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作戦会議

 森の家に戻った。


 やっぱホームはいい。ここって最強の要塞だし、最強の爺さんがいるから安心感が違う。壁は高くて普通の生き物は越えられないし、変に攻撃してきた奴は不干渉地帯とものぐさジジイから手痛いしっぺ返しを食らう。


 もう離れられない。


 今回の被害はリズが負傷、ヨキも新しい体が出来るまで動けないけど、逆に考えれば、その程度で抑えられたとも言える。


 しかし危なかったな。本当に紙一重だった。


 《天体衝突》使った後のグロッキー状態でドミナ・マウの残党に襲われたらたぶんやられてたし、リズも動体センサーがなければ急所一撃で落とされてた可能性があった。ヨキに関しては完全にアウトだったし、メッセンジャーのマグちゃんも無理な飛行でのせいで餓死しててもおかしくない状況だった。


 なにか少しでも条件が違えば、誰かが死んでた。このままじゃいけない。


 気を引き締めなくては。


 ところでファン・マウが派遣してくれる魔術師は三人らしい。


 一人はルゥマニア。


 本などでルゥの情報を集め、不干渉地帯を聖地と呼び、ルゥのことを神と崇める痛い人らしい。だが実力は確かで、使えるのは通路の魔術、物質操作、樹状に魔力を伸ばす索敵。


 皆さんはお気付きだろうか。俺は気が付いた。


 この人、たぶんルゥの真似をしている。ルゥは結界とかも使うけど、それはまだ未習得なのだろう。それ以外は完全に一致している。


 で、残りの二人はファンのひ孫にあたる人物で双子の女の子。


 ル・マウの再来と言われ、二人で一つの魔術を展開する。使えるのは障壁と言われる魔術のみ。ただ壁を張るだけ。以上。だが、これが鬼のように硬いらしいのだ。


 そもそも俺の必殺技《天体衝突》を別の場所に転移させたり、落下する主様を受け止めたりと、とんでも性能の魔術だが、この双子ちゃんの使う魔術は、また一つグレードが違う。


 どれくらいの性能か楽しみではあるが、なにせ防御しか出来ないから、最後衛になってもらう感じになるかな?


 ちなみにこの双子ちゃん、ルゥのもつ魔術習得の最年少記録を更新している。一六歳と二ヶ月。それで、ルゥの再来だと騒がれているわけだ。


 この双子ちゃんもルゥに憧れているらしく、不干渉地帯にも興味深々。近く三人で、来てくれる予定になった。


 そう、三人だ。


 ファンは来ない。やっぱり彼女は不干渉地帯が嫌いらしい。


 とりあえず時間が出来たし創造系のお仕事をしよう。半壊してしまったヨキの体と、距離を詰められた時用のリズの新武器、俺とマンデイ、ゴマ、ハク用スーツの改良。


 あとは……。


 毒だな。


 正面から戦っても勝てないのは今回痛いほどよくわかった。


 やるなら搦め手(からめて)。かつ住民を傷つけない方法。死なない程度の毒を散布するのが一番いい。向こうが弱体化の付与をしてくるなら、こっちもおなじことをする。


 毒の対策は間違いなくしているだろうから、それを上回るスペック、上回る量を散布すればいい。


 「あの。ちょっといいですか?」


 声をかけてきたのはリズ。


 「あっはい。いいですよ。なんです?」

 「このまえのことなんですけど」

 「あぁ。本当にすいませんでした。頭が真っ白になってしまって」

 「……」


 ん? なに? なにその表情。なに。


 「私、考えてたんです。でもどうしても納得がいかなくて」


 あれ? 抜けるとか言い出す感じかな? マジか。どうしよう。


 「あれは間違った判断でした。まったく関係のない人々を巻き込もうとしたのですから。今後、二度とやらないと約束します。絶対にやりません。本当に後悔してます」

 「えぇ、ただ私は……」


 言わないよね? 抜けるとか言わないよね? 意外と頼りにしてるんだから。頼むよ。


 ……。


 「なんでもありません。変な話をしてすいませんでした。マンデイさんが作戦会議をしようと(おっしゃ)ってました。キリがいいところで作業を中断してください」

 「あっ、はい」


 これって、あれだ。いまリズの不満を聞き出さなくちゃいけないやつだよな。遺恨を残すやつだ。俺の行為が許せなかったんだろう。リズの性格を考えると当然だ。


 もう一回ちゃんと謝らなくちゃ。


 リズが納得してくれるまで話さなくちゃ。


 「それじゃファウストさん。また後で」


 言え! ちゃんと言葉にして。何度でも。そうしないとリズが離れていきそうな気がする。


 こんな時、なにを言えば……。


 「はい。また後で」


 口が動かない。なぜ。


 広い農園に一人取り残された。


 仕事が手につかない。


 さっきの表情はあれだ。前世で散々向けられたから知ってる。


 軽蔑だ。





 「おいファウスト。聞いてるのか?」


 はっ。


 「すいません。ちょっと考えごとをしていました」

 「集中しろ」

 「はい」


 いまなにをしてたんだっけ。そうだ、会議だ。次のアタックの計画を話し合ってたんだ。


 俺が喋らないから、ヨキが進行してくれてる。


 「次回は最後までまとまって行動すべきだろう。お互いにフォロー出来ればもっと安全に立ち回れる。なにか意見はあるか」


 そうだな。それがいい。別れて戦うと危ない。皆で一点突破しかない。


 「「「「……」」」」


 毒とか撒いて、なんとかするしかない。


 「意見が無いなら、これで――」

 「攻めるのは無理。ドミナ・マウを攻略できない」


 ヨキの言葉を遮ったのはマンデイ。自発的な発言は珍しい。


 確かに攻めるのはキツそうだなぁ。でも相手が不干渉地帯に突っ込んでは来ることなんてないだろうしなぁ。


 やっぱヨキが言ったみたいに……。


 なんか情けないな。


 ドミナ・マウの攻略が出来ないってのは俺が指摘しなきゃいけなかった。


 集中しなくては。リズのことはちょっと置いとこう。


 気合の入れ直しだ。


 よし。


 「シャム・ドゥマルトが戦場になれば、ドミナ・マウが暴れたい放題になります。皆さんも見たと思いますが、王都の地下には無数の死体が保管されているようだ。恐らくなんらかの保存方法があるのでしょう。

 あれだけの数。有事に備えて何年も何十年もかけて死体を備蓄していたと考えるのが自然です。あとどれくらいの戦力が残っているかは不明。無策に突っ込めば敵の思う壺です。広範囲に毒を散布してドミナ・マウの動きを止めてから攻めるのも一つの手段だとは思いますが、それにしても不確定要素が多すぎる。

 それに今回はデ・マウ抜きでした。奴が出てきてたらどうなっていたかわかりません。弱体化はそれぞれにお渡ししたボディリングでどうにかなると思いますが、実証実験ができてません。そして強化がどの程度のレベルのものかも把握できていない。

 今度戦うなら撤退しやすいように不干渉地帯周辺ですべきでしょう」


 沈黙。


 マンデイ。なんかコメントしてくれてもいいんだよ?


 「なるほどな。しかしどうやって敵を誘い込むつもりだ」


 リアクションしてくれたのはヨキ。


 「さっぱりわかりません。敵が攻めて来ざるを得ない状況を作り出すしかないのですが、デルアの都市を攻撃してもダメ。爆弾を投下しても無反応。今回わりと大規模な戦闘をしたのにやっぱり沈黙したまま。誘い込む案は結構序盤から念頭に入れて立ち回っていたのですが、こうも無反応だとどうも。

 大量発生(スタンピード)を警戒してのことだろうと思いますが、ここまで慎重に動かれるとかなりつらいです。

 こっちにはルゥもいるし、簡単に攻め落とせるとは考えてないでしょう。ルゥが弱ってることは向こうは知らないはずですし。あるいはジワジワ戦力を削る算段かもしれない」


 それに警戒されまくってるいまの状況で突っ込んだら、確実に返り討ちにあう。


 冷静になって良かった。ヨキ案で決まってたら、かなりリスキーなことしなくちゃいけないところだった。


 「潜入班が仕入れてきたデルア五将について情報の共有をしときましょう。潜入班から聞いた大まかな情報と、実際に僕たちが見た情報を擦り合わせていきます。マンデイ。映像の中継を頼む」

 「うん」


 マンデイの核から伸びる魔力の導線が、メンバーに繋がっていく。


 「まず、僕が見たものからいきます。マンデイ、俺が送る映像を流してくれ」

 「うん」

 「魔将ドミナ・マウ。大量の飛竜と死の兵士の対応をしました。有効だったのは頭部破壊。今回、毒は使わなかったので毒の有効性は不明。とにかく数が多く面倒な印象です。ドミナ・マウが操る兵士は死や痛みに対する恐怖がないので、ただ突っ込まれるだけで脅威です。

 それと長身の女が率いる精鋭部隊らしき奴らと戦ったのですが、精鋭部隊とおなじ制服を着た死体はかなり動けてました。ですが、一般市民や普通の歩兵のような格好をした死体の動作は、ごくごく普通だった。事前の情報通り、ドミナ・マウの使う死体のクオリティは、生前の能力によって変動するようです。

 ちなみに一般の兵士の死体も精鋭部隊の隊員も生者に比べて(もろ)い印象でした。完全に生前のまま、というわけにはいかない様ですね。

 他にドミナ・マウの追加情報がありますか?」


 発言したのはフューリー。


 (魔術通路に入るまえに建物と建物の間に入ったのだか、一瞬敵の動きがチグハグになっておったのう。おそらく、ドミナ・マウの死角になったのだろう)


 なるほど、ドミナ・マウがあの場にいたということか。


 だが実際に見て指示を出してるとなると、かなり視野の広い奴なのかもしれん。空の戦闘をこなしつつ地上もケアしていたわけだからな。


 なにかカラクリがあるか?


 情報が乱れたら動きがちぐはぐになるということは、「敵を攻撃しろ」みたいな簡単な指示で動いているんじゃないのか。死霊術ってわりと繊細な魔法なのかもしれない。


 「鳥が飛んでた」


 と、マンデイ。


 送られて来たのは、小鳥のような生物。形が(いささ)か歪だ。飛び方は燕のように見える。マンデイたちと一定の距離を開けて飛行しているようだ。


 狩りをするからわかる。この鳥、普通の生き物の動きをしていない。角度を変えながら常にこちらを観察するように飛んでいる。


 明らかに不自然だ。もしかすると、こいつがドミナ・マウの目?


 フューリーが予想外の方向に逃げたから、一瞬だけ見失った感じか。


 それにしても、かなり速いな。マグちゃん程じゃないが、少なくとも《鷹》よりは速度が出てそうだ。


 「あっ、これ!」


 反応したのはリズ。


 「知ってるんですか?」

 「えっ、あ、はい」

 「なんていう生き物です?」

 「たぶん《送り雀》です。私たちの国にいました」


 送り雀。知らない子だ。


 「どういう生態かわかりますか?」

 「肉食の生物を誘導して悪魔とか小型の生物を襲わせ、食べ残しを盗んでいきます。子供を誘い出して崖から落として捕食したりも」

 「ほう」


 あの飛び方、やっぱり普通じゃない。


 死霊術、呪術に関するなにかであるのはほぼ間違いないだろう。


 よくわからんが、潰しとくか。


 「マグちゃん。これ、いけそう?」

 「いけル」

 「これが生きてるのか死んでるのかがよくわからないな。針兼用の軽い刃物を造るから携帯して欲しい。生きてようと死んでようと首を斬れば動きが止まるから」

 「わかっタ」


 とりあえず送り雀は抑えとこう。対応できるのはマグちゃんかリズくらいか。最悪ヨキの《朝陽》でもいけるかな。


 「他になにかある?」


 沈黙。


 ドミナ・マウ関連の情報はこの程度か。


 次は……。


 弓将かな。あれは早めに潰しておかないと厄介だ。


 「ファウスト君。お客さんが来たみたいだよぉ」

 「あっ、ファンさんのとこの魔術師かな。何人です?」

 「三人だよぉ」

 「どこにいますか?」

 「壁の上に立ってるみたい」

 「わかりました。迎えに行きます」


 ヨキとリズは療養、なにかあってもマクレリアには戦わせたくないから、護衛としてゴマは置いていくか。


 「敵の可能性もあるので一応武装して行く。マンデイ、ハク、マグちゃん、行ける?」

 「うん」「いけル」『rすguvo』

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