『エリザベート』の断罪が開始されました。……これは偶然ではありません。……何者かが、全次元の『エリザベート』を抹殺しようとしていますわ!」
「……なんですって?」
エリザベートの扇が、怒りで震える。
全次元の自分を、一斉に断罪しようとする組織的な悪意。
「面白いわね。……私という『ブランド』を一斉に攻撃するなんて。……これ、大規模な『敵対的買収』の仕掛けですわね?」
エリザベートは立ち上がり、次元の彼方を見据えた。
「よろしいでしょう。……全次元の『私』を救い出し、私の旗下へ加えますわ。……『多次元悪役令嬢連合』。……宇宙で最も恐ろしい、女たちの帝国の建設ですわよ!」
女帝の休日。それは、宇宙全土を巻き込む「次元の覇権戦争」へと変貌した。
「悲劇」を「教材」に変え、自分自身を最強の軍団へと作り変える……。
これぞ、エリザベート様による多次元規模の「アセットマネジメント」ですわ。
弱かった自分が、本物の女帝に導かれて覚醒するカタルシス。
痺れていただけましたら、ぜひ下の【☆☆☆☆☆】を評価に入れ、
「全次元の私」を救うための戦いを応援してくださいな。
皆様の評価がある限り、エリザベート様は全並行世界の王子を破産させ、
「私」という名の神々による新秩序を打ち立てられることでしょう。
次回、第21話『多次元連合、結成:ゴミ山から最強の軍団を』。
断罪の場に、黄金の軍勢が降り立ちます。
お楽しみに。




