第17話:運命の民営化:神々の書き換え権(シナリオ)の差し押さえ
天界の最上層、黄金の円卓が並ぶ「運命の議事堂」。
そこでは、数千年にわたり地上の歴史を「脚本」として書き換えてきた主神たちが、かつてない混乱に陥っていた。
「……何事だ! 地上からの魔力配当が、昨日の同時刻比で98%も減少しているぞ!」
「天使たちの通信が途絶した! 誰だ、誰がシステムの根幹を書き換えている!」
神々が騒然とする中、議事堂の巨大な扉が、物理的な衝撃ではなく「法的強制力」を伴って開放された。
現れたのは、漆黒の宇宙を背景にした銀髪の女帝、エリザベート。
彼女の隣には、神の威圧をその身一つで跳ね返す「人界の覇王」カエルスが、不敵な笑みを浮かべて立っている。
「――あら。随分と騒がしい役員会ですわね。皆様、議事録の整理はお済みかしら?」
「魔女、エリザベート……! 貴様、何をしにここへ来た! ここは神聖なる天界、貴様のような定命の者が足を踏み入れて良い場所ではない!」
主神の一人が、雷霆を手に立ち上がる。
だが、エリザベートは優雅に扇を広げ、その神の怒りを鼻で笑った。
「神聖、ですって? 笑わせないでくださる。……セレーネ、例の『著作権侵害に関する通知書』を」
影から現れたセレーネが、議事堂の中央に巨大な魔導書――『全人類運命記録』の写しを展開した。
「主神様。この書物には、私の人生、そしてカエルス様の歩みが勝手に『脚本』として書き込まれておりますわね。……『悪役令嬢として断罪され、惨めに死ぬ』。これが貴方たちの用意した、私のエンディング案でしたかしら?」
「それが世界の理だ! 神が書いた運命に従うのが、人間の分相応というものだ!」
「あら、残念。……その理、今この瞬間をもって『無効』とさせていただきますわ」
エリザベートが指を鳴らすと、魔導書の内容が次々と「赤字」で修正されていく。
「他人の人生を勝手に脚本化し、それを娯楽(エネルギー源)として消費する行為。これは明白な『人格権の侵害』、および『運命の独占禁止法違反』に当たります。……さらには、貴方たちが天界を維持するために使用している魔力の $$90\%$$ 以上が、人間からの不当な『魔力徴収』によるものであることも、監査の結果判明いたしました」
エリザベートは、冷酷なまでに美しい笑みを浮かべ、主神たちを見下ろした。
「神々という名の独占企業は、本日をもって『強制解体』、および『民営化』を宣告いたしますわ。……今後、人間の運命は、神の筆ではなく、人間自身の『意志と投資』によって決定されるものとします」
「き、貴様にそんな権利があるものか!」
「権利? いいえ、私は『オーナー』として発言しておりますのよ。……先ほど、ザドキエル様をリストラした際に、天界の全株式……いえ、『世界の存在権』の過半数を、私が取得いたしました」
エリザベートが空中に描いたのは、世界を構成する全魔力の配分図。
そこでは、天界という名の不採算部門が、エリザベートという名の「個人投資家」によって完全に支配されていた。
「これからは、貴方たちが人間に運命を授けるのではありません。……貴方たちが、私の所有するこの世界で『住まわせていただく』立場になるのですわ。……とりあえず、これまでの不当利得の賠償金として、天界の豪華な宮殿をすべて『公営住宅』として開放していただきますわね」
「な……我ら神々を、庶民と同じ場所に住まわせるというのか……!?」
「嫌なら、今すぐこの世界から『退職(消滅)』なさることね。……代わりの管理システム(AI)なら、既に私が構築済みですので、ご心配なく」
主神の手から、雷霆が力なく滑り落ちた。
世界を創ったはずの神々が、一人の令嬢の「経営判断」によって、一夜にしてその地位を剥奪されたのである。
「陛下、カエルス様」
エリザベートは、隣の覇王に微笑みかけた。
「これで、誰にも邪魔されない、私たちの『自由な盤面』が手に入りましたわ」
「ああ。……神の書いた物語より、貴公が描く未来の方が、数千倍は刺激的だ」
天界の空が、これまでの偽りの黄金色から、澄み渡るような真実の青へと塗り替えられていく。
「運命」という名の鎖を断ち切ったエリザベート。
彼女は今、神をも支配下に置く、この世で唯一の「真の主」となったのである。
「運命」を民営化し、神々を公営住宅へ追い出す……。
これこそ、エリザベート様による、次元を超えた究極の「ざまぁ」ですわね。
全知全能のはずの神々が、一人の令嬢に「規約違反」で完封される様に痺れていただけましたら、
ぜひ下の【☆☆☆☆☆】を評価に入れ、彼女の「新世界の創造」を祝福してくださいな。
皆様の評価がある限り、エリザベート様は宇宙の理さえも、
自身の「私有財産」として完璧に管理されることでしょう。
次回、第18話『女帝の休日、あるいは新たなる遊戯』。
すべてを手に入れたエリザベート様が、退屈しのぎに始めた「ある遊び」とは。
お楽しみに。




