幕間 5
「遊撃隊に真っ白な女がいる?」
「はい。先日伺った氷の一族の特徴に酷似していたもので。…冷たいかどうかまでは、分かりませんでしたが。」
「いや、十分だ。そうそう真っ白な肌に髪、紅い瞳の人間などいないだろう。しかもこの時機だ。頃合いがよすぎる。」
「は。かなり高い戦闘能力ですが。」
「…。氷の一族は好戦的な一族なのか?いや、こんなことを言ったところで仕方ないことだな。忘れてくれ。」
「どういたしますか?」
「そうだな…。そのまま偵察を続けてくれ。もしできるようなら、揺さぶりをかけてみてくれ。」
「白い女にですか?」
「ああ。だが、くれぐれも無理はしないように。お前にはまだやってもらうこともあるし、な…。」
「わかりました。それ以外は何かありますか?」
「ああ。全軍を動かす。国境に配備せよ。」
「それでは!城の守りは…どうなさるおつもりですか!」
「捨てる。…そんなことになってはもう無理だ。国境を越えられた時点で軍が城に詰めていても関係ないだろう。」
「…はっ。」
「軍は国を守るもので、王を守るのではない。最悪の事態になった時に、軍が城にいたら、軍は民に牙をむくかもしれない。あるいは…軍は我々に牙をむくかもしれない。どちらにせよ、軍が城にいるという状態が最善ではない。」
「わかりました。全軍に通達を。」
「ああ。あの国が動き出したのが事実なら、よくも悪くも事態は動き出す。先手を打って置くべきだろう。」
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