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電脳戦線黙示録~War of The Apocalypse~  作者: Win-CL
第一章 MMORPG『War of The Apocalypse』
3/74

とある天使プレイヤーの視点

☆★☆★☆★☆★


 天使陣営でゲームを始めて三ヶ月。ようやく装備も整ってきて、戦争イベント(アルマゲドン)でもそれなりに活躍できるようになってきた。


 今日は来月に備えての準備期間というわけで、敵の領地に侵略するのは休み。自陣の守りを固めるという名目で、ちょこちょこポイントを貯めている最中ってところ。


 ちょうど自分がいるのは街の出口だった。


 たとえ悪魔陣営の連中が街の中にいるNPCを倒しても、出口まで辿り着くような奴はいない。いたとしても命からがらというのが殆どで、俺はそいつを狩るだけで楽にポイントが稼げるという寸法。だったのだけれど――


「一人そっちにいったぞ!」

「まぁ俺に任せておけって――……ん?」


 仲間内からの連絡で中心の方へ目を向けると、こちらへと走ってくる奴が一人。暗殺ってのは見つからないのが大前提とは聞くけれど、単身でというのは珍しい。……初心者か?


 上下共に黒い色をした装備に身を包み、武器は二刀の短剣。大技を使わずに、素早い動きで相手を翻弄しながら、少しずつ体力を削ってくるタイプ。一対一なら、こちらに分がある。


 けれどHPはそれほど削れていない。というよりも、無傷だった。

 どうやら、よっぽど運が良かったらしい。


「――けど、簡単に外に出れると思うなよ!」


 距離を詰められる前に、辺り一面にダメージを与える強スキルをぶっ放す。周囲の一般NPCも巻き込むけれど、このまま出られたときのデメリットの方がデカいし。


 さっさと吹き飛べ……って……え?


「なんだコイツ……!?」


 間髪入れず反撃してはきたが、大したダメージじゃない。このまま押し切ろうとしたのだけれど――HPが全く減っていなかった。


 攻撃が……通っていない? そんな馬鹿なことがあるか。


 俺よりもレベルや装備が上? そんな馬鹿な。

 防御力がバカ高いとか、回避がバカ高いとか、そういう次元じゃない。


 普通だったら、ダメージがゼロでも表記が出るはずなんだ。――けれど、コイツはそうじゃない。攻撃自体が当たってなくて、ダメージ計算すらそもそも行われていない。


「なんなんだよ……チートか!?」


 一度だけなら見間違いの可能性だってある。けれど、二撃目も、三撃目も。こちらからのダメージはゼロのまま、反撃のスキルが自分のHPをどんどんと削っていた。


「名前はっ!? こいつのユーザー名……――!」


 相手の頭上にあった名前――。

 そこには、グラシャ=ラボラス(・・・・・・・・・)とあった。


「グループ第一位……!? なんだってこんなところに――」


 前回のアルマゲドンではカチ合わなかったし、それほど活躍してなかったのか、イベント中も全く情報が耳に入って来なかった。


 聞いてないぞ、こんな奴がいるだなんて……!


『――――』


 チャンネルを繋げていないので、向こうが何を言っているのかは分からない。ただ淡々と、こちらの攻撃に合わせて無傷のままにカウンターを打ってくる。別にそういう効果があるスキルを使っているわけでもないのに、なんで――!


☆★☆★☆★☆★


「通報してやる……! アカウント削除だろ、あんなの!」


 結局、謎の黒いアバターの[グラシャ=ラボラス]に体力を削り切られてしまった。天使陣営の拠点である天界で、リスポーンしてそうそう毒づいた。近くにいた知り合いのユーザーにも、その話をすると心当たりがあるようだった。


「あぁ……お前も遭ったのか。無駄だよ、皆一度は通った道だ」


 そいつの場合は、戦争イベント(アルマゲドン)で戦ったらしい。自分と同じように、攻撃が全く通らないままに負けてしまって。同じように通報したのだけれど、運営に全く相手にされなかったらしいのだ。


「度々通報されても、消えていないのが証拠だろ? 運営の知り合いだとか根も葉もない噂も出ている中で、ちらっと聞いたんだけどよ……」


 そこからは誰にも聞こえないように、個別チャットでの会話。


「スキルを発動するときに、一瞬だけ無敵状態になるよな」

「まさか……」


 それなら自分にも心当たりがある。だいたい大技を発動する直前には、相手の攻撃によって中断しないよう無敵状態になるのがこのゲームの仕様だ。スキルによって、一瞬程度の違いだけれど長い短いがあるのは確か。


「……そんなこと、いちいち意識して戦いはしないだろ」

「いいや、こちらの攻撃に合わせてスキルを発動しているだけらしい。バグ利用でも、チートでもなく。仕様を活用しているだけだから、運営もノータッチらしいぜ」


 言うのは簡単だけれども、実際にやろうと思ったらどれほど難しいのか。


「そんなの……たかだか一瞬じゃないか。無いのと変わらない」


 自分のスキルの無敵時間を把握して。それでいて、相手のスキルの出の速さまで完璧に理解していないと、とてもじゃないと合わせられない。


 それが実際の戦闘ともなれば。動きを見てから対応した行動を取るのだって、普通に考えて土台不可能だ。そんなの、MMOじゃなくて格闘ゲーム(1フレーム)の世界じゃないか。


 そんなことができる奴が現実にいるだなんて……。


「いったい……どんな化け物なんだよ……」


 画面の向こう側にいる奴は――

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