病院
白いカーテンがひらひらとゆれる。
少し肌寒い
少女は目を覚ます。
何度この光景を見たことか
目を開けても真っ暗なのだ。
消毒のにおいとナースの足音がコツコツと聞こえる。
「アリスちゃん、おはよう。良く寝れた?」
優しい声が私の耳に入る。
「ええ、毎日寝れてるわ、起きても真っ暗だもん。夢か現実かもうわからないわ」
「ふふ、でも今日でその包帯ともお別れね」
そう今日でこれともお別れなのだ。
火事で目が見えなくなり、移植手術をし、やっと真っ暗な世界から解放される。
「バイタル、熱、問題なし!じゃあまた来るね!」
「ありがとう」
がちゃがちゃ音をたて去っていくのがわかった。
何年ぶりの景色だろうかと思うような長い時間。
あの日の火事、燃え上がる炎と恐怖だけが身を包み、意識をなくし、気がつくとこの病院にいたのだ。
はっきりと思い出そうとすると目がとても痛む。医師はショックのせいだと言っていた。
っつ、痛い。
やっぱりまだ思い出せないみたい・・・
「大丈夫かい、アリス」
突然聞こえた男の低い声に体がはねる。
「だ、誰ですか」
「怖い思いをしたんだね。大丈夫、大丈夫。」
そういうと男は、手の平をアリスの頭にのせてゆっくりと撫でた。
恐怖で体も口も動かない。
しかし何故だろう。
スッと気持ちが楽になる気がした。
アリスにとって頭を撫でられるのはいつぶりだろうか。
8歳の誕生日以降、撫でられた記憶はない。
心地いい…。
誰かもわからぬ男の人に撫でられる恐怖は、どこかにいってしまうほどに…
「父…さん…。」
不意に口から出た。
「ちがっ!?あ、あなた誰です!?」
アリスは男の手を振りほどいた。
父では無いことは声でわかっていた。
父の声を忘れていたとしてもこの男が父では無いことはわかる。
アリスの父は、ギャンブル依存症で家になんか帰ってこない、病院なんか来るはずがないのだ。
「僕らのアリス、怖がらないで、僕だよ。猫だよ。」
「はい?猫?猫ってニャ~の猫?」
この男は何をいっているだろうか。
声からして男は成人男性。
そんな男が18歳の女の子の頭を勝手に撫で、自分を猫だという。
不審者に違いない。
そう思うとまた声が恐怖で出なくなる。
アリスは懸命にナースコールを探した。
「アリス…僕らのアリス…」
「ひっ…あ、あ、あの、どど、どなたかわかりませんが、もう帰ってください。ナースを呼びますよ。」
やっとみつけた、ナースコールを握りしめて声を振り絞りか細い声で言う。
「君が望むなら」
猫と名乗る男はポツリと呟くと気配が消えた。
「もう、もういない??」
………………………,,,,。
「い、いないわね?」
「何がいないの?」
急に現れた優しい女性の声にアリスはビクッと飛び跳ねる。
「あー、ごめんごめん、びっくりさせちゃったわね、先生が呼んでるから、診察室行くわよ。」
声の主は担当してくれた看護師だ。
心臓をドキドキさせながらアリスはホッとする。
「びっくりした。けど、ナースさんでよかったぁ、もう包帯とれるのかな?!」
アリスは看護師の手引きで車椅子にのり診察室へと向かった。
のんびり更新




