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電脳戦線黙示録~War of The Apocalypse~  作者: Win-CL
第三章 新たな能力

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2018年10月 第2週―②

『おいっ!!』


 思わず突っ込みを入れてしまった。


『一対一はどうした。それに、サポート役だから戦わないんじゃなかったのか?』

『そんなこと、グラたんしか言ってないんですけど? それに“[括木(くくるぎ)]サンとの決闘はなし”って言っただけで、戦わないなんて一言もいってないし?』


『き……汚ねぇ……』

『いいじゃない、練習試合なんだし。必ず一対一で戦えると思ったら大間違いだよねぇ』


 どんどん言いくるめられてゆく。

 地味に正論らしいことを言っているのが腹が立つ。


『それに、レベルがカンストしてない[括木(くくるぎ)](サン)と、非戦闘員のボクで丁度いい感じじゃない』

『二対一かぁ……。グラたん頑張ってー』


 向こうは向こうで、気楽なものである。

 自分の試合が終わったからって……。


 結局――

 一対二の形式で決闘を行うこととなった。


『……OK?』

『はい……わかりました』


 どうやら、[シトリー]がなにやら[括木(くくるぎ)]に指示をしているらしい。


 決闘フィールドが展開され――試合が始まった。


叢雲(ムラクモ)――!』


 先程の試合と同じように、開幕で使い魔を呼び出す[括木(くくるぎ)]。

 叢雲(ムラクモ)を前衛に置いて、後援は二人。という形で戦うつもりだろう。


 自分も[ケルベロス]と同じように先手を打とうとしたところで――


『はいはーい。通行止め、通行止め』


 まさかの[シトリー]が、目の前に立ちふさがってくる。


『[シトリー]――!? サポート役ってのはどうなった!?』

『今回は時間稼ぎ要員ということで。叢雲(ムラクモ)ちゃんの強化が終わるまでは相手させてもらうからねぇ』


 今まで――なんだかんだで一緒に行動をしてきた[シトリー]を。

 自分のサポート役だった者を相手取るという、初めての状況。


 全てが予想外の展開。そして――


『――≪The (あぁ、)secret of (気を付けるがい)the (い。この)strength (瞳は君の内側) watch (まで射抜く)reality(ものだから)≫!』


 その[シトリー]の《奥義》が、発動した――


――――


『くそっ、ちょこまかと――』

『“目”の力だけで一位の座に座ってるわけじゃないからねぇ』


 《奥義》の効果でこちらのスキルの状態が筒抜けなのだろう。

 食らえば致命傷となるであろう《影縫い》だけは、キッチリと回避されていた。


 たまに忘れそうになるが、こいつも一位――

 グループの(いただき)に座る実力者の一人。


 一方的に削ってはいるものの――

 《奥義》の効果と合わさって、非常にやりにくい相手となっていた。


『厄介な相手だなおい――!』

『グラたんの真似をしてるだけですけど? まぁ、ボクのは一時的な、付け焼刃な技術だけどねぇ』


『こっちの準備はOKです!』

『ほいほい。それじゃーバトンタッチということで♪』


 [シトリー]が距離を離し始めると共に、[括木(くくるぎ)]の《奥義》が発動した。


「≪who said(魂が君の) that you(四肢を) might take(長く導かん) a rest?(ことを)≫――!」


『――!!』


 足元から湧き上がってくる大量の腕、腕、腕――


 【ビフロンス】の――[括木(くくるぎ)]の《奥義》によって呼び出された亡者たちの腕である。


 急いで飛び退くも――

 あっという間に決闘フィールドの床全体が覆い尽くされてしまう。


 まるでそれは絨毯のように。(すすき)のように。

 一面に、全面に広がっていく。

 逃げ場など無かった。


 わさわさと揺れながら――

 上に乗る者の足を取ろうとしてくる。

 ――取られてしまう。


『ちぃっ!』


 味方には効果がないようで、[シトリー]はそのまま後方へと下がってゆく。


 そして入れ替わりに――

 最大まで強化された叢雲(ムラクモ)が飛び込んできた。


 おいおい、マジか。待ってくれ。

 本格的に一対三の状況に持ち込まれたぞ。


『――くっ!』


 《影縫い》を――攻撃を当てるものの、向こうにひるんだ様子は一切ない。

 そのまま、叢雲(ムラクモ)から強烈な一撃を――


『こいつの攻撃はマズいだろ――!』


 貴重な回避スキル――《月影迅》を使用しての緊急回避。

 亡者の腕による≪バインド(足止め)≫効果も解除される。 

 それと同時に、一気に距離を取った。


 ――が、無敵時間が切れたタイミングを見計らって、[シトリー]からの攻撃が飛んできた。

 再び亡者によって足を取られて――≪バインド(足止め)≫状態。

 その上、次の行動に入るまでの隙を狙われたため、モロにダメージを食らってしまう。


『――! きっつい……!』


 あの状態の叢雲(ムラクモ)から受けるダメージの大きさを考えれば、だいぶ安く済んでいるのだが……それでも厳しいものがあった。


 それでも――まだ勝機はある。


 思うように身動きが取れない状態だが――

 [シトリー]と[括木(くくるぎ)]からの攻撃をかすり傷程度で抑えながら、タイミングの取りにくい叢雲(ムラクモ)の攻撃はスキルによって回避していく。


『形勢逆転だねぇ。このまま削りきって終わりかな?』


 ――二度目の《影縫い》を放つ。

 目標は当然――叢雲(ムラクモ)


 狙い通り、命中して足元に黒い渦が発生した。

 ≪バウンド(足止め)≫効果によって、叢雲(ムラクモ)の動きが鈍る。


『今――!』


「≪Pay (形の) with (ない) blood (恐怖) and life (に怯えろ)≫!」


『消えた――!?』


『こっちに向かってきてる! [括木(くくるぎ)]サン逃げて!』


 [シトリー]の“目”は欺けない、が――[括木(くくるぎ)]は無防備に近い状態。


『ここで逃がすわけにはいかない!』


 一気に勝負を決めに行く!


――――


 HPが0になった[括木(くくるぎ)]が、決闘フィールドの外へ放り出される。

 それに伴い、使い魔である叢雲(むらくも)も消滅した。


 装備が万全ではない、本体(括木)の防御力が薄い状態であることを突いた形だった。


『さぁて……あと一人だな?』


 五秒間の硬直時間に攻撃を受けていたが、所詮はサポート役。

 回避補正がかかっているのもあり、削りきることなど到底できるわけもなく。


…………


『ま、まさか。非戦闘員に対して攻撃を加える気じゃ……』


 散々そっちからも攻撃を加えておいて、今更どの口が言うのか。


『そういえば、これまで散々決闘を断り続けられていたし?』


 丁度いいじゃないか。

 これまでの借りを一気に返すとしよう。


『ひ、人でなし――!』

『お前も悪魔だろうが!』


――――


 結果。


一戦目 [ケルベロス] - [括木(くくるぎ)] 

    〇(圧勝) -    ×

二戦目 [グラシャ=ラボラス] - [括木(くくるぎ)]&[シトリー]

    〇(辛勝) -    ×


 という、なんだかんだで新参者を先輩たちで叩く形に。


『な……なんだか申し訳ないな……』

『いえ、自分としても――第一位の人に、実際に相手をしてもらうのは良い経験になりましたし』


 わりと全力で戦っていた自分たちに対して――

 自分よりも年下の少年は、なかなかに大人な対応をしていた。


『でも……二戦目は惜しかったと思うよ?』

『[括木(くくるぎ)](サン)がレベルも装備も万全だったら勝ってただろうしねぇ』

『一対二なんて、もう絶対にやらないからな!』


 特に[シトリー]が相手にいるときは。


 あれで装備が固かった場合を考えると、絶対に勝てる気がしない。

 恐らく、途中で叢雲(ムラクモ)の≪バウンド≫が切れて一対三に戻るだろう。

 そうなると、完全に敗北である。


『私はそれでも大丈夫だと思うけど。……今度はそれでやってみる?』

『い、いえ……遠慮しときます』


 ……今度は[シトリー]だけが隔離されて、[括木(くくるぎ)]が(なぶ)られる形になるのが目に見えていた。

 【ケルベロス】の第一位という肩書は伊達ではない。


『今日は……ほんとに楽しかったです』

『しばらくは、こんな感じで一緒にレベル上げだね』

『まずは、装備を整えてからだねぇ』


 勝利を掴むことはできなかったが――

 [ケルベロス]と実際に手合せすることができて嬉しかったのだろう。


 特に拗ねるような素振りも見せず、そのままの賑やかな雰囲気で。

 四人で雑談をしながら、[ダンタリオン]の待っている《大図書館》へと戻った。


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