神様への祈り
一年が過ぎ、16歳になったアリアは楽士として頭角を表し始めていた。
そして、春の奉納祭で歌を捧げるダリアの伴奏の一人に選ばれたのだった。
アリアはほかの伴奏者とともに音合わせを行なった。
アリア以外は奉納祭に慣れているので、緊張している様子はなかった。
そして歌姫のダリアがやって来るとアリアの緊張は更に高まったが、
「まずは気を楽にして。奉納祭を楽しみましょう!」
そうダリアが明るく言ってくれたので、アリアは少しだけ肩の力を抜くことができた。
そして最初の音合わせは無事に終了し、その後は個別に細かい指導が入ったが、おおむね順調に進んでいった。
しかし奉納祭が近付くにつれ、アリアの緊張は高まり、些細なミスを連発するようになった。
(どうしよう……奉納祭でも失敗するかもしれない……)
そう思うと余計に緊張して、アリアはうまく音を奏でることができなくなった。
「アリア。神様に捧げるのだから、祈りを込めて弾くんだよ」
楽士の一人がそう言ってくれたので、アリアは自分が皆の足を引っ張っていることを申し訳なく思いながら、どんなことを祈ればいいだろうかと考えた。
そしていつも想うのはただ一人のことだった。
(マリク兄様が無事に旅を続けていますように……)
そう思って弾いたら、自然に力が抜けて失敗がなくなった。
それでアリアは、今までは失敗しないようととばかり思っていたことに気が付いた。
(神様に捧げる歌のための伴奏なのに、私は何をしていたのかしら)
アリアはダリアに申し訳なく思った。
そしてこれからはダリアの歌が神様に届くように祈りながら弾こうと心に決めて、マリクを想う気持ちは心の片隅に追いやるのだった。




