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初出勤、そして決闘

読んで頂いてありがとうございます!

お気に入り登録が1000件突破しました。

PVは20万件を突破する事ができました。

今後も楽しんで頂ける作品になるように、頑張ります!


誤字が多いと御指摘を頂いております。なるだけ、誤字が無くなるように書いていきたいと思います(>_<)

修正も早くにおこないます。もうしばらくお待ちください。

フーリ達はロブの屋敷に訪れて、ゆっくりと過ごす事が出来ていた。

王国から発行された、証明書について説明を受けた後は魔術についての質問、または今後の事について簡単に話をして、その日は就寝となった。


ただ気掛かりだったのは、ロブが話していた、国王ベルトランの妹、マチルダについて詳しい話しは避けられてしまった。

ロブが話した、フーリ達にも関係する、という言葉を考えながら、フーリは用意されたベットに入ったのだった。




そして翌日…。

朝早くから起きたフーリは、リグリット、ありすを連れてラヴァナ協会の建物前に来ていた。


何故3人なのか?

謎謎とコイルは、ロブから魔術の講義を今日も受けるために屋敷で留守番をしており、フーリ達3人は協会の登録証を受け取り、そのまま簡単な依頼を受けることにしたので、早朝から協会に着ているのだった。


…また、フーリの頭の上には小さくなったシロが乗っており、ありすの腕の中には同じく小さくなったクロが抱かれていた。…最近、頭の上に重みがあることに違和感を感じなくなったフーリだった…。


早朝にも関わらず、王都では既に商店が店を開け、買い物客が品を見て買い、食堂では遅い朝食を取る傭兵の姿を見ることが出来た。


此方の世界では朝日が登ると同時に活動を始め、日が沈めば家に帰る。それが当たり前で、魔術によって灯りを灯す事も出来るが、一般的ではなく、蝋燭や油といった原始的な灯りしかない。

これらの照明器具は消耗品であり、高価なため貴族など、一部の裕福層が持つ贅沢品だった。


魔術による灯りは、常に魔力を放出する事になるので、短い時間はともかく、長時間灯りを維持するのは一部の例外を除いては魔術による灯りの維持は難しかった。


街の中を行き交う人を見ながら、早起きに馴れていてよかったと、フーリは思いながら、ラヴァナ協会の扉を潜る。


酒場兼受付のある室内では、機能フーリが作った穴が、天井にボコボコと空いており、一応は一部修繕を行った後は見えるが、ほぼ昨日の惨状がそのままの状態で残っていた。


協会の中へ入ってきた、3人を見た者達の反応は2通りだった。フーリ達を見て怯え震える者、震える者達を見て不思議がる者達だ。

前者は協会の受付と、体…特に頭と上半身に包帯などの治療跡がある人間で、後者は昨日の騒動は知っているが、フーリ達の顔を知らない傭兵達だった。


そんな協会の中を進む3人だが、ありすは先日マリーに構って貰った事で、朝から上機嫌で、ニコニコと愛想を振る舞い「おはようございま~す!」と近くの傭兵に声を掛けるが、その度に怪我をしている傭兵達はビクッ!!と震えて顔を青くしていたので、態としているとしか思えない。


受付には昨日と同じ中年男性が座っていたので、その男性に近付くと青い顔をして、フーリ達を迎えた。


「お…おはようござい…ます。

登録証の受け取りですね…しょ…少々お待ちください」


フーリが声を掛けようとすると、男性が先に声を掛けてきて、待つように言うと、受付の奥へ走っていってしまった。


「…フーリ、やり過ぎたのではないか?」


「…そうかもな」


「なう?」


流石に昨日の事を、やり過ぎてしまったかと、リグリットとフーリが反省をして、フーリの頭の上に乗ったシロは不思議そうに首を傾げていた。


ありすが怯える傭兵を「わあ!!」、「がう!!」と驚かせて遊ぶのに飽きたぐらいに、受付の男性と小太りで背の低い、脂汗を浮かべる男と一緒にフーリ達の前に戻ってくると。

小太りの男性は、フーリ達を見ると、額に浮かぶ汗を布で拭いながら頭をペコペコと下げてきた。


「すみません、お待たせいたしました。

 私はこの協会支部を任されているベルシュと申します。

 今回は皆様に、こちらの職員が御迷惑をおかけしてしまい誠に申し訳ありません。

 …登録証の受け渡しをさせて頂きますが、一先ずは私の執務室においで頂けませんでしょうか?」


ペコペコと頭を下げるベルシュに、フーリとリグリットは少し申し訳ない気持ちになってしまい、彼の申し出を受けることにした。

ありすの首根っこを掴んだフーリは案内されるまま、ベルシュの後に続き、協会の受付奥へ入っていく。


その場に残された受付の男性、そして職員と怪我をした傭兵達は、彼らの姿が見えなくなったことで息を吐きだし、胸を撫で下ろすのだった。



ベルシュに案内されたのは、受付奥にある階段から上がった3階にある豪華な部屋だった。…ちなみに途中に通った2階の入り口には、『危険!!崩壊の可能性あり!!立ち入り禁止!!』と書かれた看板が下がっていた。

…丈夫な造りでよかったなぁ、とフーリは思ったが口には出さなかった。


ベルシュに案内されて3階の一室に入ったのだが、そこには先客が1人、既に部屋に備え付けてあるソファーに脚を組んで座っていた。

フーリはその先客に目を向けると、先客は女で、彼女が座っている隣には2本のロングソードが置かれており恰好からして傭兵である事は理解が出来たが、彼女の髪色が気になった。

彼女のベリーショートの髪色は、茶色に近いが、暗い金色とも言える髪の色をしており、金髪と言ってもいい髪色をしていたのだった。


女の格好は動き易そうな軽装ではあるが、身体の急所となる部分を鉄製?の防具で守っており、動きを阻害しない造りになっている。

一目で力よりも素早さで戦いをする者の格好をしており、彼女の薄い青色の眼が興味深くフーリ達を観察したいた。


「…フーリ殿、こちらの方は…」


「おお!!お前がフーリか!!」


見つめ合って、お互いの事を観察していたフーリへベルシュが声をかけようとすると、それを女が遮り、喜色を浮かべた顔になると、2本のロングソードを持ってソファーから立つ。


「話は聞いている、昨日はここの傭兵を1人で倒してしまったそうだな?」


「…誰だよお前」


なんとなく昨日、ロブが話した事を思いだしながらフーリは女へ質問した。


「おお!すまん、すまん。

 待ち遠しくてな、話を聞いた昨日の晩からここで待たせて貰っていたのだ。

 …私はマチルダ=シュテインという者だ。

 お互い名乗った所で…私と勝負しろ!!」


「いや、なんで勝負だよ。てか俺は名乗ってねぇ!!」


女の…マチルダのいきなりの勝負宣言で、ツッコミを入れるフーリ。リグリットは無言で二人を見ており、ありすは面白そうに事の成り行きを見ている。


「いいじゃん、ケンちゃん。

 勝負してあげようよ」


「おい、ありす!余計な事言ってんじゃねぇ…おい!!お前も何ここで剣を抜こうとしてやがる!?

 鞘に戻せ!!…そんな何故って顔しなくていいから、さっさと鞘に戻せ!!」


ありすの一言に注意をすると、マチルダは腰に佩いたロングソードを器用に両手で抜こうとしており、実際に半分程、刀身が鞘から出ている。

それを見たフーリが止めると、さも不思議そうな顔をしてマチルダはフーリを見ていた。


「何故だ?勝負するだろ?

 話を聞いたお前の強さならば勝負して当然だ」


「おい…なんだ?そのヘンテコ理論は!!お前はアホか!?

 だいたい、こんな部屋の中で勝負なんか出来るか!!」


「…フーリ、昨日のお前はどうなんだ?」


鞘に刀身を戻しながら不思議そうな顔をして聞いて来るマチルダに、フーリが答えるが、その答えには説得力がなく、リグリットに昨日の事を言われて「うっ…」と言い詰まってしまった。


「そうか!では、場所があれば勝負してくれるのだな?

 …おい!支部長!!訓練所を借りるぞ!!」


フーリの言葉に理解を示したマチルダは少し考えた後、支部長のベルシュへ満面の笑顔でお願い(ロングソードの柄を握って)すると、ベルシュは凄い勢いで頭を上下させた。


「よし!!では行くぞ!!」


そう言ってフーリの襟首を掴むと連れて行こうとするマチルダ。それにフールは抵抗しようとしていたが、視界の端に映ったベルシュの顔が泣きそうになっており、首を横に凄い勢いで振っているのを見ると、抵抗する気が失せてしまった。


そのままフーリを引きずるマチルダ、そしてその2人の後を追って着いていくありす。それら3人を見送りながらリグリットは呟く。


「"アレ"が王の妹か、…なんとなく理由が分かったな…」


その呟きを聞いたベルシュは申し訳ない顔をして、汗を拭き拭き答える。


「申し訳ありません…、どうしてもお会いになると言って、聞いて頂く事が出来なく…。

 あの方は"強い物"が何よりも好きで…」


ベルシュの説明をリグリットは黙って聞いたが、どうやらこの国の王の妹であるマチルダは、相当な戦闘狂であるらしく、傭兵として諸侯を転々とし、またある時は強力な魔物が生息する魔境まで出向き、とにかく戦う事が大好きな人間なのだとか。

そのため、国王…ベルトランは「落ち着け!!」という意味を込めて、近衛隊隊長という役職、そして女性ながらも子爵位を持たせたらしい。

この事について他の貴族が反発するかと思われたが、彼女の奇行には、貴族達も頭を抱えていたので賛同したそうだ。

そこまで説明を聞いたリグリットはベルシュへ礼を言ってからフーリ達を追って部屋を出たのだった。


後にはベルシュが部屋に1人、溜息をついて自分の執務用の椅子へ深く腰掛けていた。…のだが。

そこへ先ほど部屋を出たリグリットが戻って来た。


「どっ、どうかなされましたか?」


「訓練所はどこだ?」


リグリットの言葉にベルシュは、詳しく、そして丁寧に訓練所までの道順を教えるのだった。




マチルダに連れられて来た訓練所とは、ラヴァナ協会の地下に存在する広い空間で、軽く見積もってもサッカー場1面分ほどあり、フーリはこんな空間を柱もなく造って平気なのか?とも思ったが、その疑問に答えてくれる者はこの場にはいない。


地下だと言うのにこの訓練所は一定の灯りがともされており、殆ど外と変わらない明るさを保っている。

魔術による灯りを維持するのは難しいが一部の例外がある。それは宝石などの特殊な鉱石を用いて魔術式を内蔵させ、宝石に宿る魔力を消費して魔術を発動させる事が出来るのだ。

これが何故一般では使われないのか?それは宝石や鉱石の価格が高く、また魔力を消費した宝石などは輝きを失ってしまい、二度と魔力を帯びる事がない、ただの石になってしまうのだ。


宝石、鉱石に備蓄される魔力量は、質や大きさなどで変化し、質が良く大きさも十分にあった場合には数十年は魔力を発し、魔術を使う事が出来る。


魔術士などは宝石の魔力を使い、魔術の威力を底上げしたり、自分の魔力の補助として使う者もいるようだが、それは一定の金を持った貴族や富豪の魔術士であり、王族と関係がある魔術士だった。


また貴族などは自分の財力を誇示する為に、屋敷の灯りを全て宝石による魔力で灯している者もいる。他には王族が暮らす城、そしてラヴァナ協会などの機関では当り前のように使用されていた。


そんな珍しい、また高価な照明が眼の前にあるとは気が付かない、知らないフーリは自分に相対している女へ視線を向ける。


マチルダは腰に佩いていた2本のロングソードを既に抜いており、器用に両手に持ったロングソードをクルクルと回している。

そして彼女の表情は、わくわくとした、まるで新しいおもちゃを見付けた子供の様な表情をしていた。


「早く構えろ、私は何時でもいいぞ!」


そう言って回していたロングソードをしっかりと持ち、腰を屈めて構える。

フーリはその姿を見て、獲物に飛びかかろうとして構える猫科の動物のようだと思った。

そして、自分の頭に乗っている本物の猫(?)の首を掴むとヒョイと地面に下ろした。少々扱いが雑だった事にシロは不機嫌になり「なぁう!」と抗議の鳴き声を上げたが、フーリの姿をチラッと見てから、少し離れた場所で観戦しているありすの元へ、トテトテと歩いて行く。


ちなみにではあるが、今この訓練所には3人の他にも数人の傭兵がいた、皆マチルダの姿を見るなり、そそくさと壁際に移動して観戦している。

どうやらここにいた傭兵はフーリ達の事を知らないらしく、マチルダの餌食になったことでフーリに同情の視線を送っていた。


シロが離れた事を確認したフーリは、両手に武骨な手甲を出現させる。

いきなり何もなかった所に出現した手甲を見てギャラリーとなった傭兵から疑問の声が上がるが、マチルダの真剣な表情と、フーリの雰囲気から直ぐに声は無くなる。


無言で見つめ合うフーリとマチルダ。その二人に近づいたありすはクロを抱いていた片手を離すと、頭上に上げる。


「じゃあ…始めるよ?よ~~~~い…始め!!」


ありすが二人に声を掛けて、腕を振り下ろす。

開始の合図を告げた瞬間。

マチルダが消える。


消えると言うのは正確ではなく、消えるたように見えただけで、実際には眼で追う事が出来ない速度でフーリ目掛け突撃してきたのだった。

傭兵達はそのマチルダの姿を捉える事が出来なかったが、フーリは違う。

しっかりとマチルダの姿を捉えていた。


「(へぇ…結構速いな)」


この世界でも最高位に近いスピードを見たフーリの感想はその程度だった。


マチルダは。右の剣でフーリを逆袈裟に斬り掛かる、確りと剣の軌道を読み、 躱すが次の斬撃が回避して動きが止まったフーリの身体に迫る。

右の剣が過ぎたあとに、直ぐ左の剣が右の剣と同じように逆袈裟で放たれていた。

御丁寧にも、確りと軌道は変えてフーリが避けるのを見越したような斬撃を、フーリは難なく後に跳ぶことで避ける。


一瞬の内に2撃を放つマチルダ、そしてその攻撃を難なく避けてみせるフーリ。

フーリが後に跳んだ事で、2人の間にはまた空間が生まれる。


一瞬の出来事、そしてあまりの速さで、傭兵達には何が起きたのか理解出来なかった。


この場で2人の動きを見ることが出来たのは、ありすだ…「なう!!」もとい、ありすとシロとクロの三者だけ。


フーリは直ぐに追撃が来ると思い構えたが、マチルダは剣を振り抜いた姿のまま、頭を下げ状態で小刻みに震えていた。


「(なんか…嫌な予感がする)」


そんなマチルダの様子を見たフーリは自分の勘が当たっている事に気が付く。


「凄いぞ!

今まで、あの一撃を放って生きていたのは人間ではお前が初めてだ!!」


「おい!必殺か!?今のは必殺だったのか!?」


嫌な予感は当たっていた、マチルダが放った斬撃は必殺の技だったのだ。

…自分がしてきた事は忘れてツッコミを入れてしまうフーリ。

だが、マチルダはそんなフーリを無視して、爛々と眼を輝かせている。


「よし!ここから本気を出すぞ?いいな?」


わくわくと音が聞こえそうなマチルダは2本のロングソードで空を切り払うと…。


「風よ我に力を!炎よ我に力を!」


そう言った瞬間、2本のロングソードそれぞれから緑の魔術式と赤の魔術式が同時に出現する、魔術式が消えた後には…風を纏う剣と炎を纏う剣が出来上がっていた。

フーリはその2つの剣を見て顔を引き攣らせるが、マチルダはそんな彼を気にすることなく、また先程と同じように腰を落として構える。


「さあ!!私を楽しませろ!!」


マチルダは風と炎を纏い、爛々と輝く笑顔で、フーリに襲い掛かるのだった。

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