第7話目 真夏の夜の夢! 浴衣姿のメイド隊と秘密の肝試し
第7話:真夏の夜の夢! 浴衣姿のメイド隊と秘密の肝試し
海でのバカンスから数日。
僕の肌に残っていた日焼けのヒリヒリとした痛みは、メイドたちの献身的なスキンケア(という名の、全身を隅々まで塗り固めるクリーム奉仕)によって、いつの間にか滑らかな質感へと変わっていた。
「……それにしても、今夜は一段と静かだね」
僕は、広大な屋敷の中庭に面した縁側に座り、夜空を見上げていた。
今日は日本の伝統的な夏を楽しもうという結衣の提案で、屋敷中の明かりが落とされ、庭にはいくつもの竹灯籠が置かれている。
「お待たせいたしました、ご主人様。……いかがでしょうか?」
背後から聞こえた結衣の声に振り返り、僕は思わず持っていた団扇を落としそうになった。
そこには、普段のメイド服を脱ぎ捨て、色鮮やかな浴衣を纏った10人の美女たちが並んでいた。
「……わぁ。みんな、すごく綺麗だ」
「ふふ、見惚れていただけて光栄ですわ。ご主人様」
結衣は、深い紺地に白百合が描かれた、落ち着きつつも艶やかな浴衣。
髪をアップにまとめ、白いうなじが月光に照らされて美しく輝いている。
「健太様ぁ~! 陽葵の浴衣、可愛いですかなぁ?」
陽葵は、彼女の明るい性格にぴったりの、向日葵があしらわれた黄色の浴衣。
だが、帯で締められているせいか、その豊かな胸元が普段以上に強調され、はち切れんばかりの曲線を描いている。
「莉奈はピンク! 金魚さんが泳いでるんだよ~。健太様、一緒に金魚すくいしたくなっちゃう?」
莉奈は可愛らしい桃色の浴衣で、裾を少し短めに着こなして細い足首を覗かせている。
志保は、薄紫の幾何学模様が描かれたシックな浴衣で、手には風情のある扇子。
「……。日本の夏は、静寂を楽しむものですが。……今夜は、少し趣向を変えてみませんか?」
志保が眼鏡の奥で悪戯っぽく瞳を光らせた。
「趣向を変える? 何をするの?」
「ふふ、それは……『肝試し』でございますわ」
結衣がそう言った瞬間、庭の竹灯籠の火が、ふっと消えた。
「えっ……!?」
「ルールは簡単です。この広いお屋敷の奥にある『離れの茶室』まで、二人一組で向かっていただきます。そこに置いてあるお札を持ち帰ったペアが、勝者。……そして勝者には、ご主人様から『特別な愛の言葉』をいただける……というのはいかがでしょう?」
「ええっ!? 僕がペアを組むんじゃないの?」
「もちろん、ご主人様は必ずどなたかのパートナーになっていただきます。……さあ、誰と行きたいか、指名していただけますか?」
結衣の言葉が終わるか終わらないかのうちに、背後から激しい足音が響いた。
「ちょっと待ったぁ!! 健太とペアを組むのは、この私に決まってるでしょ!!」
暗闇から飛び出してきたのは、これまた見事な朝顔柄の浴衣を着た美波だった。
彼女は自分の番だと言わんばかりに、僕の左腕をガシッと掴む。
「美波! お前、浴衣なんて持ってたのか?」
「ふん、この日のために新調したのよ! ほら健太、行くわよ! こんな怪しいメイドたちに、あんたを暗闇で連れ回させるわけにいかないんだから!」
「あら、美波様。……ご主人様のパートナーを決めるのは、ご主人様ご自身ですわ」
結衣が冷たく、けれど確かな独占欲を込めて僕の右腕を抱き寄せる。
浴衣越しに伝わる、結衣のしなやかな体のライン。
「健太様ぁ……陽葵、暗いところ、とっても怖いんですぅ……。健太様に守ってもらわないと、陽葵、一歩も歩けません……っ」
陽葵が僕の正面からしがみついてきた。
柔らかい感触が、僕の腹部にダイレクトに伝わる。
「陽葵、お前……怖がってる割には、力が強すぎないか?」
「えへへ、これは『怖さ』じゃなくて『愛の力』なんですぅ」
結局、誰か一人を選ぶことができず、僕は「僕、美波、陽葵、志保、結衣」という、もはや二人一組でもなんでもない大所帯で、暗い廊下を進むことになった。
「……静かだね。本当に自分の家じゃないみたいだ」
長い廊下は、月の光がわずかに差し込むだけで、足元も覚束ない。
すると、どこからか『ヒタッ……ヒタッ……』という足音が聞こえてきた。
「ひゃあああ!! 出たぁ!!」
陽葵が叫び声を上げ、僕の首に全力で抱きついてきた。
「ぐ、苦しい! 陽葵、これ、多分誰か他のメイドが仕掛けてるんだよ!」
「ダメですぅ! 幽霊さんです! 健太様、陽葵を離さないでくださいね!?」
「……。案外、本物かもしれませんよ? この屋敷は歴史がありますから」
志保が耳元で冷たく囁く。彼女は僕の背中にぴったりと張り付き、細い指先で僕の胸元をなぞっている。
「志保、脅かさないでよ……」
「ふふ、怖がっている健太様も素敵です。……あ、ほら。あそこに白い影が」
志保が指差した先には、確かに白い着物のようなものが揺れている。
「きゃああああ!!」
今度は美波が僕の左腕を全力で抱きしめた。
彼女は気が強い癖に、こういうオカルト系には滅法弱いのだ。
「健太! 絶対、絶対離さないでよ! あんたが私を守るのよ! わかった!?」
「わ、わかったから……腕、痛いよ美波!」
左右を美女たちにガッチリと固められ、僕はもはや歩く要塞のようになっていた。
メイド長の結衣だけは、涼しい顔で提灯を持ち、僕たちの先頭を歩いている。
「ご主人様。……どうやら、他のメイドたちがかなり気合を入れて仕掛けを作っているようですわ。……ほら、あちらをご覧ください」
結衣が提灯を向けると、そこには莉奈が白装束を着て、頭に三角の布をつけた状態で「恨めしや~」とポーズをとっていた。
「莉奈……。バレバレだよ」
「えー、健太様、もっと驚いてよ! これ、結構準備大変だったんだから!」
莉奈がぷくーっと頬を膨らませて近づいてくる。
だが、その時。
『ヒュ~~……ドロドロ……』
本物の風のような、不気味な音が廊下を駆け抜けた。
「……今のは莉奈じゃないよね?」
「え? 莉奈、そんな音出してないよ?」
一瞬、全員が凍りついた。
次の瞬間、天井から何かがバサバサと降りてきた。
「ぎゃあああああああ!!!」
美波と陽葵の絶叫がシンクロした。
二人は競うように僕の体に潜り込もうとし、僕はその重みでバランスを崩して、畳の上に倒れ込んだ。
「うわっ……!」
畳の感触。そして、僕の上に重なるように倒れてきた、複数の女性たちの柔らかさと温もり。
「……。ふふ、ご主人様。……暗闇に乗じて、こんなにたくさんの方を押し倒すなんて……。隅に置けませんね」
志保が僕の耳たぶを甘噛みしながら、低く囁いた。
彼女は僕の下敷きになる形で、僕を優しく受け止めている。
「ち、違うんだ、今のは不可抗力で……っ」
「いいんです、ご主人様。……このまま、ここをゴールにしてしまいませんか?」
結衣が僕の顔に手を添え、至近距離で見つめてくる。
暗闇の中、彼女の瞳だけが濡れたように輝いている。
「健太様……陽葵、もう怖くて動けません。……ここで、陽葵を温めてください……」
陽葵が僕の胸に顔を埋め、浴衣の帯を緩めるような仕草を見せた。
「ちょっと!! 何してんのよあんたたち!! どきなさい、健太は私の……私の……っ」
美波も僕の腕を掴んだまま離さないが、その顔は真っ赤で、怒っているのか照れているのかわからない。
暗い廊下、重なり合う浴衣の美女たち。
肌を刺すような熱気と、しなやかな肌の感触。
肝試しの恐怖なんて、どこかへ吹き飛んでしまった。
あるのは、ただ、彼女たちの甘く重い、底なしの独占欲だけだ。
「……ご主人様。……今夜は、お札なんて必要ありませんわ。……私たちが、貴方の心を捕まえる『お札』になりますから」
結衣の唇が、僕の頬にそっと触れた。
それを合図に、他のメイドたちも、我先にと僕の体に愛を刻みつけようと密着を深めてくる。
「……。健太様、覚悟してくださいね。……真夏の夜の夢は、まだ始まったばかり。……私たちが、貴方を決して、朝まで眠らせませんわ」
志保の妖艶な言葉が、夜の静寂に溶けていった。
結局、お札を取りに行くという目的は完全に忘れ去られ、僕は浴衣のメイドたちに囲まれたまま、朝までその「甘い地獄」を彷徨うことになったのだった。
翌朝、縁側でぐったりと横たわる僕の隣には、満足げに微笑む10人のメイドたちと、なぜか一緒に寝てしまった美波の姿があった。
僕の夏休みは、まだまだ、終わる気配を見せそうにない。
第7話 完
【作者より】応援のお願い
おかげさまで、青春ランキング1位を獲得することができました! 本当にありがとうございます!
健太くんの大学2年生生活は、まだまだ始まったばかりです! 11人の美女たちの重すぎる愛が、今後どのように加速していくのか……。
この溺愛生活をさらに長編で楽しみたいと思ってくださった方は、ぜひ**下部のポイント評価**と、お気に入り登録での応援をお願いします!
皆さんの熱い応援が、メイドたちの次の「ご褒美エピソード」を生み出します……!




