竪琴の音
銀の髪の赤子が神殿に引き取られてから、十年の時が過ぎた。
赤子は愛らしい少女へと成長し、巫女になるべく見習い生活を送っていた。
そんなある日のこと。
アリアが畑で薬草を摘んでいると、どこからか竪琴の音が聞こえてきた。
(楽士様かしら?)
神殿楽士は普段、神殿の奥庭で練習しているはずだけれど……。
そう思いながらなんとなしに聴いていると、その音は何度も同じ箇所を繰り返していた。
苦手な所を練習しているのだろう。きっと楽士見習いが弾いているのだと思った。
(頑張って!)
楽士と巫女との違いはあれど、同じ見習い同士、なんとなく応援したくなってくる。
アリアは心の中で弾き手に声援を送りながら、薬草を次々と摘んでいった。
そして必要な量を摘み終わって帰ろうとした時、竪琴の音は綺麗な旋律を奏で始めた。
アリアはしばしその音色に聴き惚れた。
そして一曲が終わったところでハッとして、神殿へと足を向けた。
(もっと聴きたかったな……)
後ろ髪を引かれながら、アリアはその場を後にした。
(また聴けるといいな)
そう思いながら、アリアは少し得した気分で神殿の中に入っていった。
風に乗って、竪琴の音が微かに聞こえた。
それはどこか懐かしい気持ちをアリアに抱かせるのだった。