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悪役令嬢は婚約破棄を言い出した王子様に決闘を申し込む。  作者: 藤宮サラ
第一章 決闘まで

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【番外編】アリアナの前世と今起きた事件(アリアナ視点)

ブックマーク、評価、感想、ありがとうございます。

今日も一日仕事で更新日付けを超えてしまいました。すみません。


アリアナ視点です。

 佐伯くんはそれから、「明日またここに来る。」と言って、帰っていった。


 私は、そのまま店にある私の自室へと戻る。

 頭がガンガンと痛い。思い出せない記憶が、頭の中の扉を開こうと、叩いているみたい。


 佐伯くんが教えてくれた、前世での私の最後の瞬間の話が、頭の中で反復する。

 どんなに頑張っても、思い出せない。

 思い出せない私は、自分の事と実感できない。

 彼はあんなに悔やんでいたのに。


 私の記憶が28歳までしか無いから、事故にあった事は間違いないのだと思う。

 覚えていないなんて、私は薄情なのかな。


 彼には私の事が負担になっていたのかと思うと、罪悪感を感じる。


 彼はいい人だと思う。前世に囚われず、幸せになって欲しい。


 私との将来を考えてくれているようだけど、私自身の問題が解決したわけでは無い。


 私はまだクリストファー殿下の婚約者のままだ。

 卒業式の断罪イベントまで、約半年。


 それまでに、運命を変える事ができるだろうか?


 明日、また佐伯くんは会いたいと言ってくれたが、私の気持ちは整理できていなかった。


 そう、私は記憶を思い出してからは、必死で断罪イベントからバッドエンドを回避することを目指していたのだから。

 その為に、色々と頑張って来た。


 攻略対象キャラとさえ、関わらなければ、運命が変わるかもしれないと思っていたし、それが一番確実な方法だと思っていた。


 クリストファー殿下とクロード殿下は、幼い頃から身近にいたので、関わらざろうえなかったが、他の王子達に関わらなければ、リスクは減ると。


 だけど、最終学年になって、王子達が揃ってしまい、断罪イベントに向けて、確実に進んでいる。


 クリストファー殿下は、カーラと仲良くしている。

 他の王子様たちも、それぞれ素敵な人だ。

 女子生徒から人気が高い。


 普通、可愛く素直な人を選ぶよね。

 クリストファー殿下だって、カーラを選んだ。

 カーラも見た目は可愛い。仕草も計算された可愛さがある。


 色々と考えを巡らせていたら、私はうたた寝をしてしまった。


 夢を見た。

 前世の夢だ。

 佐伯くんが笑っている。

 ああ、あんな風に笑う人だった。

 彼は女子社員に人気があったよね。

 私の事も同期として、親しくしてくれたなと思い出す。


 私の意識はフワフワと空中を漂っている。

 私は幽霊?いや私の夢だ。


 何かの会議があっているようだ。

 前世の私と佐伯くんもいる。

 あの頃は楽しかったなぁ。と漠然と思う。

 会議が終わり、私は仕事に戻る。

 もう退社時間だったが、今日の会議で出た案を、見直したかった。

 一通り仕事が片付いたら、もう夜7時を過ぎていた。


 空中の私は、もしかして?と思う。

 社を出て歩く私の後ろをフワフワと付いていく。

「待ってくれ。」と声が聞こえたが、前世の私は気付かない。

 やっぱりこれは、あの事故の日?

 私は焦って、前世の自分に何とか気付かせようとするが、実態の無い意識だけだと、無理だった。

 佐伯くんに向かって、来たらダメ!と叫んだところで、目が覚めた。


 佐伯くんの言っていた、私達の最後の場面なのか、話を聞いたから、私の頭が作り出した夢なのか…

 しばらく自分がどちらの世界にいるのか、わからなかった。


 やっと、今の世界と理解したところに、ノックの音が聞こえる。


「お嬢様、よろしいですか?」

 この店を任せているセオドールが声をかけてきた。

 私は慌てて、身なりを整える。


「どうぞ。」


「お嬢様にお客様です。」


「私に?どなた?」


「それが…お嬢様に、会いたいとそれだけしか仰らなくって。」


 私が下に降りて行くと、泣きじゃくった少年がいた。


「どうしたの?」

 と声を掛けてみれば、見覚えのある孤児院の子だった。彼は擦り傷だらけで、顔が腫れている。


「ジャック?どうしたの?その傷は。」


「リアさん。大変なんだ。孤児院のマリアとソフィーが攫われたんだ。」


 えっ!また?つい先日、人攫いを捕まえたのに。


「あなたの傷は?よくここがわかったわね。」

 本当に彼だけでも無事で良かった。


「俺は助けようとしたんだけど、殴られて、連れて行かれてしまったんだ。リアさん、困った事があれば、この店に寄れって言っていたから。」


 そう、孤児院の子供たちには、もしもの時に、逃げ込む先として、魔法具の店を教えていた。


「そう、よく覚えていたわね。偉いわ。それで、院長先生はご存知なの?」


「お使いの途中だったから、まだ伝えていない。」


 それは大変。早く知らせないと心配しているよね。


「街の警備の人には?」


「言ったけど、子供の喧嘩だろうと取り合ってもらえなかった。」


 警備には、今度お説教だわ。


「そう。あなたは先に傷の手当てをしましょうね。お店の人に送って行くように頼むから。私は探してみるわ。どの辺りだった?攫われた場所。」


 彼から場所を聞いた後に、セオドールに指示を出す。


「馬車を用意できる?この子の傷の手当てをした後に、孤児院まで送ってあげて。」


「承知いたしました。」


 私はジャックに向き直り、

「傷の手当てをしたら、孤児院に送るから。それまで、このお店のおじさん達の言う事をちゃんと聞いてね。私はマリア達を探してみるわ。」


「うん。」


 彼は不安そうな顔を見せる。


「大丈夫。きっと助けるから。」


 私は自室に戻り、簡素なワンピースに着替える。

 自分で何でも出来る様に、普段から心掛けていたから、難なく着替える事ができた。


 そして、兄に連絡を入れる。


「お兄様、最近の人攫いのアジトを知らない?私の大事な子たちが攫われたの!」


「アリアナか?人攫い?また出たのか?」


 そう、この間捕まえたばかりだ。

 きっと下っ端だったのね。


「ええ、孤児院の子が二人攫われたわ。アジトは何処か把握している?」


「アジトはまだわかっていない。街外れの倉庫街のどこかだと当たりはつけているのだが。」


「ありがとう。」


「おい!待てよ。まだそこだと確実にわかった訳では無いんだ。俺達が行くから、お前は大人しくしていろ!」


 兄が焦って、私を止める。


「待てないわ。」


「お前一人で行って、攫われた子供達に何かあったらどうする?」


 兄は私を冷静にさせる為に、子供達の事を出す。

 私は苦い思い出を思い出す。


「だって!」


「だってじゃない。いいか。行くなら俺と一緒だ。」


 兄は昔から私に甘い。

 ありがとうと心の中で言った。


「じゃあ街の詰所に。私は今から転移するわ。」


 街に魔法師団の詰所がある。そこに私の転移ポイントがある。そこであれば、私は簡単に転移ができる。


「俺もすぐに行くから、絶対一人で動くなよ。」


 兄は私に念を押した。


「わかっているから、お兄様もなるべく早く来てね。」


 そう言って、魔法通信を切った。


 再度、階下へ行って、セオドールに後の事を頼む。


「お嬢様、まさかお一人では、ありませんよね。」


 彼は父の側近の子に当たり、我が家に幼い頃から出入りしている。私の事も可愛がってくれていた。

 なので、兄並みに心配されている。


「兄と一緒よ。」


「ああ、エリック様とご一緒で有れば、安心です。」


「ええ。ジャックをよろしくね。私は今日は戻れないから。明日、寄れたら顔を出すけれど、難しいかもしれないわ。」


「では、お客様がお見えになりましたら、その様にお伝え致します。」


「ありがとう。」


 そして私は転移した。


 転移先では、団員がワタワタしていた。

 兄が伝えてくれたのだろう。


 そこへ騒めきが起きた。

 私も皆が集まるホールへと向かった。


 そこには、兄とクロード殿下がいた。



お読みいただき、ありがとうございました。


次回は今日?明日?には、投稿できるよう、頑張ってみます。


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