【番外編】レオンハルトが探していた彼女2(レオンハルト視点)
お待たせいたしました。
今回もレオンハルト編です。
前回と同じく外国語は『』て表記しています。
ブックマーク、評価、ありがとうございます。
『やっぱりしくじりましたわ。』
アリアはがっかりと肩を落としている。
『大丈夫だよ。私は誰にも言わないし、アリアが困る事にならない様にする。私はアリアが気に入っているんだ。アリアの困る事はしたくない。君はクリストファーには勿体ないと思う。本当に婚約解消して、私のところに来ないか?』
俺は本気で口説いてみる。あの完璧な防御魔法を見てから、俺は探していた彼女はアリアだと確信し、心は歓喜の声で溢れている。
『お戯れを仰らないでくださいませ。殿下にもお国に婚約者がいらっしゃるではないですか。』
彼女は全く動じていなかった。右耳から左耳に流されただけの様だ。婚約者の事を持ち出されると辛い。
『婚約者は仮のものだ。』
我ながら都合が良い話だとは思うが、本命のアリアに誤解されたくはない。
アリアは、頬に手を当て首を傾げる。
『エリス嬢ですわよね?大変可愛らしく賢く行動力のある素晴らしいお嬢様とか?わたくしとも気が合いそうですわ。機会があれば一度お会いしたいですわ。』
アリアが微笑む。
俺はエリスの名前が出てきた事に慌てる。
『ルイス様が皆に自慢されていらっしゃいましたわ。王太子殿下の婚約者は自分の幼馴染みで、お二人はとても仲が良く似合いのご夫婦になるだろうと。』
俺は頭を抱え込む。
ルイス、お前は一体何を喋ったんだ!
俺は全神経を奮い立たせ、リアに尋ねる。
『ルイスの事を知っているのかい?』
『ええ、大変女性を口説くことがお上手なお方でしたから。それなのに女性が本気になると逃げるのがお上手で。女子生徒は皆泣いておりましたわよ。ベルンブルグ国の殿方は皆様お口がお上手なのですね。』
俺は頭を殴られた様なショックを受ける。
ルイスのせいで、俺が口説く事も挨拶の一環だと思われている事を知る。
『色々誤解がある様だ。エリスはルイスの事が昔から好きなのだが、ルイスが戻る前に縁談が持ち込まれた為、私が隠れ蓑になっているのだ。今、ルイスは帰国している。エリスを口説いているはずだから、早々に婚約は解消される事になるだろう。』
俺はなんでこんな言い訳をしないといけないんだ。
ルイス、覚えておけ!と心で叫んだ。
アリアは目をキラキラさせて、更に追撃してくる。
『まぁ!ルイス様は女性には口説がなければ失礼だと
いうお考えをお持ちの様でしたわ。わたくしが知る限りでも、恋人と仰る方は両手で足りないぐらいいらっしゃったと。』
そして首を傾げ、
『エリス様は殿下の大事な方であれば、ルイス様のような不実な方は相応しくはないのでは?』
アリアの次の言葉が聞かずともわかる。
(だから貴方の方が相応しいのに)と続くのだろう。
それは阻止したい。
『ルイスはエリスの事を真面目に愛しているよ。ただ私に遠慮していたんだ。私たち3人で幼い頃から一緒だったから。私が国を出る前に、きちんとクギを刺してきた。今頃、私を追い出したから、嬉々としてエリスと仲良くやっているさ。』
『殿下はそれでよろしいのですか?ああ、殿下もきっとお国に沢山の恋人がいらっしゃるのですね。』
彼女は辛うじて令嬢の仮面を被っているが、目は笑っていて、肩が震えている。
『私は恋人はいない。だから私は本当の婚約者を探してもいいだろう?』
とアリアの手を握ってみる。
アリアはさりげなく手を離し、
『わたくしには、婚約者がおります。殿下のお相手にはなれそうにありませんわ。』
と真面目な顔をして言う。
今、これ以上口説くのは難しいか。
まぁ、まだまだ時間はある。
俺は一旦話題を変える。
『話は変わるが…。さっきの魔法は、学校側は誰がかけたか追求するだろう。私だと言っておくから口裏を合わせておくれ。』
『ええ。お気遣いいただき、ありがとうございます。』
そして、一番気になっていた話題をだす。彼女だと確信はしたが、本人から話が聞きたいと思ったからだ。
『アリアは昨年の学校の研修に参加したのかい?』
『はい』
『海賊の襲撃があったと聞いたが。』
アリアは訝しげに俺の顔を見る。
『はい。』
『アリアだよね。クロード殿下のサポートをしながら戦ったのは。』
アリアの大きな瞳が更に広がる。閉じ込められていた空が飛び出してきそうだ。
『殿下のお国は優秀な諜報部員がいらっしゃる様で。そのお話はルイス様からですか?』
いくら諜報活動といっても、情報提供元がこんなに簡単にバレるとは。ルイスは諜報部で鍛え直してもらうか。
気を取り直して、本題に戻す。
『やっぱりアリアなんだな?』
『何の事でしょう?』
アリアはいつもの微笑みを貼り付け、首を傾げる。
『とぼけても無駄だよ。』
俺も引く気はない。
『私は皆と一緒に避難致しましたわ。お疑いなら、当時の報告書をご覧になりますか?兄から手に入れる事はできますが。』
アリアは完璧令嬢モードに切り替わっている。しかもその目は(報告書は見たのでしょう?)と聞いている様だ。ここで負けるわけにはいかない。
『ルイスが君だと言っていたんだ。私も今日確信した。』
『何の事を仰っていらっしゃるのかしら?わたくしもか弱い女ですわ。海賊と立ち向かうなんて、考えるだけで恐ろしい。』
アリアなら人を守る為に海賊にだって立ち向かうだろう。か弱い令嬢であるのは、間違いない。しかし彼女は責任感と勇敢さで、自分が守れるものは、全力を尽くして守るのだろう。
しかし、アリアは魔法力を隠している。確かに令嬢が、海賊に立ち向かったとなれば大騒ぎだ。これだけムキになる彼女の反応、今はそれだけでいい。
『君が認めなくとも構わない。俺がそう思ったのだから。』
思わず素の口調になる。王子様モードが外れてしまった。アリアには王子様の仮面は効かない。
『アリアが海賊と戦おうが、逃げようが、どちらでも構わない。優しいアリアも勇ましいアリアも俺は好ましいと思う。ただアリアが危険な目に遭う事は、見過ごす事ができない。アリアとこれからの人生を歩んでいきたいと思ったんだ。どうか俺を生涯の伴侶として選んでくれないか?あの馬鹿王子との婚約など、簡単に潰してやる。』
そう言いながら、俺は彼女の顎に手をかけて上を向かせ、顔を近づけようとした。
アリアの空色の瞳が大きく開かれた後、俺の手がパチンと叩かれ、落とされた。
『全く、殿下もルイス様とご一緒なのですね。甘い言葉を囁けば、女性は皆自分に靡くと思っているなんて。いえ、クリストファー殿下も同じですから、殿方は皆そうなのでしょうね。生憎、わたくしはその様な言葉などには騙されません。』
そう言って、彼女は立ち上がった。
『今日の魔法の件、明らかにされたければ、お好きにどうぞ。すでにクロード殿下は私の魔力についてご存知ですから、今更皆にバレても構いませんわ。』
そう言って、アリアは俺を睨む。その凛とした態度にも惹きつけられる。
『では、殿下、いつまでも殿下のお時間を頂くわけにはいきませんので、わたくしは失礼させていただきます。』
彼女は見事な礼を執り、出口へ向かう。
『待ってくれ!』
俺は慌てて彼女を止めようとしたが、彼女がいつの間にか防御魔法をすり抜け、扉の前から姿を消した。
俺の挙げた右手が宙を掴む。
アリアは俺の防御魔法をいとも簡単に解除していった。彼女は理解しているだろうか?その事が彼女自身の魔法力が高い事を示している事を。
俺の防御魔法はかなりレベルが高い。外から入れないだけでなく、中からも出れないように術を施していた。我が国の騎士団の中でも破れる者はいない。
それを彼女は事もなげに抜けて行った。
それにこの俺から口説かれても動じない。
俺が王太子だからといって、態度を変えない。
それどころか、堂々と俺に向かって言いたいことを言ってくる。
ああ、やっぱりアリアはいい。
一緒に暮らせたら、どんなに楽しいだろう。
必ず俺が連れて帰る。
一日でも早く彼女の心を手に入れたい。
まずは、双方の婚約解消を為さなければ。
何かいい手はあるだろうか?
そう考え、俺は側近のザックを呼ぶ。
『殿下、お呼びで?』
『ああ、ちょっと調べ物をして欲しい。ファーガソン公爵家のメンバーと王家のクロードとクリストファー、そしてカーラとかいう子爵令嬢についてだ。なるべく早く頼む。』
そして、ルイスに手紙を書く。
お前のせいで大変な誤解を招いたという文句と、誤解を解く為にエリスからアリアに手紙を書いて欲しいと。
アリア、これから俺はお前を手に入れる為に、力を尽くそう。覚悟しておくのだな。俺からは逃げられない。
俺はこれからの留学生活が楽しくなりそうだと思った。
【閑話】レオンハルトからの手紙を見たルイスとエリス
ルイス:「まずい…。」
エリス:「レオンハルトから、手紙が来たんだって!見せて!」
ルイス:「いや…」
エリス:「ちょっと貸しなさいよ!」
(エリスが取り上げて、手紙を読む)
エリス:「ルイス!どういう事⁈ちゃんと説明してよね。私がいながら、何遊んでいるの!」
ルイス:「ごめんなさい。もうしません。」(土下座する)
エリス:「今度一緒にアリアナ様に会いに行きましょうね。」
意地の悪い笑みを浮かべるエリスであった。
「わたくし、アリアナ様とは気が合いそうですわ。早速お手紙書かないと!」
真っ青になるルイスだった。
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お付き合い頂き、ありがとうございます。
レオンハルト編、一区切りです。
これだけ隙あらば口説いていたら、アリアナも挨拶がわりに思うかも…と。
ブックマーク、評価、ありがとうございます。
少しは楽しんでいただけたでしょうか?
初めて書いた作品ですので、皆様の評価が大変励みになります。よろしければ、感想も頂けると嬉しいです。
次はアリアナ編か、クロード編かと考えています。
数日以内に投稿しますので、お付き合いいただければ、幸いです。