銀の髪の赤子
霜月維苑さまの『赤い糸で結ばれた企画』参加作品です。
とある街の夕暮れ時。
神殿にてダーモットが神へと祈る人々を見守っていると、旅人らしき男が近付いて来て、布に包まれた赤子を突き出して言った。
「神官様。この子を引き取ってもらえませんか」
ダーモットは面食らいながらも旅人に尋ねた。
「この子はあなたの子ですか?」
「いいえ! 街に入る前に森で拾ったんです」
「……捨て子ですか……」
ダーモットは赤子を受け取ってその腕に抱いた。眠る赤子は銀髪で愛らしい顔立ちをしていた。
「この子の身元を表すような物は……?」
ダーモットの問いに、旅人は赤子を包む布を指差した。
「その布に包まれていただけでした」
「そうですか……」
裸の赤子を包んだ布は上等な物のようだったが、身元を示すような物は見当たらなかった。
「じゃあ私はこれで」
そう言うと、旅人はダーモットが呼び止めるよりも早く走り去って行った。
ダーモットは嘆息すると、腕の中の赤子を見た。赤子はいつの間にか目を覚まして、新緑色の瞳が彼の顔を見つめていた。
「おや、目が覚めましたか?」
「あーう」
「大丈夫ですよ。あなたも今日から神の家の子ですからね」
ダーモットは赤子に言いながら、神殿の奥へと足を進めた。
――この赤子はその後アリアと名付けられ、神殿にて育てられることとなるのだった。