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悪徳領主になるまでの物語  作者: 雄太
第零章 悪徳領主 街へ向かう
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悪徳領主、街へ向かう 2


「定期城下視察」

「はい? ッ!」


セバスはあちゃー口には出さないが思った。いつもはこのようなアラエルに見たさせてはいけない書類は見つかる前に隠して暇な時に出しているが今日はすっかり忘れていた。


「よし! この案件は急を要する。今すぐ行くぞ。セバス準備だ! 忙しくなるぞ!」


 アラエルはいかにも今からいくと言う雰囲気を醸し出し一瞬だが、セバスも乗る気になってしまった。だがすぐに上着を羽織り出て行こうとするアラエルの肩を掴み引き倒す。


「待ってください」

「キャ! 穢される」

「チッ、アラエル様いつもそんな気持ち悪い想像を?」

「な、なんだその目は! チッ? 舌打ちしたなこの野郎」

「はぁ、わかりましたでは城下視察に行きましょう、あのダサい貴族服を着てもらって」

「それだけは嫌だ。裸で街を歩いても良いがそれだけは断固拒否する!」

「そっちは良いんですか⁉︎」


 貴族服とは……先代領主がワイルドタイガーの希少部位で作らせた無駄に硬く冷たく重い恥ずかしい服である。………でその希少部位とはワイルドタイガーのお尻の部分の皮である。つまり尻皮。


 ワイルドタイガーは珍しい生息域を持ってあり、メスの個体はオズワルド領の山脈を越えた先でのみ繁殖をし、繁殖時期以外のオスたちはオズワルド領内の山間部で暮らしている。

 簡単に言うとオズワルド領内にはオスのワイルドタイガーしかいない。

 そしてこれは噂話にしかすぎないが、先代領主を嫌っていた職人の一部が、ワイルドタイガーの股付近、〇〇(文にすると危険な言葉です。想像しないように)の皮を使用したと城下町の職人のK氏は語る。


 アラエルはその噂を少し耳に入れており、あれを着るのを断固拒否している。先日も売り払おうと画策していたが、宰相にあえなく発見され『流石にそれは売り払えません』と言われ、『ならあんたが持ってろ』と言うアラエルの一言により今では宰相の自宅の床下に埋めてあると言われている。が宰相はその事を否定している。


「じゃ、セバスあとはお願い。影武者でも用意しといて、俺は今から馬小屋に行ってシュバルツに乗って城下までカンコウじゃなくて視察しに行ってくるからよろしく、」


 アラエルは呆れて呆然としているセバスの横を抜けるように通って城から影だそうとするがそんな事セバスが許すはずもなく、腕をグッと掴まれる。


「待ってください」

「へ?」


「アラエル様、アラエル様の影武者など存在しません。」


「えッ! 嘘? 本当? それ? はぁ? 普通影武者ぐらい両手で数えるぐらい置いとくでしょ?」


「普通1人いれば十分です。アラエル様は城下町での無銭飲食で顔を覚えられてます。影武者用意したところでバレるでしょ」


 うん、城下町でいつもいつも。犯罪行為スレスレのことをしている悪徳領主の顔など皆覚えているだろう、ついでに悪徳領主が現れたら店を閉めるとか閉めないとか……風の噂だが流れている。


「無銭飲食なんてしてない」

「城付けで食事していると聞きましたが? 先日、城の衛兵と口論になっているところを目撃し、お話を聞いたらアラエルと名乗る、屑が城付けで無銭飲食をしたとその方はおっしゃっておりました。」


 そう、先日60代前後の老人が衛兵と口論になっていた。

 衛兵は市民に手を出すなと厳しく教育されている為、市民に手は出さなかったが、やはり城の前で口論になるのはあまり良くない事である。


 アラエルは思い出す。


「………ぁーあ、あったな、……」 

「なのでアラエル様の影武者など存在してません。そしてその他にも、先ほどのシュバルツが放置されておりました」


 アラエルはあちゃーといった顔でベロを出した。


「あーぁ、忘れてた」


 確かあれは酒飲んで帰って馬に乗って……乗って、そうだ振り落とされたんだ。


「ついでに言うと、何故か城下の飲食店にアラエル様の上着が放置され、質屋に流れてありました。」


 アラエル、重大なことを忘れてた。


「あ! 見ないと思ってたら、そうだったんだ! あはは」


「宰相殿が怒ってましたよ、それも5000ルピアで流れてましたよ」

「それって質屋に流れてた事に怒ってたの? それとも500ルピアが安すぎるって話?」


 セバスの顔がどんどん赤く染まる。ここまで清々しいほどのバカな言い訳をされると何故か怒りが消え……ない。やはり消えない。セバスを思っ切り拳を握り導火線の火が少しずつ短くなってゆく。


「知りませんよッ!! 気になるのであればご自身で宰相殿にお聞きになればよろしいかと」

「絶対怒られるやつじゃん、嫌だ……」

「宰相殿が何故、アラエル様の前に怒鳴りに来なかったかわかります?」

「え? 許してくれたから?」


 ピギッと木の枝が折れるような音がどこからともなく聞こえた。アラエルは首を振りその音の出所を探すがやはりわからない。


「アラエル様を叱っても無駄だと諦めてました、なので奥様は知ってます」

「それだけはやめてくれ」


「知りませんよ、」


 セバスは諦めた。このゴミに何いっても聞く耳を持たない。この廃棄物にはシシリー様から直接言ってもらう必要があると判断した。


「それでは雑貨屋の娘に関係を迫った件については?」

「それは違う。」


 バカでグズでゴミのアラエルでもシシリーという奥さんがいる前で不倫などしたら本当に生き埋めにされかねない。

 セバスもその噂はデマだとわかっているのか驚くほどあっさりと引いた。


「そこは即答するんですか……では、奥様用に買った髪飾りをどこぞの子供にあげた件については?」

「な、何故それを?」


 ここで初めてアラエルの目が泳ぐ。これはアラエル以外知らないはず、たとえ誰かに見られていても。今までのような犯罪行為ではないはず、アラエルの心にはよくわからない感情が生まれる。


「その子供は私の娘です。」


『うそッ!』


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