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悪徳領主になるまでの物語  作者: 雄太
第零章 悪徳領主 街へ向かう
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悪徳領主、街へ向かう 3

 



『マジかよ! 俺セバスの子供に、あげたの?』


 アラエルは平然とした様子で受け答えだがかなり焦っている、まさか自分が手を出した子供がセバスの息子つまり先先代の領主の孫にその汚い手で触って、あわよくば……


「子供いたんだ」


 初耳、こんな、お怒りのセバスに娘がいたんだ、可愛かったな、よかったねパパに似ないて、人生ハッピーだよ!


「悪徳領主に髪飾りもらったと喜んでました」

「よかった、よかった、あの子な転んで大泣きしてたんだよ、だから、プレゼントしてあげたんだ」

「そうですか……」

「金払って」

「嫌です」


 今度はセバスが即答して、話を変えた。


「では、野菜屋の店主からりんごを盗んだ件については?」

「そこまでして金払いたくないのか、その件か、簡単だ、その野菜屋の子供が俺にぶつかってきてな、本当なら打首だろ、だか俺は優しいからな、りんご一個で無かったことにしたんだ」


 これが悪徳領主と言われる所以であるのかもしれない。普通に考えたら優しいと言って良いのかわからないが、まぁ、子供に対して優しいなと思うがこの悪徳領主が言うと、『子供打首にされたくなきゃ、金寄越しな』って感じに聞こえるのかもしれない。


「いくら領主だろうと打首にはしませんが」

「えっ? 本当?」


 何故あんたが知らないセバスは喉の寸前まで出かかったこと場を寸前で止まる。悪徳領主にそんな口聞いても良いのかと思うが実質的な最高権力者はシシリーである。


「……悪徳領主をクビにしましょうと言う意見は毎日のように寄せられてますがそんな簡単に打首にはしません。そもそもそんな簡単に打首にしたら、人口が激減。この街にやってくる商人の足が滞り、物流経済人口全ての観点から見てあり得ません。その代わり人殺しとアラエルの犯行は打首となります」

「俺何にもしてない」


 被疑者はこう供述をし、罪を否定しています。

 だがしかし。セバスが言っていることは間違ってない。アラエルであればもしかしたら打首になる。

 そもそもの話、今までの諸々の最大貴族連中からの好感度はゼロを優に通り過ぎてマイナスとなっている節がある。

 だからこそ貴族たちは市民からの人気が高く貴族からの人気が悪い目の上のたんこぶ状態であるアラエルを消し去りたいと考えている一派がいると言うのは周知の事実である。


 そしてここ最近ではその貴族達が少なからず手を出し始めてきているがオズワルド領で生産される農作物は敵対貴族領でも美味しいと評判であり、関税をアホみたいにかけすぎたせいでその一部貴族達は反乱を起こされ、オズワルド領へ吸収された。


 そのおかげでアラエルの懐は暖かい。

 何故かって? その脂身貴族、かなり圧政を敷いてて、屋敷にじゃぶじゃぶ、金を隠してあったの、ついでに言うと市民にも極秘の脂身貴族専用金鉱山なんてあってなんとそこの埋蔵量は10トン近いとされている。


「はいはい、そうしましょう」


 セバスは諦めたように呟き、ドアから出て行った。その背中は何故俺はこんな奴に仕えているのだろうと語っていた。

 やったね、これで城下であそ、じゃなくて視察が出来る と思ったのだが……




 城下で遊……視察の為にいつも着ている黒を基調とした城内服から適当に選んだ服に着替え、外に出てくると外にはすでに見た事がある背格好の人影が一つ立ちはだかっていた。


「せ、セバス……何故ここに?」


 絶対にここにいるはずもないはずのセバスが胡散臭い燕尾服から私服に着替え、まるで俺を待ち構えるように、待っていた。


「一人で行かせると思いますか?」


 セバスは俺の質問にこう答えた。それはまるで最初から俺をストーキングしていたような口ぶりである。

 怖い


 セバスは来ないはずじゃ? だって俺が出るまえにセバスは……ッ! あの時だ! セバスが俺よりも先に出て行ったあの時着替えに行ったのか………チクショーっ! 

 諦めよう、セバスに何か買って黙ってもらうか。


「ウフン、セバス、ストーキングは良くないと思うぞ」

「いいえ、宰相殿に言われてます。旦那様が一人でどこかに行くようでしたら捕まえるか、その後を尾行してくれと」

「あの宰相……解雇してやる」


 俺はそう硬く固く心に誓った。

 ついでにセバスも解雇してやる代わりにセバスの娘さんを入れてやる。あはは、ザマァ見ろ


「何を考えているのか分かりませんが、許可しません」

「セバスにその権利があるのか?」

「さぁ?……」

「怖い、俺よりも権力を持ってる執事? それってあり?俺はないと思うけどな、なぁセバス」


 アラエルの戯言は無視し、セバスはここにくる前にシシリーから託された言伝をシシリーの口調を真似をしながら話し出したが、全く似てない。


「あっそうだ。奥様から伝言です、『お土産、期待してるわ』との事です」


 そのモノマネを聞いたアラエルは吹き出し、地面に転がりながら爆笑している。


「あはは。何それ、シシリーの真似? 似てねぇー、恥ずかしい、よくそんなことできるな、俺には出来ない、あはははあはは」

「だから嫌だったんですよ! あの悪魔……」

「シシリーの嫌がらせだな、」


 腹を抱えながら起き上がったアラエルはテラスから覗いているシシリーを見つけ、手を振った


「シシリー!」

「お土産よろしくお願いね、」

「嫌だ!」

「死ね」


「辛辣〜」


 シシリーに聞こえないように小さく言ったつもりだったが聞こえていた。

 ここからではよく見えないがシシリーの顔は真っ赤に染まり恐怖を感じさせられるものだろうと思われる?


「聞こえてるわよ!」


「よし! セバス行くぞ、馬で行く?」

「えぇ、馬の方が速いですし安全に迎えるでしょう、馬は預ければ良いかと」


 シシリーの怒鳴り声を背にアラエルは歩き出しセバスがその後をついて来て、何か思い出したのか『そうだ』と呟いた。


「ここから先は敬語はなしで」

「? いつも敬語なんて使ってねぇじゃん、さっきだって死なやら屑やら酷かったと思うけどね」

「さぁ? なんの話でしょう」

「まぁ良いや、いつも通り敬語なしでランディ」


 アラエルにとっては偽名や仮名みないなものかもしれないがセバスに全く通じなかった。


「なんですかそれ?」

「偽名だよ、ゼバスのままじゃまずいだろ、なぁ、ゴリス」


 ゴリス?誰それ。偽名にも程があると思うがセバスは気にしない。


「私そんな名前ではありませんが」

「そうだったのか? 初耳だなクリス」


 わざとだと思いたい。

 アラエルはここまで人の名前を覚えるのが苦手だったのかという疑問が湧いたが、まともに受け取るだけ無駄と判断した。


「偽名はどこ行ったんですか?」

「偽名? ん、クロムだろ?」

「私そもそもセバスという名前ではないので、」

「セバスチャンだな」


 うん、二代目セバスチャン。

 それ以外何があるんだ?


「いいえ、私の本名はアデル・オズワルド、あなたの祖父の孫です、ある種正当な領主です。」


 えっ? 嘘………まぁ知ってたけど、初代セバスが俺の祖父だって事を知った時はもう、感情がおかしくなったが2回目も……ダメそう。


「反乱でも起こすか?」


 俺的にはこの激務を誰かに譲ってやってもいいと思うから、セバスの答えはアラエルにとってはあまりよろしくなかった。


「なんでそんな事を?面倒事はアラエル様がおやりなさってください」


「こういう時だけ敬語、虫がいいな、アデル。よし偽名はアデルにしよう」

「それ本名ですが」


 当たり前だか今の今までセバスの本名など知らなかったアラエルにとってはそれ自体が偽名みたいなものかもしれない。


「誰も知らないし、アデルねぇ、初耳、アデル、語呂悪いな」

「お節介です!」

「悪かったよライアズ」

「もういいですよ」


 セバスは諦めた。この屑領主に何言ったって無駄ということに気がついた。


「さぁ、早く豚箱へ行きましょう」

「馬小屋だろ」

「うん? 出頭では? その付き添いに私が同行する予定では?」

「……俺のことをどう思ってるかわかったよ」

「少なくとも恋愛感情はありません」

「だろうな。あったら怖いよ」

「それで今回は何年ほど豚箱は?」

「まだ一回も入ったことねぇよ!」

「そうでしたってけ? 確か通算で40年ほど居たのでは?」

「人生ほとんどじゃん、何やればそんなに長く豚箱に入れるんだ?」

「分かりました。出頭は拒否と、では馬小屋に向いましょう」



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