表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
電脳戦線黙示録~War of The Apocalypse~  作者: Win-CL
第四章 波紋

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/74

2018年11月 第2週―①

『どういう意味なんだか……』


 [ダンタリオン]と[シトリー]には、ああ言われたけど――

 結局のところ、自分のすることは変わらない。


 今日もアルマゲドンに向けて、“仕事”に出ようとしていた。

 ――していたのだが。


「はい! グラたん入りましたー!」


 …………


 [ケルベロス]がロビーで待機していた。

 居酒屋みたいなノリで『入りましたー!』と言われても、反応に困る。


「いや、これから“仕事”なんだけど」

「誰かと協力した方が効率いいよねー」


「暗殺だぞ?」


『ねー』じゃない。

 まさか……付いてくる気か?


「他の人にも声をかけてみるから、少し待ってて」


 とか言っている間にも、誰かにメッセージを飛ばしている様子。

 ログインして早々、完全に[ケルベロス]のペースに飲まれていた。


「人の話を聞けよ!」


――――


『…………』


 言葉が出てこない。


 [ケルベロス]、[シトリー]、[括木(くくるぎ)]。

 あっと言う間に、編成された四人パーティ。


『いいじゃない。ボクたちも暇してるし。人数が多い方が楽でしょ』


 同じような台詞をさっき聞いた気がする。

 完全にピクニック気分だった。


『……隠密って言葉の意味わかるか?』


 単独行動が基本。

 良くても、サポートに一人。

 四人で行くなんて聞いたことが無い。


 と言ったところで、聞くはずもなく――


 不安を抱えたまま、“仕事”へと向かうこととなった。


――――


 目的の街に入ってからは“仕事”モード。

 気持ちを切り替えていこうとしたところで――


『この緊張感、なんだかワクワクするね!』


 なぜか変に興奮している[ケルベロス]。

 おい、大丈夫か。そのまま緊張しといてくれ。


『天使と遭遇しない限りは、大人しくしてろよ。……フリじゃないからな』


 過去にいきなり火柱を打ち上げた[ケルベロス]がいるだけに、釘を刺しておく。


『この人ごみの中にも、天使が紛れてるかもしれないんですよね……』


 自然と、[括木(くくるぎ)]の声が小さくなっていく。


 往来に叢雲(むらくも)を出しておくわけにもいかず――

 無防備な状態なために、心もとないのだろう。


『……[シトリー]。どんな感じだ?』


『んー。全然いない。みんな[ルシフェル]に首ったけみたいだねぇ』

『あの可愛さは仕方ないよねー』

『僕はアルマゲドンの最後にちらっと見たぐらいですけど……』


 [ルシフェル]目当てに、天使たちが≪天国≫に集まっているおかげで――

 だいぶ街の守りが薄くなっているらしい。


 導入されて一週間あまりでこれである。

 少なくとも、こちらに対して悪い効果ばかりでもないようだ。


『こんなところで、影響が出てくるのか……』


 人を惹き付ける能力を見れば、確かに天使長の名に相応しい。

 ――が、カリスマとかそういうのとは違う気がするんだが。


『今回はラッキーだったねぇ。楽な仕事じゃない』

『ラッキーで済ませるのもどうかと思うぞ?』


 結局は怪我の功名でしかないのだ。

 しかも、日を追うごとに薄れていく。


 アルマゲドンに勝利して[サタン]が来た時に――

 同じようなことにならないよう、注意をしておく必要があるだろう。


『良くも悪くも、引っ掻き回してくれるな……』


 水面に映る像が、波紋によって歪んでいくように。

 確実に何かが変わり始めていた。


――――


『はい、次の通りを右ー』


『次は左ー』


 [シトリー]のナビゲートをもとに――


 バラバラで、時間差で。

 目的の場所へと向かっている。


 四人が同じ行動をしているだけで、見つかる原因となりかねない。

 注意を払いながら、確実に進んでいた。


『あー、ストーップ』

『天使が来てる? それとも監視タイプ?』


『監視タイプがしっかりいるねぇ。今はまだ気づかれてないけど』

『……どこです?』


『――いた』


 目標である聖人を見下ろせる位置に、それらしいのが。


 この“仕事”を長く続けている自分でも――

 注意深く観察して『だいたいそうだろう』というのが分かるレベル。

 あまり経験のない[括木(くくるぎ)]にとっては、見つけるのは難しいだろう。


 だけどそれも――

 [シトリー]の“眼”にかかれば、一目瞭然。


『どんな天使だろうと、ボクには敵わないからねぇ』と、自慢げである。


『実際、その通りだもんね』


 非戦闘能力ならば、悪魔側に軍配が上がるというのは――

【ケルベロス】の《奥義》の時に証明されていた。


 もちろん、【グラシャ=ラボラス】の《奥義》も例外ではなく。

 今のところ、透明化中でも認識できるのは【シトリー】ぐらいらしい。


『このまま進むと当然見つかっちゃうんだけど?』


 それに、周りに人間(NPC)も大量にいる。

 どうやっても、暗殺とは言えない状態になるのは確かだった。


『……どうするんです?』


 それなら――


『……ギリギリの所から《奥義》を使って、目標に近づく。倒したところで天使が湧いてくるだろうから、逃げ道の確保をしてくれ』


 気づかれてから脱出に移るまでが、この“仕事”の成功率を左右する。

《奥義》が登場してからというもの、何が起きてもおかしくない状況なのだ。


『え゛ー。全員で突っ込めばいいじゃん』

『で、全員が囲まれて一網打尽にされるまでがテンプレだな』


 [ケルベロス]から不満の声が飛んできたので、用意していた言葉を返す。

 別に脳筋というわけではないのは分かっている。

 極力、単独行動を取らせないように、という考えなのだろう。


 これまで独断専行に走って、痛い目をみた自分が悪いのだが――

 流石に、こればかりは、この状況ではどうしようもない。


『この面子ならその可能性は低いと思うけどねぇ。ま、グラたんの“仕事”だから? グラたんのやり方に任せるけどさ』


 無理やりに付いて来て、この言いぐさだった。

 ――が、[シトリー]のこの発言のおかげで[ケルベロス]もしぶしぶ引き下がる。


『[シトリー]まで……』


 申し訳ない気持ちもあるが――


『これ以外に方法がないんだから仕方ないだろ?』


 [シトリー]も同意見だからこそ、フォローに回ってくれたのだろう。


 普段は散々なことを言ってくるが――

 大事な部分ではしっかりバランスを取ってくれる。


 そのあたりに、これまでの付き合いの長さが出ていた。


『……それじゃあ、納得してくれたな?』


 自分一人ならば、万が一囲まれたとしても《奥義》による離脱が可能であること。

 離脱した後は《奥義》のデメリットで身動きが取れなくなるので――

 その間の防御を任せたいことを再度説明する。


『――頼むぞ』


『はいはい。それじゃあ、ヘマしないようにねぇ』

『天使の動きがあれば、叢雲(ムラクモ)送りますから』

『……気を付けてね。グラたん』


「≪Pay (形の) with (ない) blood (恐怖) and life (に怯えろ)≫」


 三人に見守られながら――

 一人、街の奥へと歩を進めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ