表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
電脳戦線黙示録~War of The Apocalypse~  作者: Win-CL
第四章 波紋

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
51/74

2018年11月 第1週

 アルマゲドン後のアップデートも終わり――

 十一月。


 ≪地獄の宮殿(パンデモニウム)


 月が替わってすぐに、いつものメンバーが招集された。

 もちろん内容は、あの[ルシフェル]について。


「結局なんだったんだ? あいつは」


「……可愛かったね」

「こっちが勝ってたら、[サタン]として悪魔陣営(こっち)に来てたんでしょ? 勝ちたかったなぁ、うあー」


 [ケルベロス]が机をバンバンと叩く。


「見たところNPCっぽいけど、一応の扱いは運営と同じということでいいのかな」

「向こうの街で、天使(プレイヤー)に追加バフを付与してるらしいよ。一応、運営としての働きはしているんだと思う」


 公式の掲示板よりも、wikiの方でのやり取りの方が活発らしい。

 [ダンタリオン]が中心となって、話が進んでいく。


「それ以外は何をするでもなく。今は天使陣営の中をウロウロしてるって」

「しばらくの間は、マスコット的な役割の方が大きそうだねー」


 公式からの追加情報も出ておらず――

 天使たちも[ルシフェル]が何かアクションを取るのを待っているらしい。


「画像って、もう公式掲示板に貼ってある感じ?」

「wikiにも何枚か出てるよ。許可を貰った画像だけ上げるけど」


 [ダンタリオン]がそう言うと――

 何枚ものSS(スクリーンショット)が映し出された。


 一枚目。


 厳かな、光に彩られた天国街の風景の中で――

 [ルシフェル]が食料アイテムを、はむはむと頬張っている画像だった。


 写真に写っている様子から察するに、天使達から贈られたのだろう。

 ……餌付けか? 


「うわぁ、可愛い……」


 小動物のような雰囲気に、女性陣が湧きたつ。


 エモーションとは違う、自然な動きが静止画にも関わらず伝わってくる。

 だからこそ、余計に可愛く感じるのだろう。


 二枚目、三枚目と新しい画像が表示されるたびに――

 女性陣から黄色い声――ならぬコメントが飛んでいた。


 …………


 飛び交うハート。

 ぐったりとする男性陣。


「で、こいつは天国(むこう)からは出てこないのか?」

「現界に降りてくる可能性があるか、ってこと?」


 天使の長、という立ち位置である以上――

 現界にいる人間(NPC)にも影響を与える可能性があるかもしれない。

 ひいては、アルマゲドンに関わってくる可能性があるのではないか。

 というのが、[ベリアル]からの意見だった。


「今のところ、降りる必要性は見当たらないよね」

「バフの付与だけだもんねぇ」


 その言い分をそのまま受け取れば――

 後々には降りてくる可能性が出る、ということだ。


「……街で遭遇したら、攻撃した方がいいのか?」


 もともとは“象徴”として扱われていた存在。


 こうして、実際に降り立っているとはいえ――

 攻撃対象(プレイヤー)として扱われるか怪しいものだが……。


 なにしろ情報が少なすぎるのだ。

 いろいろ試してみる必要はあるだろう。


 あくまで、可能性の一つとして挙げてみる。


 …………


「グラたん……」

「うわ。サイコパスだ、サイコパス」


 ……女性陣に睨まれた。

 [シトリー]も便乗して、ここぞとばかりに煽ってくる。


「いや、お前らもレイドボスだのなんだの言ってただろ!」


『みんなでタコ殴り!』みたいな発言が出てなかったか?

 俺の妄想の中の出来事だったのか?


「こうして実物を見ると……ねぇ?」

「斬りかかるのも、躊躇(ためら)われるでしょ」


「ねー」

「ですねぇ」


 一致団結して、異論を唱えてきた。


「……そりゃあ自分だって、抵抗がないわけではないけど」


 良心うんぬんといった面での抵抗もあるにはあるのだが……。

 それよりも、天国・地獄を含めた全ての女性プレイヤーが敵に回る事の方が重大だ。


 試しに口に出してみただけでこれである。


 万が一、実行に移した日には――

 ……袋叩きだろう。間違いなく。


 考えるだけで憂鬱になってきたところで――


 [ベリアル]と[ダンタリオン]が助け舟を出してくれた。


「試してみればいいんじゃね? 運営だって、そういう行動を取る奴がいることぐらい考えてんだろ」

「まだ、どちらも状況が掴めてないだろうし、降りようとしても向こうの天使(プレイヤー)たちが止めるんじゃないかな。NPCとはいえ、意思疎通ができるらしいから」


「こっちだって、[サタン]が現界に降りようとしたら止めるよねぇ? グラたんみたいなのが、こぞって狙ってくるのは分かってるだろうし?」


 そして、余計なひと言を足してくる[シトリー]。


 相変わらず、女性陣のチクチクとした視線が痛い。

 非常に不本意なのだが、ここで謝るしかなかった。


「もういいだろ! 俺が悪かったよ!」


 俺にヘイトを集めても仕方ないだろ!


―――― 


「あぁ、そういえば。今度は名前を募集してるみたい」

「名前?」


 話題は変わって――

 公式サイトでの更新予定の話になっていた。


「うん、あの子(ルシフェル)の」


 どうやら、運営が名前の募集を始めているらしい。

 結果は、十一月(今月)のアルマゲドン後に発表されるようだった。


「いろんな場所で、個人的なアンケートみたいなのをやってたねぇ」

「もちろん、wikiの方でもいろんな候補が上がってるよ」


「[ルシフェル]・[サタン]じゃ駄目なのか?」


 というか――

『我が名は[ルシフェル]』と、しっかり言っていたような気がするんだが。


「やっぱり、陣営を移る度に呼び方変えるのも面倒なんじゃない?」

「どっちでもいい気がするがなぁ……」


 運営はこれを機会に、とことん盛り上げていくつもりらしい。

 ……そのうち、公式からグッズ販売でもされるんじゃなかろうか。


――――


 そして――

 ある程度、話が落ち着いたところで[バアル=ゼブル]が締める。


「ゲームの進行としては何も変わっていないだろう、というのが今回の結論でいいな?」


 全員が肯定の意を示す。


「それでは、これで解散としましょうか」


 女性陣は、そのまま集まって[ルシフェル]談義に花を咲かせるようだった。

 自分は流石に、その華々しい空気に混ざる勇気もないので――

 [ダンタリオン]や[シトリー]と一緒に地獄街へと戻る。


「今のところ、装備の追加なんて話もなさそうだし。大きくバランスは崩れることはないだろうけど……」

「今月のアルマゲドンがどうなることやら、だねぇ」


「勝っても負けても、たかだかマスコットが移動するだけだろ。やることは変わらないさ」


 ここまでやり込んでいると――

 バフで補正をかけられたところで大した意味がない。


 初心者救済のためのアップデートなんて、正直どうでもいい。

 今までと変わらず、全力を尽くすのみだろう。


「“たかだかマスコットが移動するだけ”……それはどうだろうね」

「分かってないなぁ、グラたんは」


「…………?」


 ネットの世界というものを舐めていた、と言うしかないだろう。

 見通しが甘かったと、そう言うしかないだろう。


 全く考えていなかったのだ。

 

 たかだか(・・・・)マスコットが(・・・・・・)移動するだけ(・・・・・・)


 そんな、些細なことでも必死になってしまう――

 単純なプレイヤーばかりなのだということを。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ