第4話 保護
「おい、サイオン、集まったか?」男性が問いかける。右手に杖を持ち、赤い皮の鎧を身に纏っている。
「いや、まだあと3つ足りねえ。」サイオンは首を左右に振りながら答える。
男性としては早いうちに依頼を達成し、実験で使う薬草を探しに行きたかった。特にトクロキシ草は魔境の少し深い場所の暗所にしか生えないため手に入れづらい。それを考慮したため依頼を少し報酬が少ないが簡単なものにして探す時間を作ろうと考えたのだ。しかし当てが外れさっさと見つかると思っていたミカクレ茸がなかなか見つからなかった。
「参ったな。これじゃ昼を回っちまうぞ。午後はトクロキシ草を採取しに行きたかったんだがなぁ。まぁ、しょうがない。予定変更だ。ミカクレ茸が見つかったら第二域でコゴリ草を探す。それでいいか?」男性は少し残念そうにしつつも、切り替えて次の方針を示した。
「構わん。俺はお前についていくだけだからな。」サイオンは男性の案を了承する。
男たちは周囲の警戒は怠らずに森の中を歩いて行った。
「コゴリ草はこの辺りに群生地があったはず•••と。どうした?」男性は肩を叩かれたため、コゴリ草を探すのをやめてサイオンに尋ねる。
「気をつけろガリウス。やけに鳥が騒がしい。」サイオンは周囲を確認しながら言う。
「そんなことは俺も気づいてる。学者だったからって舐めるなよ。どれ、西の空にウインドホークたちが群がってやがるな。何かあるのか?よしサイオン、ちょっと様子見に行ってみるか。」
「おい、ガリウス、お前はもう少し危機感を持て!危険な魔獣が出たらどうする!お前のその安易な探索魔術が魔獣に探知されたらどうする!?」イマイチ緊張感に欠けているガリウスを嗜めるが、ガリウスは逆に諭すように言う。
「あのなぁサイオン。要人警護をしてたお前が常に周囲を警戒してるのは分かるがな、四六時中そんなに警戒する必要はねぇんだぜ。ここはまだ外縁に近いから大した魔獣は出ねぇし、ウインドホークの声を聴けば周りに大した魔獣がいないのは分かる。ありゃあ逃げてる声じゃなくて獲物を狙ってる声だってことくらいお前だってわかんだろ。となればだ、あとはホーンラビットくらいに気をつけてれば大丈夫だろ。で、ウインドホークのところにはおそらく死にかけの魔獣がいるはずだ。もしそれが大物でうまく横取りできれば、臨時収入だぜ。」
「そ、それは•••くっ!」まだ言い募ろうとしたサイオンだったが言葉が見つからず、悔しそうに歯噛みをした後、ため息を吐いて大人しくガリウスの後をついて行った。
「ここら辺か?•••ん?あれは人間•••か?うん、やっぱり人間の子供だよな。なんでこんなところに•••それになんだこの膨大な魔力量は•••!どれだけ修練を積んだって人間じゃここまで魔力量増えねぇぞ。ウインドホークたちがアイツをなかなか襲わねぇのはこの膨大な魔力の所為か。となると•••「オイ!今はそれどころじゃないだろ!さっさとあの子を助けるぞ!」•••おいサイオン待て、まだ何も分かってないのに突っ込むな•••ってもう遅いか」
ブツブツ呟いているガリウスの後ろから現れたサイオンは森の中に倒れている少年を見つけて、ガリウスの制止も聞かずに駆け寄った。ガリウスも頭を掻いて周囲に注意を向けながら歩いて近づいていく。2人が少年が気を失っている様子を間近で確認したところ、どうやら脱水症状で倒れていたようだった。サイオンが水筒の水を飲ませると少年は反応はするが意識が覚醒する様子はなかった。
「チッ!しゃあねぇ負ぶって帰るか。」ガリウスは舌打ちして言った。
「はぁ、負ぶるのはお前じゃないだろうに•••」サイオンはため息をついて少年を負ぶって歩き出した。
「舌打ちしたのは採取が打ち切りになるからだよ!」ガリウスは少し不貞腐れた様子でサイオンについて行った。
その後もぶつくさと言うガリウスの言葉にサイオンは適当に相槌を打ちながら3人は街への帰路につくのであった。




