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悪役令嬢は婚約破棄を言い出した王子様に決闘を申し込む。  作者: 藤宮サラ
第一章 決闘まで

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【番外編】クロードの焦り(クロード視点)

ブックマーク等、ありがとうございます。


前々話、前話のクロード視点です。

 アリアナが目を覚ました。

 普段と変わらないやり取りに、こんなに安堵するとは。


 アリアナが私の部屋から出て行こうとするので、一緒に寝た仲だと言うと、真っ赤な顔をする。

 昨日彼女のベッドで一緒に寝ていたのだが、意識を手放していた彼女はそれを知らない。

 私は彼女が側にいるというだけで、安心して熟睡してしまった。いつも神経が研ぎ澄まされて、途中何度も目が覚めるのだが。

 今日も側にいて欲しい。だが、エリックがそれを許さなかった。彼の言う事は正しい。

 今は焦る事は禁物だ。


 結局、アリアナはエリックの部屋へと移った。

 残念だったが、いつでも会える場所にいると思うと、アカデミーに置いている頃に比べれば、格段に気持ちが安らぐ。


 アリアナはアカデミーに帰りたがったが、暫く魔法師団に留めておく事にした。

 多少強引だった事は認めるが、事件の全容が解明されていない限り、ここから出すわけにはいかない。


 ムキになるアリアナも可愛いと思ってしまい、つい意地悪な事を言ってしまう。

 彼女の魔法力から言えば、私と同じレベルの防御魔法を潜り抜ける事は可能だろう。ただ私は彼女の魔法力について熟知している。彼女に解術出来ない様に防御魔法をかける事にする。


 本当はもうアカデミーに戻したくはない。

 今回の事件は肝が冷えた。

 そうでなくとも他国の王子たちが、アリアナを手に入れようと躍起になっている。

 アリアナが重体と聞いて、彼らが諦めてくれればいいのだが。


 彼女をエリックの部屋へ移した後、防御魔法の確認をする。魔法師団には普段から防御魔法の一種である警戒魔法を掛けている。決まった人物しか入れない様になっている。来客などはパスが必要で、一般区域しか入れない。


 私達の執務室などは更に強固な警戒魔法を掛けている。魔法師団の幹部しか入れない。

 今回はエリックと私の部屋にしている元客間には防御魔法をかけた。

 エリックと私は自由に行き来できる様、設定をかける。


 防御魔法をかけていたら、エリックが部屋から出てきた。

「アリアナに夕食を用意してくる。しばらくは誰も入れない方がいいだろう?」


「そうだな。頼むよ。」


「エリス嬢は明日の朝、アカデミーに帰すが、いいか?彼女に帰国を希望するなら手配すると提案したが、アカデミーに戻る事を希望した。レオンハルトがいるからな。」


「本当は帰国して欲しかったが。何か不満を言っていなかったか?」


「アリアナに会わせろと。」


「それでどう説明した?」


「アリアナは救出の際に怪我をして、意識が戻っていないから、今は会えないと。」


「それで納得してくれれば良いが。」


「う〜ん。あれは納得していないな。彼女自身はアリアナが刺される所を見たわけでもない。エリス嬢もなかなか元気なご令嬢だ。攫われて、さぞショックを受けているだろうと思っていたら、開口一番、アリアナはどうしたのか、だったからな。レオンハルトが付いているから、何か探ってくるだろう。」


 エリックは頭を掻きながら、苦笑いを浮かべた。


「元気な事はいい事だ。アリアナとは本当に仲が良いのだな。」


「そうらしい。隣国の侯爵令嬢だから、ご機嫌を伺う様な事も、ライバル視される事もないのだろう。アリアナも楽しそうに彼女の事を話してくれた事がある。」


「そうか。レオンハルトの事がなければ、友人として歓迎するのだがな。」


「そうだな。まぁ彼女の事は、俺の方で対応しておく。ルイスの婚約者らしいからな。」


「ルイス?」


「去年いただろう?隣国からの留学生が。彼女はレオンハルトと婚約解消して、ルイスと婚約したらしい。」


「ああ、あいつか。」


 思い出しただけで、腹が立ってくる。

 あいつが余計な事を隣国の王太子に吹き込んだのだろう。

 レオンハルトはアリアナを手に入れる為に婚約解消して、ルイスに押し付けたのか?


「ルイスは今この国に来ている。」


「何?」


「エリス嬢と入国して、今は大使館勤務らしい。」


「諜報か?」


「まぁそれもあるだろうが、レオンハルトとエリス嬢の世話役を兼ねているそうだ。」


「お前は会ったのか?」


「ああ、何を考えているのか、探って来た。間諜からの報告も同じだったから、間違い無いだろう。」


「そうか。」


「一応見張りも付けている。何か動きがあれば報告する。」


 エリックはそう言って、食事を取ってくる間、アリアナを頼むと言って、食堂へと向かう。


 私はエリックの部屋のドアをノックする。

 アリアナはエリックだと思った様だ。警戒もせずに返事をする。


 私は寝室に足を踏み入れる。


 アリアナは私が用意していたシンプルな水色のワンピースに着替えていた。

 肩口の傷を抑えている布が痛々しい。

 傷に触らない様に肩まで開いている物を選んだのだろう。

 だが、肩口の布があっても、そのワンピースは彼女の美しさを引き立てていた。


「よく似合う。」


 彼女は戸惑う様に私にクローゼットの中の服の事を尋ねてくる。

 1年ほどかけて私が用意したアリアナの服や靴、装飾品は、エリックがこの部屋を使い出しても、そのままにしていた。前回王宮に滞在した時のドレスもこの中から準備したのだが、それから更に数着は増えただろう。


「そこにある服は、全てアリアナの物だよ。遠慮なく使ってくれ。」


 そう言えば、彼女の空色の瞳か大きく広がり、その後、困った様な表情になる。


「こんなに頂く訳にはいきませんわ。」


「構わない。アリアナの為に揃えていたのだから。使って貰った方が物も喜ぶだろう。」


「では、当座の服だけ頂きますわ。ありがとうございます。着心地がとても良くて、気に入りましたわ。」

 そう言って、ふんわりと微笑む。

 令嬢としての作り笑いではなく、昔からの嬉しい時の表情に私も頬が緩む。


「気に入ってくれたのであれば、良かった。」


 私はそう言って、アリアナに近付き、彼女の傷の上にそっと手を当てる。

 私を庇って負ってしまった傷。

 申し訳ないと思うと同時に、彼女はこれを意識する度に、私の事を考えてくれるだろうかと思ってしまう。早く傷痕が消えればいいと思う一方、傷痕が一生消えなければいいと思う、相反する気持ちか脳内でせめぎあう。


「まだ痛むか?」


 そう言って、アリアナの顔を覗き込めば、微笑みを返してくれる。


「多少は。だけど普通の生活はできますわ。」


 多少でも痛むのかと心配するが、大事な事を伝えなければならない。


「医師が傷痕が残るかもしれないと言っていた。すまない。」


 彼女は首を横に振る。


「殿下が気に病まれる事はございませんわ。わたくしが狙われていたのです。殿下を巻き込んでしまった、わたくしの責任ですわ。」


「だが…」

「そうですか。傷痕が残るのですね。いい事を伺いました。」


「いい事?傷痕がいい事なのかい?」

 私はアリアナが何故傷痕が残る事を良い事だと言うのか、理解出来なかった。気にしないと言ってくれると確信していたが、いい事と言うとは思っていなかった。

 エリックが言った通りだった。


「ええ。」


「どうしてかな?」

 クリストファーとの婚約解消に使うはずとエリックは言っていたが、本当にそう考えてくれているのか。


「内緒ですわ。でもわたくしは傷など気にしておりません。そのうち薄くなるでしょうし。殿下も気になされないでくださいませ。」


「そんな訳にはいかない。私が責任を持って、アリアナの将来の面倒をみるよ。」


 そう傷があろうがなかろうが、私がアリアナを幸せにする。

 だが、アリアナは首を傾げている。


 アリアナは自分は兄が面倒を見てくれるから心配するなと言う。更に私にも縁談があるだろうと。

 エリックは兄だとわかっていても、嫉妬をしてしまう。それに、他人事の様にアリアナが私の縁談について、話す事に、腹立ちを覚える。彼女が私との将来は全く考えていないと突きつけられた様だ。

 更に止めをさす様に、彼女は聞いてくる。


「殿下には想う方がいらっしゃるのですか?」


 全く私の気持ちが届いていない事に、腹立ちと気落ちが混ざり、複雑な気分だ。

 もうはっきり求婚して、ここに留めておきたい。


「ああ、結婚したい人がいる。」


 そう言えば、彼女は紹介しろと言う。

 全く、今までもエリックと同じ立場だと思っていたが、ここまで、はっきり言われるとガッカリしてしまう。紹介はできないと言うと彼女は残念だと言う。


 もう我慢の限界だった。私はアリアナを引き寄せ、抱きしめた。


 彼女は困惑している。

「殿下?」


 さあ、今から求婚して、アリアナを手に入れてしまおう。他国の王子に取られてしまう前に。

 もう、建前などどうでも良い。


 そう決心したところに、エリックが夕食を持って、入ってきた。


「アリアナ、夕食だ!って、お前たち、何しているんだ?」


 その言葉に慌ててアリアナは腕から逃げ出す。

 全くタイミングが悪い。アリアナはエリックに言い訳を一生懸命にしている。だが私の事を責める事はなく、自分が悪いと言ってくれる。

 焦るなと自分に言い聞かせ、昂った気持ちを落ち着かせた。


「クロード、お前もたべるだろう?」

 エリックが声をかけてくる。


 その後、元気を取り戻したアリアナに簡単に事件の経緯を聞くが、何度叫びそうになったか。晩餐の時間でなければ、間違いなく叫んでいただろう。

 反対にアリアナは怪我を負ったにも関わらず、平然としている。


「お願いだから、自分の身を大事にして欲しい。」


「あら、わたくしは大事にしておりますわ。」


 平然と言うアリアナに私もエリックも頭を抱えるしかなかった。


 晩餐が終わり、エリックが片付けの為に部屋を出る際に、私を呼ぶ。

 廊下に出るなり、

「何不機嫌になっているのか?」


「お前が、いいところで戻って来るからだろう。」


 エリックはニヤリと笑う。


「そう言えば、抱きしめていたな。アリアナは言い訳していたが。」


 そう言って、エリックは自分がいない間のやり取りを聞きたがった。

 私が結婚したい相手がいると言ったら、アリアナから紹介しろと言われたと言った時は、エリックは声を殺して笑っていた。

 腹が立ったので、背中をポンと叩く。

「お前のせいだ。責任を取れ!」


「こればかりはなぁ。だがアリアナが勘違いしていた方がお前のためかもしれないな。お前が本気で口説くとアリアナは間違いなく逃げるだろう。もう暫くは我慢しろよ。」


「嫉妬ぐらいしてくれれば、勘違いも可愛いものだが…」


「親父も動いている。もう少しの辛抱だ。ところで、モラン伯爵令嬢が目を覚ました。俺の方で取り調べを済ませておくか?」


「いや、私も同席しよう。」


「お前、冷静になれよ。あくまでも動機の解明と裏で糸を引いている者を探り出す事が大事だ。」


「わかっているさ。だがアリアナを傷付けて、只では済まされない。」


「大人しい令嬢だと思ったのだがな。だがアリアナは助命を願っている。考慮してやれ。そうでなくとも、彼女の口から色々バレるとまずいと思う者は必ず彼女の命を狙うぞ。」


「ああ、だから彼女も意識不明と伯爵には連絡してくれ。」


「わかった。今から取り調べるか?明日にするか?」


「早い方がいいだろう。消される前に話は聞きたい。」


「物騒だな。だが正論だ。じゃあ行くか。」


「ああ。」


 エリックはドアを開け、アリアナに大人しくしているように念を押す。


 アリアナとの時間は惜しいが、まずは事件の解明だ。

 そう気持ちを入れ替え、私はエリックと取り調べ室へと向かった。





お読みいただき、ありがとうございました。


次回も明後日か明々後日に更新予定です。

お付き合い頂けますと嬉しいです。

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