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第十六章:帰り道

-1-


両脇に規則正しく並ぶ外灯の真ん中をぼんやりと真っ直ぐな道が続いた。


軽く走っているこの間にも以前のような胸痛を覚える事はない。


良かった…。


弓矢の封印が解けたからだろうか?


ほっとしながらも走り続けたが

しかし

一向にイネ=ノたちの姿が見えてこない。


おかしいなぁ…。


まだそんなには遠くに行っていないはずなのに…。


やがて学園中心にある広場に出た。


巨大な桜の木がシンボルのように闇の中、静かに佇んでいる。


ここから西へ行けば北金倉へ続く道のはずだ。


広場を左に曲がりさらに続く道をたどった。



「イネ=ノー!」

いつまでたっても見つけられないのであたりを見回しながら

名前を叫んでみたが返事はない。


どこかで道を間違えたのだろうか?

建物の数が急に減り道の両脇を雑木林が包み込んだ。


外灯の数も減りかなり薄暗い。


困ったなぁ…。

明日にしたほうがいいだろうか?

正直暗い道をうろうろするのはあまり好きではない。


と、

雑木林の奥で光が生まれるのを見つけた。

ぼんやりと薄黄緑色の光りが静かに灯っている。


なんだろう…。


ちょうどそちらのほうに続く小路を見つけたので

進んでみる。


しかし進んでいる間に光は徐々に弱り

とうとう消えてしまった。

それでも前に進み続けると

光りが灯っていたであろう場所に大きな石像を一つ見つける。


これは…。


射手座の像だ。


半馬人が弓を射るポーズを取っている。


この学園にはあちこちにこうした石像が点在している。


蛇や鷲などの動物や半馬人など神話に関わる石像だ。

最近気がついたのだが

これらは全て星座にあるものばかりだ。


蛇座、鷲座、そして射手座…。

同じ学園の敷地内に蠍座の像があることも知っている。


一体この学園はなんなんだろう…。


イネ=ノや僕、蠍やオリオン…。

そしてこの学園…。


無関係だと思うほうが不自然に思える。


射手座の像を見上げながら考え込んでいると

像の後ろのほうから物音が聞こえ

思わず飛び上がりそうになった。


巨大な像の裏側に回り驚く。


突然複数の人影が現れたからだ。


闇の中で眼が慣れその人物たちの顔が見えた。


「あ…」

入間先輩、

それに…

羽鳥翼が立っていた。


「紫苑君…帰ったんじゃなかったの?」

入間先輩が目を丸くしながら僕をみた。


「あ…えと、ジャケットを返そうと思って…」

と、

そこで足元に横たわる人物に気が付く。



「え?!

イネ=ノ?!」


イネ=ノが石像の下でまるで行き倒れたような格好をして倒れこんでいた。

その傍にバイオリンケースやカバンが散乱している。


「ど…どうしたの?!」


イネ=ノの傍に駆け寄り抱き起こそうとしてそれに気が付く。


あれ…

イネ=ノ…

ジャケットを…着てる?


なんで?


だって…イネ=ノのジャケットは僕が…。


「驚かせてしまったみたいだね」

そういいながら僕の代わりに羽鳥翼がイネ=ノの体を持ち上げた。


「彼はイネ=ノじゃないんだ」


「は?」


「イネ=ノは元の世界に帰ったんだよ。

イネ=ノと入れ替わりで戻ってきたのが、この彼さ。」


言っている意味が分らなかった。


「じゃあ…紫苑君のことは宜しく」

「はい。お気をつけて」

入間が羽鳥翼にお辞儀をして彼を見送る。


イネ=ノの荷物と、僕からジャケットを受取り

イネ=ノを抱えたまま羽鳥翼は雑木林の中に姿を消していった。



「え…ちょ…どういう…事なんですか?」

入間先輩の顔を見上げて言った。


「射川竹人本人が戻ってきたんだ」


「え?」


「急に次元のゆがみが生まれて驚いたんだけど

これでイネ=ノ様も元の世界に戻ることができたし

射川も戻ってこれたんだ。

まずは良しとしなくちゃね。」


「……」

唐突過ぎる。

だって…いつ戻れるか分らないって言ってたから

僕はてっきり…。


「また色々と忙しくなりそうだ。

紫苑君、君にも色々と手伝ってもらうことがあるかもしれないけど

その時は宜しく頼むよ。」


「え?…ああ…はい…僕なんかで役に立てることがあるのなら…。」

よくわからないがとりあえず返事だけはしておいた。



しかし煮え切らない。

僕の頭の中で何か大きな闇が渦巻いていた。



「ねぇ、紫苑君は射川の弟にはもう会ったの?」


「は?」

突然の質問に思わず首をかしげた。


「まだなんだ」

入間が細い笑みを作って見せたのがなんとなく不気味にうつった。


「射川に…弟がいたんですか?」

「君より一つ下だから今は小学6年生だね。」


質問の意図が理解できない。


「他の星たちが動き出す前に一度会っておいたほうがいいよ。」


「…どういうことですか?」


「そのうち分るよ。さ、もう遅いから僕らも帰ろう。」


僕の肩を軽く押すと来た道を戻るように促したので仕方がなくそれに従う。


入間先輩は僕の斜め後ろに立って歩いた。


「あの…聞いてもいいですか?」


「ん?」


「分らない事だらけなんです。

どうしてイネ=ノはこの世界に来る必要があったんですか?

それと…羽鳥翼が何者なのか今一わからないんですが…」



「君はなかなか鋭いね。

そうだね…

イネ=ノ様は羽鳥翼に会うためにこの世界に来たのかもしれない…。

まぁ…偶然たまたまの出来事でこちらの世界に来たのは事実だとしても

僕はそう解釈したいよ。」


入間の答えがさらに謎を深める。


「でも…明人君の事知らなかったのは正直驚いたよ。」


「え?」

また射川の弟の話しだ。


射川に弟がいることなんて知らなかったんだ。

当然面識なんてない。


やがて雑木林を抜け舗装された道へと出ると

入間は僕に背を見せて北金倉方面へゆっくり歩き出した。

が、

数歩歩みを進めた所でぴたりと立ち止まると

もう一度こちらを振り向いた。


「本当に知らないの?」


なんだろう…なんだか…

だんだんとその質問が僕を不愉快にさせていた。

「知りません」

はっきりと言い切った。


すると入間先輩は口の端を少し上げてにやりと笑って見せた。



「明人君…つまり、

蛇使い座守護神は、キク=カに殺されたんだよ」



―蠍座編終わり―


蛇使い座編に続く。



2011/11/15



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