【番外編】クロードと弟の婚約者(クロード視点)
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今回はクロード編です。
レオンハルトがアリアナに興味を持つきっかけの事件を中心に書きました。
本編よりも番外編が長くなってしまい…反省しているのですが、お付き合い頂ければ、幸いです。
私はこの国の第一王子のクロード-ルイ-フランベールだ。この国の魔法師団の団長を務める。
茜色に染まる空を見ながら、窓辺に腰掛ける。
そして、手に持った報告書に目を落とした。
そこには先程の事故の聞き取り調査が記載されていた。
今日の昼、王立魔法アカデミーで爆発があったと緊急連絡が入ったので、慌てて転移魔法で駆けつけた。
建物の損傷は激しかったが、幸い死者も重傷者も出なかった。爆発と同時に防御魔法が使われたためだ。
爆発の原因は可燃性の多量の化学薬品に、一人の生徒が火魔法を使った為だ。一歩間違えば多数の死者や怪我人が出てもおかしくなかった。
その馬鹿は、異母弟の第二王子クリストファーだという。
全く呆れてしまう。
報告書では防御魔法をかけてくれたのは、隣国の王太子であるレオンハルトだと記載されていた。
確かにレオンハルトは魔法力が強い。防御魔法ぐらいは可能だろう。
しかし、防御魔法はアリアナがかけたのだろうと考える。それはクリストファーが怪我一つ無かったからだ。
爆発物の近くにいた場合、防御魔法でも守りきれない場合が多い。爆発に気付いて発動しても、炎や爆風の方が早く辿り着くからだ。
アリアナは、常にクリストファーを気に掛けている。
幼い頃からの婚約者であるから、当然と言えばそれまでだが、クリストファーを目で追っているアリアナを見ると、嫉妬で理性が保てない。つい、アリアナに冷たく当たってしまう。
今回もクリストファーの行動を、いち早く察して防御魔法をかけてくれたのだろう。
何故、レオンハルトは自分がかけたと申告したのか。
彼はアリアナが防御魔法を使った事を気付いたのだろう。アリアナは彼に抱き上げられていたのは、今回の魔法が関係あるかも知れない。
実力を知られると厄介だ。彼はどこまで把握しているのだろうか。
アリアナの魔法力は私と同等と言ってもいい程だ。
昔は魔法力の強い者が沢山いて、高位貴族だけではなく、平民も魔法力に優れた者が多数いた。
戦も魔法力が強い方が勝利していた為、いかに魔法力の強い者を有するかが勝敗の鍵になる。時が流れた今でも根本的なところは変わらない。
なので、我が国もだが、周辺諸国は必死に人材の確保に努めている。
私は幼少期より特別な魔法力を表した為、英才教育を受け、昨年より魔法師団の団長に就任した。
アリアナも同じく魔法力が高かった為、私と一緒の家庭教師について魔法力の使い方を学んでいた。
彼女の能力は、一個師団に相当するだろう。近隣諸国が知れば、喉から手が出るほど欲しいはず。
ましてや女性である事から、手を出しやすいと考えるはずだ。その為、彼女の能力は知られない様に、隠されてきたのだ。
しかし、この報告書を見る限り、レオンハルトには知られていると考えた方が良さそうだ。
いつ知られたのか…
彼女が魔法を使う機会は限られている。
私はある事件を思い起こす。
□□□□□
昨年だったか。アカデミーの研修旅行で訪れた港町に海賊船が襲って来た。
俺は慌てて、魔法師団に連絡し、これ以上港に海賊船が近付けないように風力魔法をかけ、町の一般市民の誘導をアリアナの兄であるエリックに任せた。
アカデミーの生徒には教師もクリストファーもいる。安全な場所へ誘導させるだろうと思ったが、なかなか動かない。生徒の中には他国の王侯貴族もいる。どう動かすかと思案していたら、アリアナが指揮を取って、それぞれに指示を出していた。一行が動き出したので、アリアナも安全な所へ移動するものだと安心し、海賊船に集中することにした。
「クロード殿下、私が防御しますので、遠慮なく戦ってください。」
急に、隣からアリアナの声が聞こえる。
隣を向くと、アリアナが防御魔法を発動させている。
「アリアナ、皆と一緒に避難しろ!」
私は怒鳴ってしまう。
しかしアリアナは動じなかった。
いつもなら、怯えて逃げるのに。
「私は大丈夫ですわ。クロード殿下をお一人にはできません。私の実力はご存知ですわよね。」
そう言って、防御を交代してくれた。
お陰で、海賊船の方は簡単に方がついた。
アリアナと一緒に魔法を使うのは、息をする様に楽だ。幼い頃から一緒にいるせいか、私が思うタイミングで援護してくる。
魔法師団が出てきて、戦いにも目処が立ったので、アリアナと向き合う。
「なんで逃げなかったんだ!危ないだろう!」
思わず、大声を出してしまった。
本当はこんな事を言いたい訳ではないのだが。
今のアリアナは明らかに怯え、踵を返した。
慌てて、アリアナの腕を掴み、胸に抱き寄せる。
「今回は助かったけど、危ない真似だけはしないでくれ。アリアナを危険な目には合わせたくない。」
アリアナは慌てて腕から逃れようとする。
必死な顔を見て、昔の幸せだった頃を思い出す。
「クロード殿下、離して!」
「いやだね。悪い子にはお仕置きしないとね。」
「わたくしはもう子供ではありませんわ!誰かに見られたら、困るじゃないですか。」
「私は困らない。お願いだから、約束してくれ。危険なところには近付かないと。」
「本当に危ないと思ったら、わたくしも逃げますわ。クロード殿下がいらっしゃるのであれば、安心でしょう?」
彼女が顔を上げて、少女の時と変わらない笑顔を見せてくれる。
「クロード殿下、魔法師団の方がいらしていますわ。わたくしもアカデミーの皆と合流いたしますから、離してくださいませ。」
「ああ、気を付けていくのだよ。」
「はい。クロード殿下もご無理なさらないで下さいね。」
久しぶりに見たアリアナの笑顔と、柔らかな体の感触、ほのかな香りに癒された。
もう、我慢する事は無理だ。
アリアナを手に入れる為の計画を実行しよう。
そう決意した事件だった。
□□□□□
カタッと音がして、意識が今に戻される。
強い風が吹き付けた様だ。
そう言えば、昨年度にベルンブルク国から留学生が来ていたはずだ。彼から漏れたのか。
アリアナの情報は隠していた。あの事件の時もアリアナは髪と眼の色を魔法で変えていた。外に漏れるはずはないと、油断してしまったか。
アリアナの魔法力の存在を知れば、彼の国も手を出してくるはず。その為にレオンハルトは留学して来たのか。王太子を送り込むとは。
間違いなく、レオンハルトはアリアナの魔法力を手に入れる為に近付いたのだろう。
「アリアナ…」
私は誰に聞かせる訳ではないが、名を呼ぶ。
表に出せない恋情を、もう何年隠しできたか。
今日の事故の後、レオンハルトに抱き抱えられていた。
怪我でもしたのかと、肝が冷えた。
怪我ではないと聞き、取り敢えず安心したが、レオンハルトにいつまでも預けておくのは腹が立った。
アリアナは私のものだ。アリアナの成長を待っていたのは私だ。
気が付けば、アリアナに手を伸ばしていた。
アリアナもこちらに手を伸ばしかけていたが、レオンハルトが巧みに遮った。
彼の目には、アリアナに対する恋慕が浮かんでいた。
そして、私に嫉妬の眼差しを不躾に向けてきた。
アリアナが私に手を伸ばした事が気に入らないのだろう。
丁寧な言葉ではあるが、己の立場を表に出される。
この時ばかりは、婚約者の立場でない事が、いかに不安定なものかを思い知らされる。
異母弟の不始末を問われると、確かに私が出て行かなくてはならない。一瞬弟に目を向けた隙に、レオンハルトはアリアナを連れて行ってしまう。
その後は、事故現場の検分と異母弟からの事情聴取、教師達からの聞き取り調査を行う。
異母弟は言い訳を口にしていたが、明らかに奴が悪い。
異母弟を叱責し、父王のところまで連れて行き、詳細を報告、先程やっと解放されて、魔法師団の自室に戻ってきたのだ。
「アリアナ…君は今、何を想っている?」
そう呟いたところに、ノックの音がした。
お読みいただき、ありがとうございました。
クロードとアリアナの出会いを今書いています。
アリアナのその後、近日中に投稿する予定です。
未熟者ですので、日程をお知らせ出来ずにすみません。




