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桜の出会い

すみません、気まぐれで書きました。

不定期更新です。

この世界には魔力というものが存在する。

魔力がなければ生きることができないと言われるほどだ。

しかし、その世界で1人だけ、魔力が全くない剣士がいた。

人々曰く、其の者の武器は片刃であると、曰く、其の者の刃は美しい桜色だと、曰く、其の者の戦闘の後には必ず桜が舞い踊っていると。


――――――――――――――――――――――――


桜ーー。


この世界では見ることのできない、異界の花。

堂々と咲き誇るその美しさに人は魅入る。


ごく稀に、魔力を持たず生まれてくる子がいるという。

その者は決まって黒い髪に黒い目をしていた。

その集落に住む人々はこれを忌子とし、生まれて間もなく殺した。

この物語の主人公である少年もその一人である。

少年は家族に愛されて育てられた。

故に人気のないところで暮らした。

しかし、ある日、その幸せは壊される。

強盗である。

少年はすぐに床の隠し部屋に避難られたため、襲われることはなかったが、家族は違った。

強盗は黒髪黒目の少年を見た。 という人々の噂を聞きつけた冒険者のようだ。

強盗は、黒目黒髪の少年のことよりも、明らかに殺しを楽しんでいるようだった。

その光景を少年は涙を噛み殺し、ただ、床の隙間から見ることしかできなかった。

少年は自分の容姿を呪った。

くだらない伝統で理不尽を振るう世界を呪った。

そして何よりも、何もできなかった自分の弱さを呪った。

そんな時だ、ひらひらと何かの花が舞ったかと思うと、桜色の髪に桜色のマフラーを着た美しい女性が現れ、瞬く間に強盗を殺したのだ。

見たこともない、片刃しかないがその剣は濡れているように美しかった。

それよりも、人の戦いは見たこともない少年でもわかる、踊るように滑らかで素早い動きで敵を翻弄する姿は舞い踊る花のように美しかった。

いつ抜いたのかもわからない剣を鞘に納めると、カチンッと、子気味良い音と同時に数人はいた強盗が一斉に血を勢いよく出し倒れる。

辺りにはどこから吹いたのかわからない、見たこともない花が落ちていた。


「ああ、ちょっとくるのが遅かったな、ん? 誰だ? 出てこい」


女に気づかれた少年は意を決したような様の涙で腫れた目の顔で隠し部屋のドアを開け、女に近づく。


「お願いします! 僕を、いえ、俺を弟子にした下さい!」


「なるほど、そういうことか……」


女は少年の黒い髪と黒い目を見て測るように言う。

少年は目を離さない。


「分かった、お前の面倒を見てやろう。 だけど一つ聞かせてくれ、何故だ? 返答次第では断ることにする」


少年は驚いた、自分の黒目黒髪を、見ても何もせず真剣に話してくれていることに。

ここで曖昧な答えをしては失礼にあたる。

少年は思ったことをそのまま口にした。


「大切なものを、絶対に失わないためです」


女も少年の顔を見つめる。

すると女は目を見開いて驚く。

両親を殺されたばかりだというのにその黒い目は曇っていないからだ。


「へぇ……面白いな、よし、ついて来い」


女はニヤリと笑うと家の外へ出る。

少年はそれについていく。

女はあっ、と声を漏らす。

すると桜色のマフラーを少年にの首に回しながら言う。


「私の名前はサクヤだよろしくな」


女はニコッと笑う。


「ぼ、俺の名前はカガリです。よろしくお願いします」


「そう改まるなって、これからは家族なんだからさ」


「が、頑張ります」


「はは、まあいいさ、これから馴染んで行けば」


そう言ってサクヤは歩き出す。

カガリもそれについていく。

しばらくすると、森の中に入った。

さらに奥まで進んでいく。

ここまで行くと魔物にいつ襲われるか分からない恐怖は幼いカガリでもわかった。

しかし、その心配は杞憂に終わった。


「ここだ」


女は何も無い大きな岩を指差す。

意味がわからなく、頭に疑問符を浮かべているカガリを察して、迷いもなく岩に歩き出す。

すると、サクヤは岩に吸い込まれていった、カガリが唖然としていると岩の中からサクヤが出てきて言った。


「ほら、見ただろ、行くぞ」


カガリはサクヤに手を取られ、強引に引きずり込まれる。

怖くて目を閉じていたは恐る恐る目を開けると目を大きく見開いた。

とても岩の中の光景には見えない。

小さな池に、ピンクの花の咲いている一本の大きな木、気で建てられた少し大きめの家。

どれを見ても美しいものだった。


「これがお前の新しい家だ」


「あの、師匠、この花は何ですか?」


カガリはサクヤ師匠と呼ぶことにした。


「この花はな桜って言うんだ。 気に入ったか?」


「すごく、心があったかくなります」


「そうか、それは良かった。 これは私の大好きな花なんだ」


そう言ってサクヤはまるで咲き誇る桜のような笑顔を浮かべた。

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