ある日森の中
OFUSE始めました。
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眩しいくらいの光に飲み込まれて数秒。今度は真っ暗の空間にやってきた。
「……部屋じゃないな。空気が違う。ちょっと湿気が感じるが……。まあいいや。暗視の魔法を使うか」
暗闇に陥った時、明かりを点けるか、暗視の魔法を使うのかなんだけど、選択肢としては、暗視の方が良い。これはフィールドでの話ではあるんだけど、明かりを点けると、虫系の魔物を呼び寄せたりすることがある。だから、暗視の方が都合がいい。暗視は光の全くない所では無意味になるが、僅かでも光があるのであれば、見えるようになるからな。
「……森? 何でだ? 錬金術をしていて、森に飛ばされるとか意味が解らん。運営に報告案件だな……」
そうやって、運営にバグを報告しようと思ったんだけど、UIが開かない。
「あれ? UIが死んでる? そんな訳がない。そんなバグなんて聞いてないが……。仕方が無いか。強制ログアウトのコードを入れるか」
何らかのバグで、ログアウトが出来ない時、任意の方法でゲームから出られるようにする処置だ。俺の場合は特定の動作を行う事によって、強制的にログアウトにさせる事が出来るようになっている。これは、ゲームに閉じ込められるという恐怖の体験をした人によって、裁判にまでなったからな。強制ログアウトの方法をヘッドセットに覚えさせて、出来るようにしておくと言うのが法律で決まっている。
「あれ? ダメだ。何で受け付けてくれないんだ? 強制ログアウトが出来ないとか、……ヤバいんじゃないか?」
過去に、ゲームにログインしすぎて、栄養失調になった人も居る。だから、連続で8時間以上のログインが確認されたときには、強制的にログアウトをする様になっているはずである。……そんな事にはなった事は無いが、後1時間もしない内に、ログアウトになるとは思う。
今日はある程度の素材が集まる予定で動いていたからな。この錬金術を終わらせたら、ゲームを終える予定ではあった。だから、心配しないでも後1時間で強制的にログアウトになるはず。……嫌な予感がするけどな。
「……さて、こんな所でデスペナを食らうのもなんだからな。まずは安全の確保。折角だから、採取も出来るならしておこうか。何か採取物はっと」
切り替え大事。これだけ暗い森だ。候補は幾つかあるが、ゲームの中であるという事を考えると、マップは10程に絞られてくる。そして、こういう場所には、闇属性の素材が生えている場合が多い。質にも因るが、今回消費した素材を補充できるかもしれない。考え方次第だ。失敗した以上は、何らかの補填をしないといけないからな。
そんな訳で、採取をしていたんだけど、余り品質が良くない様に感じた。……レベル帯が低い採取地なんじゃないかな。まだ魔物とはエンカウントしていないが、恐らくレベル40から60程度の場所だろう。
今の俺は、錬金術師250レベル。カンストしている。これなら死ぬことは無いんじゃないかなとは思う。闇属性の素材も、ある程度は欲しい所だし、このまま採取をしていれば良いんじゃないかな。
「ただ、出口には向かいたい。変な場所でログアウトしても困るだけだしな……。強制的に町に巻き戻されるくらいのバグなら、そもそも採取物は無駄になるし、巻き戻しされないって考えた方が無難だろうな」
ただまあ、冒険に来たわけでも無い。当然だが、帰り道は解らない。マップはあるが、この場所のマップというのは存在しない。木も伐り倒したりするからなあ。道なんて存在しないし。
「……まあ、適正レベルよりも低いから、安心して行動が出来るのは良いよな。それに、もう少しで1時間が経つだろうし。強制ログアウトになったら、運営に報告しないといけないだろうな」
再現可能なバグであれば、マジで何とかした方が良い。今回だけの変なバグなら、余計に難しい事になるんだけど、ある程度は再現性があるんじゃないかとは思っている。
「……見られてる? 敵か? サーチエネミー」
索敵系の魔法を使う。本当は止めた方が良いんだよ。魔力を察知されて、逆探知が可能になる場合があるからな。まあ、今回はレベル帯が低いと判断したから使ったけど。本気で未知の場所なら、止めておいた方が無難ではある。
「……見られてるな。釣り出すか? 敵の情報も欲しいし」
どうやら逆探知は使えないらしい。ならば、釣り出してしまえば良い。木の上に何かしらが居るのは解った。……索敵範囲は大分絞ってみたけど、近くにはこの敵だけだ。
「じゃあ、油断したような行動をとりつつ、剣だけは出しておこう」
最低限の装備は、マジックバッグに入っている。インベントリ操作をすれば良いだけだから、取り出すのは簡単に出来た。こういったバグは無しと。装備もちゃんとあるようだし、ある程度の装備はしておいた方が良いか。
腕輪や指輪を取り出して装備していく。服に関しては、金属鎧を装備出来ないので、元々防具というか、錬金術師のクラスが着る最高峰の服を装備しているんだよな。これがクラスが違えば、皮鎧まで装備可能とか、色々とあるんだけど。錬金術師のクラスは、防御力に難がある。……その代わり、武器の装備制限はないんだけど。
不意打ちを狙っていた魔物から攻撃を仕掛けられる。解っていたから簡単に回避してみせた。動きが思ったよりも早い。喰らわなかったけど、何かしらの上方修正が入ったのか? このレベル帯の情報は持っていないからな。
目標を目視した。……テラーゴーストだな。レベルは31だったはず。何かしらの上方修正が入っているな。まあ、敵ではないんだけど。普通に剣で攻撃。この剣は俺が作った雷属性のミスリルだ。個人的に雷属性の武器を愛用している。
「……一撃か。まあ、そうだろうな。テラーゴーストは物理にはもの凄く耐性があるが、属性武器なら普通にダメージが通るし」
テラーゴーストを討伐すれば、ドロップ品が落ちる。……普通の魔物の場合は解体しないといけないんだけど、幽霊や霊体系の敵に関してはドロップが落ちる。今回は闇属性の魔石と死者の霊魂だな。素材としては、そこまで強くはない。あれば便利程度のものでしかないんだよな。
「レベル的にここは暗闇の森か? 初心者の狩場で、初めて暗闇になるから、暗視系の魔法を作っていないと面倒ではあるんだよな。……わざと明かりを点けて、狙われるってのもありだとは思うけど。経験値効率的には結構良いんだよな。暗い代わりに、経験値が多く設定されていて、魔物のレベルも低めだし、レベリングにはもってこいだったりするんだよなあ」
まあ、初心者の時はという注釈が付くんだけどな。初心者の時はこんな魔物でも苦戦はするし。特に霊体系なんて、物理系のクラスは手が出ないとかあるしな。
「……そろそろ1時間経つぞ? どうなっているんだ?」
まさかの8時間の強制ログアウトも効果なし。……まさかなあ。そんな事があり得ると思うか? 漫画みたいな展開だが。
「ゲームと同じ世界だけど、異世界でしたってか? 漫画過ぎて流石に無いだろうと考えていたんだがな……。可能性としてはあり得るのか?」
そんな事はありえない、と一蹴するのは簡単だ。だが、可能性を追い続けないといけない。もしも、ここが異世界だったとしたら。
「……あ。金が取り出せない。無一文かあ。マジでヤバいな。この世界の設定ってどんな感じだったっけ?」
確か、町の門を潜りたければ、冒険者ギルドなんかのギルドに登録していなければ、1000ジェル支払わなければならないはず。……そもそもゲームで金を出したことが無いし、どうする? 無一文なんだが。
「プボオオオオオ!」
「なんだなんだ!? そんな鳴き声の魔物が暗闇の森に居たか!?」
正体不明の鳴き声。……確認しに行かないと。この世界が現実って事も考慮に入れつつ、何かしらの異常事態に巻き込まれている可能性はある。まずは原因を探らないと。とりあえず、様子を見に行こう。




