龍VS女神アテナ
更新遅くなって本当に申し訳ありません。
「ま、マジで?」
目の前の光景に俺はただ愕然とすることしかできなかった。
本来なら百パーセント近い実力で挑まないと勝てない“神族”と今から力を封印した状態で戦わなければいけないのだ。
そんな危険行為、命がいくつあったってやりたくない。
(おいおい嘘だろ、聞いてねえぞ!)
もちろん杏奈が呼び出す可能性も考慮して十分に警戒はしていた。
だが、本来なら第二封印を解かないとできない芸当だと心のどこかで考えてしまっていたのだろう。
そのせいでこんなミスをやらかした。
だが、いつまでも悔やんでいられない。
目の前にやばい敵がいるのだ、今の持ち札で勝つ方法を考えなければ。
(どう出る?)
相手の動向をうかがっていると、
「アテナ。」
「はいマスター、ご命令を。」
「あそこにいる龍を全力で倒しなさい。」
「龍殿をですか?」
「今は仮の敵なの、ここなら殺しても構わないわ。」
「了解しましたマスター。 ですが、私で勝てるかどうかは分かりません。」
「大丈夫よ。 今の龍は半分も力を出せないから、思う存分暴れなさい。」
「了解しました。 全力を持って倒させていただきます。」
「お願いね。」
そんな物騒な会話が聞こえてきた。
その会話を不幸にも聞いてしまった俺は、
(素がでてるよ杏奈、素が)
というツッコミと同時に、
(……やべえ、瞬殺される)
心の中でダラダラと冷や汗を流しながら自分の未来を想定しつつ、ある可能性を考えていた。
(見たところ杏奈はまだ第一封印しか解放していない。 なら、何かしらの制限はあるはず・・・)
仮に相手に制限がなくて負けるとしても最低限の時間稼ぎをしてからにしなければ立つ瀬がない。
そう考えていると、いきなりアテナの闘気が上がった。
(……来るな。)
一旦考えるのをやめてアテナと向き合う。
アテナは俺の前に辿り着くと、
いきなりひざまずいた。
(・・・はあ)
ある程度わかっていたとはいえ、いつになっても慣れないその光景に俺はため息を吐きながらこう言った。
「久しぶりだねアテナ。 あと、何度も言った筈だけどそれやめてくれない?」
俺がそう言うが、アテナは首を横に振り
「大変お久しぶりです龍殿。 それに前にも申したはずですが、恩人である龍殿に崇拝の意思を表しているだけですのでお気になさらず。」
そう即答してきた。
「いや、神様が人間に崇拝っておかしくーーー「おかしくありません。」はい。」
言い返そうとしたが、あまりの迫力に思わずたじろいでしまう。
「それに龍殿は既に我々神族よりも上の存在です。 自分より格上の人物を崇拝しても何の問題もありません。」
その言葉を聞いた俺は、
(格上ね・・・)
思わず自嘲気味に笑ってしまった。
何もできなかった自分が神より格上なはずがない。
自分にとっての最悪の過去のことを思い出しながら自己嫌悪に陥っていると、
「龍殿、どうされましたか?」
アテナがそう聞いてきた。
「いや、なんでもない。 それより始めようか。」
俺はそう言って思考を止め、戦闘態勢にはいった。
アテナもこれ以上の会話は不要と判断したのか剣を構える。
互いに動かず身構えていると、風がふき小石が飛んだ。
その小石はちょうど俺の作った水溜まりに落ち、
ポチャン。
そう微かな音が響いたその瞬間、二人同時に動き出した。
アテナが急接近してくるがそれを見越していた俺は大きく後ろに下がり、矢を放つ。
俺の放った矢を盾で受けたアテナはそのまま高速で接近してくる。
俺は即座に弓から双剣に武器を作り替え迎撃しようとしたその時、
ーーー人殺し!!!
双剣を手に持った瞬間、過去の最悪の記憶がよみがえり思わず双剣を持つ手が震えた。
(落ち着け!! これは……じゃない! それに人も死なない!)
そう自分に言い聞かせるようにしていると戦闘中にもかかわらず大きな隙を作ってしまった。
当然俺のその隙を相手が黙って見ていてくれる訳はないので、
「隙だらけですよ。」
その言葉と共に剣が振り抜かれる。
慌てて水の壁を作り、それで防いで一発退場は免れたが衝撃までは殺しきれず、吹き飛ばされてしまう。
(くそ! 俺としたことが・・・。 とにかく今は態勢を立て直さないと!)
内心で自分に悪態を吐きつつ、即座に空中で一回転。
槍を水で創りだし、突撃する。
(やはり、双剣系以外なら大丈夫だな。)
その事実を再度確認し攻撃を仕掛ける。
最初の突貫は防がれたが、
「はあああっ!」
そこから二連突き、斬り上げ、薙ぎ払いと攻撃を繋げる。
「くっ!」
二連突きを盾に思い切りぶつけ弾き、斬り上げで剣も弾く。
そして、薙ぎ払いを当てようとするが武器が使えなくなったアテナは即座に回転し、回し蹴りで俺の槍を蹴り飛ばす。
「甘いですよ! 【聖撃】」
回し蹴りの勢いのまま手を振り抜き、俺の体を吹き飛ばそうとしてくるが、
「【蜃気楼】」
黙ってやられる俺ではない。
すぐさま周辺に霧を生みだし、俺の位置をごまかし回避する。
そのまま接近し、拳に神聖力をこめ鳩尾に攻撃しようとするが、盾で止められる。
盾ごと押し返してきたので、勢いに身を任せて思い切り下がり、剣の間合いから抜ける。
「【水牢】」
そのまま水で檻を作り出し閉じこめるが、
「【断壁】!」
剣で檻を易々と斬り裂き、
「【飛燕】」
そのまま飛ぶ斬撃を繰り出してくる。
「【水壁】」
慌てずにその斬撃を水の壁で受け止める。
その後もやや劣勢の状態で戦っている内に、俺は自分の推測が正しかった事を確信した。
(やっぱりアテナは全力をだせていない、ならいけるかもしれない・・・。)
どうしてそう思うかというと、単純にまだ自分が生きているからだ。
本当のアテナの実力なら今の俺なんて数秒持てば良い方だ。
なので、最初はわざと手加減して油断させようとしているのかと思ったが、今までの攻防でそれはないと判断した。
恐らくこのままいけば杏奈の神聖力が底を尽き勝てるだろうが、
(このままだとその前に俺が負けるな。)
このまま戦い続ければ自分のストックの水の量も底を尽き、神聖力もなくなる。
そうなれば結果的に負ける。
そう判断し、自らも短期決戦で決着をつけるために少し無茶をすることにする。
「おい、アテナ!」
「何ですか龍殿? 戦闘中に敵と対話とはずいぶん余裕がおありのようで。」
「余裕なんて全然ないけどな。 このままいくと確実に負けるんで少し無茶をする。 だから、一分で片付けさせてもらうぞ!」
俺のその言葉に、アテナがピクっと反応する。
「一分ですか? これはまたずいぶんとなめられたものですね。 やれるものならやってみなさい!」
その言葉とともに剣を振りかざし突進してくる。
対して俺は、
(持ってくれよ俺の体!)
「リミッター限定解除」
リミッターとは、人間の脳や筋肉が体が無理な動きをしないように行動を制限するためのものである。
これを限定的に解除すれば脳の処理速度と体の運動神経を格段に上昇させることができる。
ただ、強すぎる力にはもちろん代償がある。
これを使ってしまえば時間と量にもよるが、筋肉はズタズタになり体のあちこちから激痛とともに血がでる。
いくら常人より強くなっているとしても、せいぜい耐えられるのは七~八十パーセント程度。
そこから先は諸刃の剣だ。
(だが、やるしかない。)
そう覚悟を決めて俺は、八十パーセントまで引き出す。
それだけで体中に痛みを感じる。
(痛っつう! こりゃあ速攻で片付けないと自滅しちまう!)
体の痛みに耐えながらこちらに向かってくるアテナを見据える。
脳の処理速度があがっているおかげでひどく遅く感じる。
俺はアテナのところまで地面を思いっきり踏みつけて突っ込む。
その俺の変化をみてひどく驚いた顔のアテナが一瞬見えたが、その瞬間にはアテナはもう目の前で俺は思いっきり殴り飛ばす。
とんでもない勢いで飛んでいくアテナを見てそれで決着がついたかと思ったが、盾でガードしていたらしく吹っ飛ぶだけで済んだようだ。
俺は飛んでいくアテナに接近し、そして、
(悪いけど終わらさせてもらう!)
水で包んだ拳を構え、
「【水激】!」
体内の水にダメージを与える技でとどめを刺そうとするが、アテナは狙っていたらしく一瞬で体勢を立て直し、
「油断しましたね! 【神聖剣】!」
必殺の剣を放ってくるが、超近距離から攻撃だったが俺は辛うじて避ける。
そして、
「【水泡】」
辺りに泡を生みだし、その泡をアテナに近づける。
これがなんだか知っているアテナは見た瞬間に急いで逃げようとするが遅い。
パチン!
俺が指をパチンと鳴らすと、
「うわあああ!!」
泡が連鎖爆発を起こし、多数の爆発がアテナを包んだ。




