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初恋成就  作者: ayaペンギン


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1/3

四季を巡る初恋物語です。

毎日21時に投稿します。5話完結予定です。よろしくお願いします。

はぁ…、今日もあの騎士様とお話しできるかな…

確かお名前はレオン様だったかしら。


考え事をして手が止まってしまった私の髪を春の穏やかな風がふわふわと揺らした。


レオン様は王都の治安維持を主な仕事とする騎士隊に所属している騎士様だ。

燃えるような赤髪に、ワインレッドの瞳。

とくにあの甘く響く低音の声が印象的で忘れられない。


私の最近の楽しみといえば、そんなレオン様とお話しすること。

彼は街の巡回で三日に一度のペースでこの道を通る。

たまに町の様子を尋ねてくれる以外で接点がないのが少し寂しい。


今日はレオン様が巡回に来る日だ。

私は実家の花屋の店先に座って、日課の編み物をしながらそわそわとレオン様を待っていた。


「アンナー!これ包んでちょうだい。」

店内から母に呼ばれた私は、

「はーい!」

と答え、編みかけのストールを椅子に置いて、急いで店内へ戻った。


店には色鮮やかなチューリップなどの花たちが並んでいる。

店内へ戻った私にお客様として来店していたパン屋のおかみさんが声を掛ける。

「アンナちゃん、大好きな騎士様には今日は会えたのかい?」

その言葉に私は思わず顔が赤くなるのを感じた。

「まだです…って、もう!そんなんじゃないですってば!」

私はそう返しながら店のカウンターに乗せられた花たちを包んでいく。


「もうこの子ったら。まだ自覚がないんですよ。」

そんな私の態度に母は少し呆れたように言った。

「あら。そうなの。若いっていいわね。」

ふふふと笑いながら、母とパン屋のおかみさんが微笑みあっている。


自覚…?

なんのことだろうか?

私は二人の会話を不思議に思いながら、作業の手を進める。

そして、お会計まで済ませた商品とともにお客様を店先に送り出した。

「またお越しくださいませー」

私は元気よく声を掛ける。


「よぉ。いつも元気がいいな。」

そんな私の耳に、不意に甘く響く声が飛び込んできた。


あ!レオン様だ!

すぐに分かった私は声が聞こえた方向へぱっと顔を向けた。

「こんにちは、騎士様。今日はとってもいい天気ですねっ」

声を掛けられた嬉しさに、ついつい息が弾む。


「あぁ。そうだな。ところで、何か異状はないか?」

「はいっ!今日もこの辺りは平和ですよ。」

レオン様とはいつもこんな会話しかできていない。


今日はもう少し会話できないだろうか。

必死に考えたけれど、名案は思い浮かばなかった。


「そうか。それじゃあ…」

「あ、熱くはありませんか?冷たいお茶お持ちしましょうか?」

去りかけたレオン様に、私は慌てて声を掛けた。


慌てすぎたせいで噛んだ上に早口になってしまった…。

恥ずかしい…私は顔から火が出そうだった。


そんな私にレオン様は、

「ちょっと落ち着けって…水分補給は自分で出来る。気持ちだけもらっとくよ、ありがとう。」

と微笑み返してくれた。


あー…やってしまった。絶対呆れられているに違いない。


「あの、引き留めてすいません…。」

私は穴があったら入りたい…と思いながらレオン様に謝罪する。

そんな私の様子に少し苦笑いをしたレオン様は、

「気にするな。また来るよ。」

と、私に背を向け去って行ってしまった。


「はぁ…どうしよう。変な子だと思われてしまったかも。」

去っていくレオン様の大きな背を見つめながら無意識に言葉が漏れた。


私がいったん店内に戻ると、常連客が店に入ってきた。


「いらっしゃいませ!靴屋のおじさま。今日も奥様に贈り物ですか?」

「おや?アンナちゃん、元気がないね。騎士様と何かあったのかい?」

私はいつも通り元気に挨拶したつもりだったが、なぜか心配の声が返ってきた。


その言葉にハッとした私は、

「き、騎士様は関係ありません!いつも通りですよ!」

と必死にごまかした。


「そうかい?じゃぁ今日も妻に送るお花を見繕っておくれ。」

「はい!確か、奥様は赤系の色がお好きでしたよね…」

と、いつも通りの会話に戻ってほっとした私は、お客様の要望に応えて花をいくつか手に取った。


あ、この花の色、レオン様の瞳の色に似ているかも…

こっちの花は髪色にそっくり…


カウンターで花を包装しながら、ついついレオン様のことを考えてしまう。

仕事に集中できていない私に天罰が下ったのか、最後のリボンを結ぶときに手が滑る。

アッと思った時にはもう、きれいに包んだはずの包装の一部が破れていた。


「ごめんなさい!すぐに包みなおしますので。」

「若いっていいねぇ。ゆっくりで大丈夫だよ。」

慌てる私に、優しい声が返ってきた。


しかし、若いっていいねぇっていったい何のことだろうか…?


その後、すぐに商品を包みなおした私は無事接客を終えた。


―――――


その日の夕食後、不意に今日の出来事がフラッシュバックした。

私は最近の自分がわからなさ過ぎて困惑していた。


どうしてレオン様のことを考えると、一喜一憂してしまうのだろう。

ドキドキしたり、泣きたくなったり感情がいつも以上に忙しい。

なんでそうなってしまったのか、私には理解ができないでいた。


「はぁ……。」

思わず吐いたため息。

「ため息なんてついてどうしたの?何かあった?」

近くにいた母が私を心配そうにみる。

その優しい母のまなざしと声に少し気持ちが落ち着いた。


母に相談するなら今日かもしれない。

今日は父が不在だ。

近所の店主たちが集まってお酒を飲んでいるらしい。

が、今はそれどころじゃない。


私は意を決して、母に最近のことを相談してみることにした。

「ねぇ、お母さん。私最近、騎士様のことばっかり考えてしまうの。ドキドキしたり泣きたくなったり…私ってどうしちゃったんだろう?」

真剣に聞く私に母は嬉し気に目を細めた。

「今日も話しかけられていたわね。話しかけられてどんな気持ちになったの?」

そう聞かれて私は昼間の出来事を思い出す。

「体が熱くなってドキドキしたの。でも、騎士様が去ってしまうと思ったら急に寂しくなって…それで、引き留めたかったけれど、失敗してしまって…。それがとても恥ずかしかったわ。」

「そうなのね。」

母はそう言って微笑んだ後、数秒黙って私に爆弾を投下した。

「アンナ。それは恋だわ。」


こ、恋!?

はっきりとそう言い切る母に私は驚いた。


「そんな!私そんなつもりじゃ…」

私は思わず立ち上がる。

「ふふふ。みんな最初はそう言うの。初めての恋に戸惑う気持ちはよく分かるわ。でも、とても素敵なことよ。アンナに初恋が来て、お母さん嬉しいわ。」

そんな私を微笑まし気に見つめて、母が私の肩を撫でる。


これが初恋…?

言われてみればそうかもしれない…。

それに…母がこんなに喜んでくれているんだから、きっとそうなのだろう。


初恋を自覚した瞬間、私の体はポカポカと暖かくなった。

そして今まで以上にレオン様に会いたいという気持ちが募っていった。


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