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紋章魔術士リジーは全てを燃やして解決したい 〜そのお悩み事、可燃です〜  作者: 中島とととき


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第7話 超楽観的少女的回答


「で、言いたいことはあるかな」

「コイツがやりました」

「コイツがやりました」

「私がやりました」


 聖篝火教会にて。

 リジーら三人は無事任務をこなして凱旋、……とはならず。帰還するや否や何処からか現れたグラウスによって最初の部屋に詰め込まれ、詰められていた。


「なんかね、ネシュの森でデカい火柱が上がったって報告が沢山来ててね。厄災級の魔物の復活なんじゃないかって冒険者ギルドが大騒ぎしてるんだけど。……なんでだろうね?」


 疑問形ではあったが、グラウスの声は確信に満ちていた。身に覚えがある〜。とリジーは思った。


「えーと、僕から報告します。ウィの花は全部燃えたんでぇ、任務完了です」

「アタシからも報告します。コイツ篝火隊入れましょう。ド有能ッス」

「ちょっと、待ってね。一つづつやらして」


 グラウスは仮面の上から眉間を押さえた。大人はこういう仕草をよくやる。


「まずは任務完了おめでとう。ウィの花じゃなくて虫誘花《ウィステリクム》ね。で、彼女……有能だったかぁ」

「ドです、ド。あの火力があればアタシら天下取れますよ。マジで」

「天下はいらないなぁ……」


 それで、とグラウスはリジーに顔を向けた。


「その、……虫誘花《ウィステリクム》を一瞬で消し飛ばした、って話は本当?」

「やりました」

「即興で紋章魔術を作ったってのも?」

「やりましょうか」

「……ううん、大丈夫」


 一瞬悩むような間があった。リジーの技術を疑ってはいるが、一応教会の保全を優先しとこうかな、といったところか。


 疑いも致し方ないことだった。紋章魔術というものは予め準備しておくもので、現地で構築するものではけしてないのだ。


 例えば火を生み出す紋章魔術を作りたいとする。

 まず火を意味する紋章を記す。次に規模や範囲、指向性、持続性といった性質を決めるための補助記号を記す。リソースとなる魔力を空間から取得する場合は魔力集積の回路を組んで、素材から供給する場合は基材との相性を鑑みて素材を選定し……以下略。 


 ざっくり言うと、考えることがとっても多い。


 紋章魔術というものは、十分に理論を学んだ紋章魔術士が長い時間をかけて組み上げるものなのだ。一般的には。


 それを、その場で、ササッと?


「俺には学がないから分からないんだけど、……紋章魔術ってそういうものだったっけ」

「いやぁ違うと思いますよ。前エドワード君を壁外に連れて行ったらバチギレされましたもん」

「ずっとビビってて面白かったッス」


 エドワードなる人間は苦労しているようだ。デカい教会勤めともなると大変なんだな、とリジーはしみじみとした。これが社会か。

 果たして自分はこの激動の社会でやっていけるのだろうか?


「あの火力の紋章魔術は一般には流通してないですよ。リジーは実質歩く焼夷兵器みたいなもんです」

「魔物からの護衛はアタシらがやるんで。リジーがいたらどんなものでも灰に変えられるッスよ」

「一応言っておくけど、入隊するかどうかは本人次第だからね」


 ……いける気がする。

 リジーはそう、なんかふわっと確信した。


「入ります」

「……え?」

「篝火隊。入ります」


 なんだかんだ。リジーは褒められたり認められたりするのが結構好きなのだ。ましてや持ち前の火力が認められたともなれば。


 ターンと大きい破裂音が鳴った。レッティとヘルマーが互いに加減せずハイタッチした音であった。


「よっしゃまず三眼狼《オクルルム》の乱獲に行こうぜ。アレは金になる」

「いやいや、泥喰みをやるべきですよぉ。アレの骨で作る酒は美味い」

「頑張ります。沢山焼きます」

「私利私欲での壁外出は許可できないよ。君もやる気出さないで。……というか、本当に篝火隊《ウチ》でいいの?」


 リジーは二秒だけ考えて、肯定した。

 ノリと勢いで決めたわけではない。……とは流石に言えないが。


 まぁなんとかなるだろ、とは思っている。

 リジーは人生の大半をそんな感じで乗り切ってきた。超楽観的思考は彼女の欠点であり、同時に彼女を彼女たらしめた最大の強みなのだ。


 頷いたリジーを見て、グラウスは「そっか」と呟いて襟を正した。差し出された手は、やっぱり革手袋のままであったが。


「じゃあ、改めて。篝火隊へようこそ、リジー」


 その手を強く握り返す。頑張りますという気持ちをそのまま全てその手に込めて。


「辞めたくならねェ程度にはサポートしてやるよ。んで、リジーは何をやりたい?」

「多少のやんちゃはお目溢しです。手始めに勝手に壁外に出てみますか? フルクエさんの名前を出せば大体いけますよぉ」

「……辞めたくなったら、いつでも言ってね」


 ひとまず、当面は、なんか変な人達ばかりの職場に入ったぜと同期に自慢することをモチベーションに。

 この職場で頑張ってみよう、とリジーは思った。

読んでくださりありがとうございます。

続きは書き溜め後に投稿します。10月中には再開予定ですので、ブックマークしてお待ちいただけると嬉しいです!

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